USCPAに合格後、会計アドバイザリー職としてBig4へ入社。「26歳・就業経験なし」がハンデにならなかった理由とは?

公認会計士試験に挑み、短答式試験を突破し、論文式試験に3度挑戦するも、合格には届かず。その経験を挫折で終わらせず、一念発起してUSCPA(米国公認会計士)へと舵を切った井腰直也さん(写真左)。約1年という短期間で全科目合格を成し遂げ、さらには実務未経験という壁を跳ね除けてBig4へ会計アドバイザリー職として入社しました。

USCPAは、人生の選択肢を大きく広げる可能性を秘めた資格です。その道をどうやって切り拓き、何が評価されてキャリアチェンジを成功させたのか。CPA会計学院の吉田講師(写真中央)、CPASSキャリアの内山(写真右)が、井腰さんの軌跡を詳しく紐解きます。

プロフィール

井腰直也さん

大学在学中から公認会計士試験に挑戦し、短答式試験に合格するも論文式試験で足踏みを経験。その後、CPA会計学院のUSCPA講座にて1年間の専念学習を経て全科目合格。実務未経験(就業経験なし)の状態からCPASSキャリアを通じて転職活動を行い、Big4の会計アドバイザリー職の内定を獲得、2026年4月に入社。 


吉田悠人/CPA会計学院 USCPA講座 主任講師

営業マンからキャリアをスタートし、USCPA資格取得後に大手監査法人に転職。その後株式会社リクルートホールディングスで連結経理マネージャーや財務ディレクター、米国子会社IndeedにてJapan Finance Directorなどを歴任。2019年よりUSCPAの講師業を始め、CPA会計学院にて主任講師として従事。


内山智貴/CPASSキャリア キャリアアドバイザー 公認会計士

Big4系監査法人にて約5年、監査業務・リクルート活動・アドバイザリー業務に従事した後、CPAキャリアサポート株式会社へ入社。現在はBig4をはじめとしたプロフェッショナルファームや、上場企業からスタートアップまで幅広く企業担当を務める。会計士の視点からJCPA受講生やUSCPA、経理経験者の持つ価値を企業側に正しく説明するとともに、自身の経験をもとに各社の魅力を伝えることで、双方が納得できる採用・キャリア支援を心がけている。

公認会計士への憧れと、JCPAでの苦い経験

吉田

USCPA全科目合格、そしてBig4からの内定・入社おめでとうございます。実務未経験から素晴らしいキャリアを歩み始めた井腰さんは、これからUSCPAの勉強を始める方や、合格を目指して奮闘中の方に勇気を与えてくれる存在だと思います。まずは、会計に興味を持たれたきっかけから教えてください。

井腰

ありがとうございます。原点は高校時代の進路相談で、担任の先生から公認会計士を目指すことを勧められて興味を持ちました。その後、大学で簿記を学び始め、企業の内部が数字によって可視化される面白さにどんどん引き込まれていきました。

吉田

そこから日本の公認会計士(以下、JCPA)試験に挑まれたわけですが、短答式試験に合格しながらも、論文式試験では苦労されたそうですね。USCPAに目標を切り替えた際、どのような心境の変化があったのでしょうか。

井腰

大学在学中からJCPAに挑戦していましたが、論文式試験で3回不合格になってしまいました。2022年に大学を卒業した後、就職せず学習に専念していたのですが、当時24歳という年齢を迎えており、自分の将来や進路を考え直すべき時期に来ていました。「このままでは何も残らない……」という焦りの中、学習経験を無駄にせず、かつグローバルに通用する武器を身につけるための手段としてUSCPAに挑戦しようと決めたんです。

1年で駆け抜けたUSCPA学習。英語の壁をどう突破したか

吉田

USCPAに 転向してからは1年という短期間で全科目合格(FAR/財務会計→BAR/ビジネス分析及び報告→AUD/監査及び証明業務→REG/米国連邦税法及び諸規制の順番で合格 )と、まさに怒涛の勢いでしたね。JCPAの学習経験をどう活かしたのでしょうか。

井腰

JCPAに挑戦している頃、学習計画をギチギチに詰めすぎて、予定から遅れると心が折れてしまう傾向がありました。その反省から、USCPAでは日曜日を予備日として空けるという、バッファを持たせたスケジュールを組みました。追い込みすぎない勇気が、1年を通してモチベーションを維持して完走できた秘訣だったと感じています。

吉田

重要な戦略ですね。最初は英語の専門用語に苦戦したのではないですか。

井腰

はい。講義視聴とテキストを通じて一通り内容を学習した後、コンセプトの理解に徹するため、問題演習の最初の1周目は日本語をベースに進めました。その時点では「いけるかも」と手応えを感じていたんです。ところが、2周目でいざ英語での問題演習に切り替えた瞬間、「やっぱりやばいかも……」と、英語力不足を思い知って冷や汗をかきました(笑)。単語帳で暗記するのではなく、問題文という文脈(コンテキスト)の中で慣れていくことで、なんとか突破できました。

吉田

コンテキストで英単語をおさえていくというのは、私たち講師陣も強く勧めている方法です。特にAUDは英語の読解量も多く、一筋縄ではいかなかったのではないですか。

井腰

そうですね。AUDは数字が出てこないですし、仕訳もほとんどないので、数字の裏付けがない概念を英語で理解するのは非常に苦労しました。そこを補ってくれたのが、CPA会計学院のメール質問制度でした。

吉田

実は、井腰さんからメールでいただく質問は、講師陣の間でも「この人、めちゃくちゃ分かってるな」と話題になっていたんですよ。単に答えが分からないというレベルではなく、非常に高度な論点に関する質問ばかりでしたから。

井腰

疑問に思ったことをすぐにメールで投げかけ、それに対して丁寧に答えていただける環境があったからこそ、効率良く学習できたのだと思います。また、講義の中で示される重要度のランク付けも非常に役立ちました。膨大な試験範囲の中でも「ここを優先的に覚えよう」とメリハリをつけて学習できたことが合格に繋がったと感じています。

6年間の塾講師経験が導いた会計アドバイザリーへの想い

内山

ここからは企業側の採用をお手伝いしている立場から、当時の就職活動について伺います。井腰さんが最初にキャリア相談に来てくださったのは、USCPAで3科目合格した後、2025年の10月頃でしたね。その際、井腰さんは最初からコンサルティングやアドバイザリーの職種を強く希望されていました。その理由はどこにあったのでしょうか?

井腰

アルバイトとして 6〜7年続けてきた塾講師の経験が大きいです。生徒さんに寄り添い、目標達成のサポートをすることに大きなやりがいを感じていました。会計の世界でも、クライアントと同じ方向を向いて課題を解決するアドバイザリー業務が、もっとも自分の志向に合っていると感じたんです。

内山

塾講師の仕事で感謝されることが自己肯定感に繋がり、勉強に励むためのガソリンになっていたとも仰っていましたね。実は、井腰さんの選考中、内定先の人事担当者の方からも「相手に寄り添いたいという親身な姿勢が面接で伝わってきました。アドバイザリー業務に向いていると思います」とポジティブなフィードバックをいただいていました。ただ、実務未経験からBig4の会計アドバイザリー職へ挑戦することは、一般的には非常にハードルが高いとされています。

井腰

はい。実務未経験だと書類選考が通りにくいことは予想していましたし、他社のエージェントさんから「もっとランクを落とさないと」と言われ、さらに不安になりました。でも、CPASSキャリアの皆さんは「応募せず後悔するのが一番もったいない。まずは本命のBig4に本気でぶつかりましょう」と、私の可能性を信じて背中を押してくれました。

内山

そう言っていただけて本当に嬉しいです。ただ、それは単なる「まずは受けてみましょう」という励ましではなく、企業担当としての判断でもありました。CPA会計学院を母体とする私たちとしては、試験の結果や就業経験だけでなく、井腰さんが積み重ねてきた努力の過程を理解しています。

JCPAやUSCPAの学習で得られた専門知識は当然のことながら、会計プロフェッショナルファームでは『人物像』も同じように重視されます。JCPAでの苦い経験から立ち直り短期間でUSCPA合格を勝ち取ったレジリエンス(回復力)や、長年の塾講師経験で培われた「相手に寄り添い伴走する姿勢」は、クライアントワークである会計アドバイザリーにおいて求められる人物像にも近いと感じていました。

こうした資質は、採用する企業側にとってもプラスになるものだと考えていました。そのため、井腰さんが本気で挑戦したいという想いを尊重しつつ、人事担当者の方に対しては就業経験の有無という条件面だけではなく、その背景にあるポテンシャルを丁寧に説明させていただきました。

井腰

裏側でそこまで熱意を持って動いてくださっていたのですね。面接対策に関しても、本当に徹底してサポートしてくださいました。過去の頻出質問データに基づいた模擬面接を何度も実施していただきましたし、私のこれまでの経験を一緒に深く掘り下げて、「なぜ監査法人ではなく、会計アドバイザリーなのか」という問いに対して自分の言葉で語れるよう、徹底的に棚卸しを行ってくださったんです。あの丁寧な棚卸しがあったからこそ、本番の面接でも「実務経験はありませんが、やり抜く力はあります」と自信を持って答えることができました。

内山

加えて、選考中は各面接が終わるたびに人事担当者の方から、面接官が評価していた点や懸念されていた点、率直な所感などを詳しく伺うようにしていました。その内容を自分なりに整理し、どうすれば井腰さんの良さがより正確に面接官に伝わるかを考えた上で、さらに深く対話を重ねて準備を進めていったんです。企業側の視点を踏まえた上で情報の伝え方を一緒に整えることで、双方が納得感を持って選考を進める状態を作ることを大切にしていました。

井腰

内山さんは公認会計士資格を持っているからこそ、どんなに専門的な質問をしても具体的にアドバイスをしてくれたので、とても心強かったです。

会計知識を土台に、即戦力として実務に対応

内山

最終的に、Big4の会計アドバイザリー職の内定が出ました。内定の連絡をお伝えした時のことは、今でも印象深く覚えています。

井腰

はい、あの瞬間のことは忘れられません。内山さんからお電話をいただいた時、私はちょうど、都内駅のホームにいたんです。受話器の向こうから「内定です」という言葉が聞こえた瞬間、本当に嬉しくて……。周りにたくさんの人がいる駅のホームで、思わず笑みがこぼれました。これまでの様々な思いが頭を駆け巡り、「ああ、諦めずに挑戦し続けて本当に良かった」と、言葉にできないほどの達成感に包まれました。

内山

本当に、これまでの努力が最高の形で報われましたよね。

井腰

しかも、その時にたまたま「これから働く職場がすぐ近くにあるな」と気づいたんです。嬉しさと興奮のあまり、そのまま実際のオフィスのところまで足を運んで、職場の看板をじっと見つめてから帰りました。「ここでプロフェッショナルとしての第一歩を踏み出せるんだ」と実感が湧いてきて、すごく感慨深い気持ちになりました。

内山

入社後、現在はどのような業務に携わっているのですか?

井腰

実は、いきなり緊急性の高いプロジェクトにアサインしてもらいました。ある企業の会計システムが不具合を起こしていて、監査法人から「このままでは適正意見が出せないかもしれない」という深刻な事態に直面しており、私は無事に決算を確定させるためのシステムの消込作業などのサポートをしています 。まだ入社したばかりなのでUSCPAで学んだ知識が直接活かされる場面は少ないですが、基本的な会計知識が身についているおかげで、上司の方やクライアントの会話を理解して、なんとか実務に適応できています。

吉田

素晴らしいスタートですね。いきなりハードな現場を任されるのは、それだけ期待されている証拠です。今後、井腰さんがさらに飛躍するために、講師としてあえてアドバイスをさせてください。USCPA合格はゴールではなく、英語でビジネスをするためのスタートラインです。今後はメールの読み書きだけでなく、「オーラルコミュニケーション」をぜひ磨いてほしいですね。

井腰

具体的にはどのような学習を続けるべきでしょうか?

吉田

私は今でも毎朝、英語のニュースや書籍を音読していますし、日本語を聞いて即座に英語にする「瞬間英作文」も有効です。これからの時代、テキストのやり取りはAIで代替できても、対面での交渉や信頼関係の構築には、自分の肉声で想いを伝えるスキルが不可欠です。Big4のようなグローバルな環境なら、英語力があればチャンスは無限に広がりますから、ぜひ楽しみながら続けてください。

井腰

ありがとうございます。Netflixを英語字幕で見るところから始めていますが、吉田先生に教わったように、実務の中で生きた英語を自分のものにしていきたいと思います。

内山

最後に、かつての井腰さんのように、試験で苦労していたり、キャリアに不安を抱えていたりする受験生の皆さんにメッセージをお願いします。

井腰

私は一度大きな挫折を経験しましたが、諦めずにUSCPAという形にしたことで、Big4に飛び込むことができました。USCPAは、本気で取り組めば必ず人生を変えてくれる資格です。進路に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、CPA会計学院の講師の方や、CPASSキャリアのエージェントの方々に相談してみてください。

内山

ありがとうございます。今後、井腰さんの併走する力が、クライアントを、そして会計業界を明るく照らすことを期待しています。

吉田

個人的には、いつかUSCPAの講師として戻ってきてくれるのを楽しみにしていますよ(笑)。本日はありがとうございました!

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