
公認会計士から広がる可能性
総合商社のCFOは、日本企業の中でもトップクラスの報酬水準を誇ります。役員報酬は有価証券報告書でも確認でき、数千万円〜数億円に達するケースもあります。報酬は、成果や企業規模によって大きく変動しますが、まさに“サラリーマンの最高クラス”と呼べるキャリアの一つです。
総合商社への就職は非常に競争が激しく、その中で執行役員や取締役(通常、CFOは執行役員か取締役が担います)にまで昇りつめることができるのは、わずか一握りに限られます。しかし、公認会計士の資格を有することで、その道を切り拓くことも十分可能です。
総合商社の経理部は、通常50名から80名程度の規模となることが多く、その約2割が公認会計士で構成されています。
現時点で大手総合商社のCFOに公認会計士資格を持つ人物はいませんが、財務部または経理部出身の方が多いCFOに、公認会計士が就任する可能性は十分にあります。
では、公認会計士が総合商社に入社するためには、どのようなキャリアやスキルが求められるのでしょうか。

大手監査法人のキャリア
総合商社でのキャリアを視野に入れるのであれば、数ある監査法人の中でも「BIG4」と呼ばれる大手監査法人への就職がおすすめです。
就職後は、大手企業の監査やIPO(新規上場)支援業務を通じて、実務経験を積むことが重要です。
英語力
TOEIC700点以上の英語力が求められることが一般的です。
転職後もさらなるキャリアアップを目指すのであれば、常に英語力を維持するために、継続的に学習の時間を確保することが必要です。
コミュニケーション能力
総合商社の経理職において、頻繁に求められる業務の一つが、子会社からの財務情報の収集です。期限内に業務を完了させるためには、情報提供元と日頃から密接な関係を築くことが不可欠です。
そのため、監査法人での勤務時から、円滑なコミュニケーションを図るための基礎を養っておくことが重要となります。
世界を舞台に資金を動かすCFO
現在、日本には7社の総合商社が存在します。総合商社は多角的に事業を展開しており、エネルギー、金属資源、食品、さらには最新テクノロジーなど、さまざまな分野で同時にプロジェクトを推進しています。そのため、どの事業にどれだけの資金を割り当てるのか、その資金をどこから調達するのか__数多くの制約の中で最適な解を導き出す能力と判断力が求められます。
例えば、新規の資源開発プロジェクトでは、地質調査やプラント建設などに多額の投資が必要となります。数百億円から数千億円規模の資金を投入する前には、綿密な投資回収シミュレーションが不可欠です。
こうした資源開発は、日本国内で完結することはほとんどなく、複数の国にまたがるサプライチェーン※を構築する必要があります。各国の為替相場の安定性や金利の変動リスクなど、数多くの不確定要素が伴う中での意思決定は困難を極めます。しかし、そのような決断を積み重ね、数多くのプロジェクトを成功に導いてきたからこそ、総合商社は現在の確固たる地位を築け、我が国の経済を支える存在になっています。
このような総合商社のCFOは、いわゆるサラリーマンとしてのキャリアを目指す人にとって、その存在感は突出しています。総合商社は世界的な資源・エネルギー市場に一定の影響を及ぼしうるため、総合商社のCFOは世界を股にかける企業の財務戦略の司令塔といえます。そのため、経済・金融の知識やスキルを総動員し、世界中の資源や商品の取引を支えるビジネスの舵取りを担っている存在といえます。
※サプライチェーンとは、原材料の調達から製品の製造、流通、そして最終的に顧客に届けるまでの一連のプロセスのこと。
※本ページの年収・報酬額は有価証券報告書などの公開情報をもとにした一例であり、企業規模・業績・役割・株式報酬の有無によって大きく変動します。





