専門商社・一般職からUSCPA合格。業界未経験の28歳が本命のBig4監査法人に選ばれた理由

専門商社の営業アシスタントとして約6年間勤務した篭田星南さん(写真左)。会社の昇給要件をきっかけに簿記3級を取得した後、一念発起してUSCPA(米国公認会計士)の学習を開始すると、約1年半で4科目すべて一発合格という快挙を成し遂げました。さらに、専門的な会計実務は未経験という壁を跳ね除け、Big4監査法人から見事に内定を獲得しました。
学習の過程で部署異動や結婚も経験。公私で転機と向き合いながら、どのように学習を継続して、どのような戦略でキャリアチェンジを成功させたのか。CPA会計学院の吉田講師(写真中央)、CPASSキャリアの内山(写真右)が、篭田さんの軌跡を詳しく紐解きます。
目次
プロフィール
篭田星南さん
大学卒業後、専門商社に入社し営業アシスタントとして約6年間勤務。簿記3級を取得後、CPA会計学院にてUSCPAの学習を開始。2025年11月に全科目合格を達成。2026年3月、CPASSキャリアを通じてBig4監査法人(金融事業部)の内定を獲得。2026年6月に入社。
吉田悠人/CPA会計学院 USCPA講座 主任講師
営業からキャリアをスタートし、USCPA資格取得後にBig4監査法人に転職。その後株式会社リクルートホールディングスで連結経理マネージャーや財務ディレクター、米国子会社IndeedにてJapan Finance Directorなどを歴任。2019年よりUSCPAの講師業を始め、CPA会計学院にて主任講師として従事。
内山智貴/CPASSキャリア キャリアアドバイザー 公認会計士
Big4監査法人にて約5年、監査業務・リクルート活動・アドバイザリー業務に従事した後、CPAキャリアサポート株式会社へ入社。現在はBig4をはじめとしたプロフェッショナルファームや、上場企業からスタートアップまで幅広く企業担当を務める。会計士の視点からJCPA受講生やUSCPA、経理経験者の持つ価値を企業側に正しく説明するとともに、自身の経験をもとに各社の魅力を伝えることで、双方が納得できる採用・キャリア支援を心がけている。
キャリアアップを狙い、USCPAという「2年以内の挑戦」へ
USCPA全科目合格、そしてBig4監査法人への内定おめでとうございます!一般職の営業アシスタントというバックグラウンドから、実務未経験でBig4監査法人へ飛び込むというのは、多くの受講生にとって本当に勇気をもらえる素晴らしいロールモデルだと思います。まずは、会計の勉強を始められたきっかけから教えてください。
ありがとうございます。原点は、前職の専門商社で昇給要件として日商簿記3級の取得が義務づけられていたことでした。仕方なく始めたのですが、いざ勉強してみると1か月もかからず合格でき、この分野が肌に合っているような気がしたんです。
そこからUSCPAへと舵を切られた背景を教えてください。
営業アシスタント時代、社内で唯一「2つの部署を兼務する」という非常に幅広い実務を任せていただきました。この変則的な環境で実務をやりきったことが自信に繋がり、より専門的な仕事に挑戦してみたい気持ちが芽生えました。
ただ、就職活動の時に面接が苦手だった記憶があり、胸を張れる実績やコミュニケーション力がない状態では事務職から総合職への職種転換するのは難しいだろう……という現実も痛感していたんです。
そこで、働きながら自分の武器を増やすために、公認会計士である夫からの勧めもあって、USCPAへの挑戦を決めました。今後の結婚や出産といったライフプランから逆算して、「長くても2年以内に受からなかったらきっぱり諦める」と自分に期限を課し、2024年4月にCPA会計学院のUSCPA講座に入会しました。

挫折と再起。最初の科目・FARの合格通知に震えた日
学習を始め、最初の科目であるFAR(財務会計)の合格まで約7か月を要したとのことですが、そこから怒涛のペースで全科目を一発合格されたのが本当に凄いです。働きながらどのように勉強時間を確保されていたのですか。
平日の夜は残業もあって時間のやり繰りが難しかったので、朝の時間を徹底して活用しました。毎日6時に起床し、在宅勤務の日は始業の9時まで2時間半ほど自宅で勉強。出社の日も始業前に会社の近くで集中できる場所を見つけ、必ず2時間は勉強する習慣をつけました。
また、試験前などの追い込み期は23時まで空いている場所を確保し、平日に5時間勉強する日もありました。土日は朝にヨガに行って気分転換をした後、午後は気分に合わせて場所を変え、夕食まで集中し、10時間は学習に費やしていました。週に20〜25時間の学習時間を必ず維持するようにしていました。
素晴らしい集中力ですね。学習をスタートした時のTOEICは500点台で、英語が得意なわけではなかったと伺いましたが、会計や監査の専門用語や長文読解の壁にはどう対応されたのですか。

最初はMC(四択問題)の設問すら読めず、2024年の夏頃にはTBS(総合問題)の長文読解に圧倒されて、実は一度完全に心が折れて挑戦を諦めかけたんです。でも、その時期に総合職として他社への転職活動を少し試みたところ、厳しい現実を突きつけられ……。もう一度、腹をくくって学習を再開しました。
復帰後は、とにかく毎日英語の文章に触れて毛嫌いをなくすことから始めました。読めなかった英単語は自作の単語帳にまとめ、英語の勘定科目一覧などを印刷してスキマ時間に必死に暗記しました。
会計の学習とは別に「英語を覚えるための時間」を独立して確保したことで、本番では長文に対しても大半の内容を「こういうことが言いたいんだな」とやんわりと理解して解けるようになりました。また、吉田先生のFARの講義には本当に元気をもらいました。「ここで折り返しだ!」と声をかけてくださったり、難しい論点で「ここは忍耐だ!」と励ましの言葉をくださったりしたおかげで、英語が分からない状態からでも迷わずに努力を続けることができました。
最初の科目であるFARに合格した時の喜びはいかがでしたか?
自宅で思わず飛び跳ねて大喜びしました(笑)。信じられないくらい嬉しかったです。実は本番で時間が全く足りなくなり、最後のTBSの大問2つは時間が足りず、十分に解けずに終わっていたんです。「絶対に落ちた」と絶望しながら合否を見たら80点で合格していて、他の問題がほぼ全問正解に近かったのだと分かった瞬間、これまでの努力が報われた気がして、喜びで震えました。
1科目合格するだけでも素晴らしいですが、学習の後半戦では、社内で営業事務から経営企画部への異動という大きな環境の変化もありましたよね。新しい業務に向き合いながら試験勉強を継続するのは、相当なタフさが求められたのではないですか?
はい、実は異動のお話をいただいたのは、まだ最初の1科目も合格をもらえていない時期だったんです。当時は試験に対する不安も大きかったので、「もし万が一、資格がダメだったとしても、この会社で新しい仕事に挑戦して環境を変えたい」という前向きな期待も込めて異動を決めました。その後、2科目(FAR・BAR)の合格通知を手にした状態で、2025年4月に経営企画部へ着任しました。
経営企画部ではどんな業務を担当されていましたか?
全社へのSalesforce導入プロジェクトに携わりました。システムにログインできない社員の方からの問い合わせに一つひとつ対応したり、Excelを使って数千件規模の初期データのエラーチェックを繰り返したりと、目の前のタスクに対応するだけで必死でした。 その状況で残りの2科目(AUD・REG)の試験対策を進めなければならず、精神的にも肉体的にも一番過酷な時期でしたが、これまで築いてきた『朝学習』のルーティンだけは絶対に崩さないと決めて、なんとか完走することができました。
2025年7月に入籍され、その1週間前に3科目目であるAUDの試験を迎えたのですよね。新生活の慌ただしさもある中で、80点を超える高得点を獲得されたのは見事なやり込み具合です。
本当にバタバタの時期でしたが、「ずるずると2年以上引きずるくらいなら今すべてをやりきる」と決めていたので、新生活の忙しさも良いプレッシャーに変えることができました。AUDは問題集のMCを3周以上回しました。質問と回答を覚えてしまったくらいです。
さらに直前期には、CPA会計学院で利用できる問題演習ツール「UWorld Question Bank」を、間違えた問題を完璧に正解できるまで復習しました。何千問というボリュームを解いてから本番形式の模擬試験に臨んだところ、1時間も早く解き終えてしまって。それくらい、問題のパターンが完全に頭に染み込んでいました。
別のBig4でのお見送りから火がついた反骨精神
ここからは企業側の採用をお手伝いしている立場から転職活動について伺います。篭田さんは2025年11月に全科目合格を果たされた後、すぐにCPASSキャリアに相談に来てくださいましたね。2026年3月末に結婚式を控えていらっしゃったため、「それまでに転職先を確定させたい」という明確なタイムリミットを持って動かれていました。
その際、専門的な会計実務が未経験からのBig4ファームへの転職において、アドバイザリーなどの職種ではなく、一貫して監査職に強くこだわっていらっしゃったのが非常に印象的でした。
はい、そこにはBig4監査法人で働く夫からの助言が大きく影響していました。夫は公認会計士として監査を経験した後、昨年アドバイザリーへと異動したのですが、「監査の経験があるから、アドバイザリー部門で『なぜこの手続きをする必要があるのか』が本質的に理解できる。未経験だと戦力になれないと思う」と、はっきり言われていたんです。
私自身も、まずは会計の専門家としての土台を作るために監査からスタートしたいと考えていました。そのため、アドバイザリーポジションのご提案をいただいた際も軸をぶらさず、Big4監査法人のポジションに絞って応募しました。
本当に芯のあるブレない軸でしたよね。ただ、経理・会計の実務未経験からBig4の「監査職」に絞るというのは、中途採用の市場セオリーから見れば決して容易な道ではありません。実際、一番最初に選考が進んだ監査法人では、一般の会計監査職に応募したものの経験面を考慮されて、苦い結果を経験をすることになりました。
はい。正直に言うと、1発目の面接だったこともあって「きっと受かるだろう」と高を括ってしまっていたんです。面接で自分の強みを積極的にアピールするのではなく、人柄の良さだけを見せるような、守りに入ったお行儀の良い受け答えをしてしまい、結果は見送りでした。自分で調べていくうちに、未経験からBig4に入るのがどれほど狭き門かも痛感し、一気に反骨精神に火がつきました。「もうあとがない。残りの法人はとにかくガツガツ攻めるぞ」と、マインドを100%切り替えて次の選考へ臨んだんです。
逆境からのマインドの切り替えが見事でした。しかし、その後に選考が進んだ他法人でも、最初は一般企業向けの監査職に応募したものの、やはり未経験という壁があり、今度は書類段階で先方から金融事業部へのポジション変更を提案される形になりました。
内山さんからそのお話を伺ったとき、最初はあまり気が進みませんでした。それまで金融業界に全く馴染みがなく、お固くて難しい世界というイメージを持っていたのが一番の懸念理由でした。それに加えて、夫が金融監査の担当だったので「できれば違う部門がいいな」と思って避けていた部分もあったんです。
非常に率直な本音を伝えてくださいましたよね。ただ、私たちは篭田さんの「監査からスタートしたい」という意思を尊重したかった。だからこそ、金融監査が持つ圧倒的な専門価値の高さや、実務未経験からBig4の監査の打診をいただけるチャンス自体がどれほど貴重な波であるかを誠実にお伝えし、一緒に前向きな目線の切り替えを行っていきました。
私の意志を汲んだ上で「監査実務の入り口として素晴らしい環境です。ここで勝負しましょう」と背中を押してくださったので、前向きに腹をくくることができました。
手応えゼロの厳しい面接から手にした内定
そこからの面接対策では、現職で発揮してきた新しい業務へのキャッチアップ力、1年半で全科目一発合格した学習継続能力、そして営業事務から経営企画への環境変化に対応した柔軟性をポテンシャルとして企業側に信じてもらえるよう、回答の組み立てをサポートさせていただきました。
CPASSキャリアの書類添削と面接対策には本当に救われました。もともと自分が書いていた内容を、監査法人に刺さるような表現に一字一句ブラッシュアップしていただき、その結果、次に向かったBig4監査法人の2社から内定をいただくことができたんです。
先に選考が進んだ監査法人からは非常に高い評価を受け、最終面接で「スタッフの中でも通常より1つ上のグレードでの採用を検討したい」という驚きの提示までありましたよね。回答期限が迫る中、今回入社された本命の監査法人の選考スケジュールが先方の事情で後ろ倒しになり、ハラハラする局面もありましたが、最終的に入社を決められた決定打は何だったのでしょうか。

実は、一番面接で苦戦したと感じたのが、今回入社を決めた監査法人だったんです。もう一社が終始和やかに面接を進めてくださったのに対し、こちらも面接官の方が笑顔を見せてくださる瞬間がありつつ、1つの受け答えに対して『なぜ?』と深く掘り下げる質問が多く、私の内面や本質を冷静に分析・見極めようとされている印象でした。
また、選考の過程でリファレンスチェックがあり、前職の上司や同僚に協力を仰ぐ必要があったんです。転職活動のことを在職中の職場に頼むのは心苦しい部分もあるのですが、相談したところ、上司も同僚も快く協力してくれまして……。そうして前職の仲間にも支えられ、手応えのなかった厳しい面接を経て、私のすべてを見た上で選んでくれたBig4監査法人だからこそ、ここでプロとして生きていこうと決意が固まりました。
転職活動の裏側に、前職の方々との温かい絆があったのですね。篭田さんの誠実な人柄が、周囲を動かしたのだと思います。
ありがとうございます。もう一つ、社風にも惹かれました。面接前に採用ページを読み漁っていたのですが、配属先となる部署のインタビューを見たら、ユニークなバックグラウンドを持つ先輩たちが活躍されていたんです。それを見て勇気をもらいました。
激動の1年を経て、プロフェッショナルとしての第一歩へ
結婚、引っ越し、そして今回の転職と、人生のビッグイベントが一気に押し寄せる激動の1年だったと思いますが、よくモチベーションが途切れませんでしたね。
本当にバタバタの1年でした(笑)。でも、入籍の1週間前の試験の時も、「ずるずると2年以上引きずるくらいなら今すべてをやりきる」と決めていたので、新生活の慌ただしさも良いプレッシャーに変えることができたんだと思います。
入社までの期間をどのように過ごされていますか?
約2か月の有給消化をいただき、旅行に行ったりゆっくり過ごしたりして最高のリフレッシュができました。ただ、勉強を完全に止めたわけではなく、金融事業部への配属を見据えて、資産運用の入門書を読んで基礎知識を入れたり、TOEICを受ける予定を入れたりと、自分なりに努力を続けています。入社後は、まずは監査の実務で必死に食らいつき、数年後にはIPO支援などのアドバイザリー業務にも携われるようになっていたらいいなと、漠然と考えています。

最後に、篭田さんと同じように未経験からUSCPAを取得してキャリアアップを目指している受講生へ、メッセージをお願いします。
USCPAの合格体験記などを見ると、元々英語が堪能な人や会計の実務経験がある人ばかりが目立ち、私のように事務職の未経験スタートだと「Big4なんて入れるのだろうか」と不安になることも多いと思います。でも、大学受験レベルの英語力からでも、正しい方法でセルフマネジメントを行い、問題集を徹底的にやり込めば、働きながらでも1年半で合格できる資格です。
そして、プロのキャリアアドバイザーの力を借りてしっかりと自分のポテンシャルをアピールすれば、未経験からでもBig4監査法人への道は開かれます。この挑戦は、私の人生の可能性を大きく広げ、確固たる自信を与えてくれました。進路に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、一歩を踏み出してみてください!
激動の1年を高いセルフマネジメント能力で乗り越えた篭田さんのエピソードは、多くの受講生の心に火をつけてくれるはずです。いつか実務を積んだ後、受講生交流会などのゲストとしてもぜひお話を聴かせてくださいね。本日はありがとうございました!
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