今回が最後なんだ、これで決めるんだ、というように逃げ道をなくしたことで、最後まで粘って、やれるだけのことをやりきれたのかなと思います。

――:それでは、越智 昭仁さん、本日はよろしくお願いします。

越智:よろしくお願いします。

――:2018年合格、おめでとうございます。越智さん自身は、公認会計士を始める前に働いていらっしゃったということですが?

越智:前職は、アパレル企業の社員として店舗運営の仕事をしていました。大学院時代に、文系ながらも理系の論理的な思考などを学びたいと思って、大学院では理転して、生命科学研究科に入りました。免疫の仕組みなど医療に関わる基礎研究をして、アカデミックな場とビジネスの現場で、いずれも数値を使って物事を考えていく経験をしました。

その数値に対する興味から、会計数値のプロフェッショナルである、会計士という切り口から道を深めていきたいという流れで進んできました。

――:会計士については昔から知っていましたか?

越智:前職を経験した後、生涯現役で専門性を積み重ねていける働き方をしたいと思い士業を検討しましたが、当時はあまり会計士のことを知らなかったので、まずは司法試験を目指したんです。ただ、3年という期限を設定した中で、なかなか将来その資格で活躍している自分の姿がイメージできない状態で、その先に自分の強みを活かして本当にやりたいことが実現できる道につながっていないのではないかと思うようになりました。

そこで方向転換をして、難関資格へのリベンジも兼ねて、もっと数値や経済に深く関わる方向へということで、会計士がどのようなものか知るために、簿記から入っていきました。

――:最初は、どこか学校に通われていたのですか?

越智:最初のうちは、会計士を目指して時間と労力を本当にそこに注ぎ込んでいいのか、あたりを付けるために、簿記の市販テキストで勉強していた時期もありました。

簿記2級を取ったあたりで、USCPAも魅力的だなと思うようになりました。年齢のこともあるし、日本の会計士と天秤にかけてどちらがいいのか考えましたが、まずはやるだけやってみようと、簿記1級とUSCPAの勉強を並行してやっていた時期もありました。

けれどもやっていくうちに、多くの時間を投資するのであれば、より奥深い専門性を身に付けることができる、日本の公認会計士を目指そうということで、USCPAのほうは一旦中断して、それから合格という形になるまでやろうと決意して本格的に勉強を始めました。

――:公認会計士のスクールは最初どこに通われましたか?

越智:最初は、他校から独立された先生がされている、通信の学校でした。次に、渡辺先生、池邉先生がいらっしゃるということで、別の学校に変えました。

そこで会計学の計算の基礎力をつけることができ、短答合格まではいったんですけれども、5月から8月の短期間で論文のみの租税法と経営学を仕上げることが難しく、その2科目が足を引っ張ってしまいました。結果は不合格でしたが、両先生に対面でご指導いただきたいと思い、お二方がCPAに移籍されるタイミングで私も移籍しました。

――:池邉と渡辺が移籍するまで、CPAのことはあまりご存じありませんでした?

越智:前年の就職活動でも名前はよく聞いていましたし、とても柔軟なカリキュラムや質問対応で、確かな実績を残されているので、気になる存在ではありました。

――:それでも、予備校は一度入ったらそのために変えるかとなると、変えづらいですよね。

越智:予備校を変えるかという判断は難しいと思います。私の場合、過年度のパンフレットで、経営学の永田先生の講義の受講生の中から、実際に高得点を出した方が今年何人出ましたという実績を拝見して、単科で経営学を受講していました。前の予備校よりも分かりやすく身に付けやすかったんですけれども、やはりどうしても租税法に大半の時間を使っていたので、その教材の良さを十分に身に付けられないまま、点数に反映させることができませんでした。

論文式試験が不合格だったから次は永田先生の講義を受けないというのではなく、もう一度この先生を信じてやりたいと思いました。信頼していた渡辺先生、池邉先生の移籍もあって、CPAに魅力が詰まっていたので、このタイミングでCPAでやってみようという感じで移籍を決めました。

――:移籍されたのは去年のいつでしたか?

越智:去年の12月です。11月の合格発表後に、そもそも会計士試験を続けるのかどうかをもう一度考えて、一度キャリアプランの棚卸しをしました。それで、やはりここまで来たならもう1年頑張ってみようと思いました。
ただ、勉強に専念していた時期とは違った成長をしたいという想いと、やはり不合格が悔しくて、自分が落ちた年に合格された方々に少しでも追いつきたいという気持ちもあったので、今勤めている法人の短答式試験合格者採用に応募したところ、採用していただきました。

――:もう一回やってみようと思われたのですね。

越智:仕事と両立するには勉強の密度や質を高めないといけないと思ったので、信頼している渡辺先生、池邉先生、永田先生に直接、質問対応や教えを請いたいと思いました。また、ちょうどよいタイミングで水道橋校ができていたというのもありました。

――:全部がいい方向に合致して、もうやるしかないかなという感じだったのですね。

越智:はい、そういう色々な要素があって、自分でハードルを高く設定しつつ、それでもCPAなら結果を出せるのではと思えたので上京することにしました。

――:短答式試験合格者採用の場合、働く時間はどのように決められているのですか?受かるまで来なくていいというのではなくて、1日3~4時間は働くことになっているなど、そのあたりはどうなのでしょうか。

越智:勤務については、週5日フルタイムで、残業することもありますが基本的に定時まで仕事をすることが前提の採用でしたので、主に定時後は学習時間に充てられるのですが、時間をどう捻出するかが難しかったです。

――:定時が17時だとしても、それはかなり厳しいですね。

越智:定時で17時半頃に上がったとしても、慣れない仕事の中で、疲れたところから気力を振り絞って勉強するというのは大変だったし、移動時間も考えると、最初はなかなか時間を確保するのが難しかったです。

――:初めての仕事に就いて、さらに勉強もとなると、普通であれば疲れてしまうことも当然あると思います。

越智:ただ、これはいいほうに作用したと思うんですけれども、大前提として、受験に専念されている方よりも、圧倒的に時間が足りない状況に自分を追い込んだかたちになるので、常に「時間が足りていない」「自分は追いつかないといけない」という危機感を持ち続けることができました。そのおかげで、例えば夜遅くなってしんどいときでも、1時間でも、ときには30分でもいいのでこちらの自習室に足を運んで、とにかく自分を前へ前へと進められました。

――:17時、18時に仕事が終わってから、こちらにいらしていたのですね。

越智:仕事が終わってから、18時半や19時半頃に来て、また食事も間に挟みながらということで、短時間ですけれども来るようにしていました。

――:平日は、自習室に1~2時間でも、さっきおっしゃったように30分でもというように、無理やりでも来て、効率的に勉強されていたのですね。

越智:最初の頃は試行錯誤で、30分しか滞在できないのであれば、カフェや自宅の勉強部屋でやったほうがいいのではないかなど、いろいろ試しました。ただ最後のほうは結局ここに来て、質問を作って何か一つ弱点をつぶして帰ろうとか、あるいは先生に会いに行くとか、モチベーションを保てるようなかたちで、講師の方への質問の機会を利用させていただきました。

ここに来ると質問もできるし、周りの受験生で勉強に専念されている方もいるので、「朝からずっとやっていたとしたら、自分は今日だいぶ遅れている」という刺激をもらったり、講師の方にすぐ質問することで、一人で悩む時間を節約したりしました。このリアルの自習室でしか得られないメリットを得るために、たとえ30分でも来たほうがやはりいいのかなと感じるようになり、後半のほうは、通うほうにどんどん自分を持っていって、なんとかペースを維持できました。

――:質問対応は、他校のときはどうでしたか?

越智:以前の予備校では、メールが中心でした。返信も、早いときもあれば時間がかかるときもあるし、さらにそれで分からなかった場合、二往復三往復とどんどん時間が経っていくので、メールに起こすだけでも時間がかかるのに、やりとりが積み重なっていくと、年間を通して大きな差になると思いました。

CPAでは、対面でも電話でも対応していただけるので、時間を節約してタイムリーに疑問を解決できました。解決した状態だと問題演習も進めやすく、どんどん自分で反復して身に付けるフェーズに持っていくことができました。そのように良いサイクルに乗せるためには、直接いつでも質問できるという環境は、特に時間が限られている社会人受験生にとっては、非常に重要なところだと思います。

――:やはり、メールよりも直接質問できる方が学習の効率化はできますか?

越智:おっしゃる通り、疑問に思っていて、自分が考えていた答えとは違うものが講師の方から聞けたり、他の論点に派生するようなことも余談としてぽろっと言っていただけたりすることがあります。それを積み重ねていくと、一人で暗記しようと反復しただけでは得られないような、たとえば租税法であれば、租税法の発想や「考え方」のようなものが、徐々に養われていったような感覚です。

――:直接質問することで、一人でテキストを読んでいるだけではなかなか納得できないようなところや、疑問に思うところを解消していって、点が線になってつながるように理解できていった感じでしょうか。

越智:そうですね。特に租税法は、法人税であれば法人税の中での論点間もそうだし、法人税と所得税と消費税との間の類似点や相違点などたくさんあると思うんですけれども、それを一個一個覚えていこうとするとかなりの労力になります。
そこをロジックで説明していただいて、テキストに書けないような、書き起こしにくいような感覚的なことでも、講師の方から違いを聞けると、それをメモに残していました。それで、A論点とB論点はなぜどこが違うのか、一回納得すると、問題に出くわしたときも間違えずに引き出せるようになり、とても助かりました。

――:一番やり込んだのが租税法ということですが、実際の試験結果はどうでした?

越智:本試験直後に、髙野先生に出来具合を見ていただいたときに、ボーダーぐらいは超えているかなぐらいの感触だったんですけれども、蓋を開けてみたら、特に計算が自分で思った以上に点数になって反映されていたので、本当に自然と力がついていたんだなと感じました。

――:付箋も色によって分け方があるのですか?

越智:これは、ABCランクに応じて付箋をつけていって、勉強が進むにつれて自分の中で、ここは覚えないと解けないなという論点は赤にしたり、計算のテクニックや下書きを練習の中で体で身に付けないといけないものは青にしたり、それ以外は黄色にしたり分けていました。貼る場所も、一番外側に残っているものが、自分が何回解いても間違えたものです。

――:租税以外にも、他の講義は注力しましたか?

越智:前年の本試験で一番点数がひどかった租税法を底上げするために圧縮講義を受講して、次に経営学の点数が伸ばす必要があったので、経営学の講義も全部受けました。監査論と企業法は、時間対点数比というか、コストパフォーマンスを考えて最小限で押さえました。

――:ボーダーぎりぎりではないけれども、ある程度のところまで押さえようという感じですね。

越智:逆に会計学の点数をさらに上げられるようにということで、財務と管理のコンプリートトレーニングを一通り解きました。特に重要度ABの解くべきところを中心に講義を聴いて、解き方を確認してというかたちで進めました。

――:一から圧縮講義などを見直したというよりは、このコンプリートトレーニングだけですか?

越智:はい。会計学のコンプリートトレーニングは、以前の予備校で、渡辺先生、池邉先生が講義で使われていた教材をバージョンアップしたものでした。やはり予備校を変えると、教材を変えるスイッチングコストととして、講義を見直してもう一度慣れるのに時間もかかるので、そのあとの定着の時間を確保するためには、どこまで講義を視聴するか判断することがとても重要だと思います。その点では以前の教材と共通する部分が多かったので、倍速で講義を視て、分からないところを中心に質問をして、会計学は範囲も広いので、とにかく基本をマスターできるように準備しました。

――:やはり、池邉、渡辺に対面で質問していたのですか?

越智:両先生は、分かりやすいことに関しては誰も疑う余地がないほど業界では有名なので、基本的に質問は出てこないんですけれども、やはり連結キャッシュ・フローなど、なかなか理解が難しい論点について質問したり、解き間違えたとき、どうしてこっちの論点に引きずられて解き間違えてしまったのかなど、弱点を潰すために質問していました。

――:質問というか、自分ではこう思うんだけれどもというような確認という感じですね。

越智:そうですね。直前期はやはり質問して理解するというよりも、覚えるべきものを絞り込んで、時間内に覚え切るということのほうが優先順位は高くなっていったんですけれども、そこまでの期間は、逆に忘れないために理解を深めるというCPAの方針にとても共感します。
その理解を深める手段の一つが、時間のあるうちに質問をして、ちょっとした疑問だけど自分がなぜ解き間違えたのかという原因をしっかり潰していくということだと思います。社会人受験生でしたので、闇雲に5回、10回と解く時間はないので、3~4回ぐらいまでの解き直しで、他の論点としっかり整理をつけて間違わないようにするためには、そのような講師の方との、ある種ディスカッションというか、コミュニケーションがとても有効でした。

――:質問は割と利用いただいていたのですね。

越智:模試の振り返りもそうですし、あとは、自分が今勉強している科目について、日々質問していました。問題を解いていて間違えたら、何かしら自分の理解が間違っていたり、正しくないかたちで覚えてしまっていて間違ってしまうものだと思うので、そういうところをクリアにすることで、できるだけ一発でしっかり理解することを心掛けていました。

――:やはり自分自身で納得するということですね。

越智:はい。私の場合は社会人受験生でしたので、もちろん反復して間違えながら身に付けるんですけれども、何回も間違えている時間の余裕はありませんでした。

――:働きながら勉強されている人がよく気にされるのが、学生であれば横のつながりで精神的に支えたり、試験の話をして理解を深められたりすると言うんですけれども、社会人ではやはりそういうことはなかなかないですよね。その代わりに、講師への質問を使うというイメージですよね。

越智:水道橋校に通っていたんですけれども、勉強する時間が足りていなくて余裕もなかったこともあって、受験仲間というつながりは広がりませんでした。講師の方に勉強についていろいろ相談して、話し相手としても気軽に対応してくださいました。

――:勉強の相談をするなら、正解を持っている講師のほうが絶対にいいですしね。

越智:とても質の高いフィードバックをいただきました。質問を繰り返すたびに、質問する前に自分で解決できる能力もだんだん高まっていきましたし、それでも質問しないと解決しないことを投げかけることで、さらにいい質問ができるようになって、無駄な質問も減っていきました。

――:他校の教材とCPAの教材を比べてみてどうでしたか?

越智:会計学に関しては、渡辺先生、池邉先生の教材を引き続き使っていたんですけれども、細かいところも行き届いていて、私のように疑問をいろいろ持ってしまう人には、探せば書いてあることが多く、とてもスムーズに一人で学習が進めやすかったので、特段多いなという印象はなかったです。
むしろ、C論点、D論点で重要性の低いものに関してはさらっと流せばいいので、テキストが網羅的に作られている前提で、自分で取捨選択して使えるというCPAの方針は、自分に合っていたと思います。

特に租税法に関しては、必要十分に説明がされている割には、以前の予備校にあったような詰め込まれている感じがまったくしないようなかたちで、適度に例題が段階ごとに組み込まれています。順を追って、例えば、受取配当等、所得税額控除、というような、より大きなまとまりの論点として、身に付けやすいように例題が配置されているので、このテキストの順番通り、先生の講義を思い出しながら繰り返し解くだけでしっかり知識が整理されていきました。
疑問に思ったところを質問すると、ちゃんと納得できる回答をしてくださって、自分の中で租税法の考え方みたいなものがだんだん身に付いてくるのが分かって、前年は本当に苦手意識があったんですけれども、解くのが面白くなっていきました。

――:租税は、難しいというか覚えることも膨大で、でも割とみんな、後回しにするんですよね。それで、最後に詰め込んでというのが一般的なやり方なんですけれども、CPAは違いました?

越智:圧倒的に違うと思います。また、公認会計士試験に特化したかたちでテキストを組んでくださっているので、税理士試験でしか出ないようなところは思い切って強弱をつけてくださっています。まずは会計士試験で合格点を取るために必要なものを、学習の最初のうちに身に付けられるように、重要な順に論点を並べてくださっています。テキスト1・2・3あるうちの、3の応用編は、全然やらないままだったんですけれども、それでもこれだけの点数が取れました。
やはり直前になると、手をつけられていなかった企業法や監査論の、覚えなければいけないところの記憶を呼び覚ますための時間や、取りこぼしてはいけない会計学の基本的な問題を総ざらえする時間が必要だったので、直前期にこのボリューム感がある租税法を、学習の初期にやったようなかたちで回して復習することはできなかったんですけれども、それでも自然と身に付いていたようで、本番では、自信がなくて感覚で解いたところも点数を拾えていたんです。

――:確かに、租税法の得点は会計学の次に高いですね。

越智:租税法は、数値など覚えなければいけない部分もあると思うんですけれども、そこは、頭で覚えるのではなくて体で覚えたらいいんだよという髙野先生の言葉をそのまま信じて、何回か解いているうちに、自然と反応できるようになりました。頭を使って覚えた労力は、数値に関してはあまりないので、本当に髙野先生のおっしゃるように身に付けることができたなと思います。

――:答練は受けていましたか?

越智:ライブで答練を受ける時間まではなかったです。

――:確かに働きながらだと答練まではやりきれないですよね。

越智:短答式試験4科目に比べて、論文式試験のみの租税法、経営学の2科目が足を引っ張っていたので、まずはそこをボーダー以上に上げないといけないということで、そこに達するまでの答練との付き合い方も、定期的な学習相談のときに国見先生にアドバイスいただきました。

――:模試はどうでしたか?

越智:模試だけは、自分がどういう位置にいて、今までの学習がどれほど身に付いたのかを確認するためと、普段あまり触れていない科目も、どの程度去年の記憶が残っているのかを確かめる意味で、春と夏の2回とも受けました。

――:普通の会社で働いていれば、会計士試験が駄目だったらまたこの仕事をやればいいという選択もあり得るので少し気持ちが違うと思うんですけれども、とはいえ、働きながら勉強するのはかなりきついと思います。

越智:合格するための採用として法人に入所させていただいたので、合格することがまず一番のやるべき仕事というかたちでサポートいただきました。

――:会社自体がそのような雰囲気にはなっているんですね。

越智:全面的に、短答式試験免除採用者は合格することが一番優先すべきことという認識が共有されていて、人事の方もそうですし、現場の方も同じ認識で応援してくださったので、その期待に応えたいと思って励みになりました。ただ模試の結果や進捗状況を見ると、このままではやばいなという気持ちもありました。

――:模試の結果が悪かったときはどうされてましたか。

越智:まず、本番3日間の貴重なシミュレーションとして、時間配分や休憩の使い方をどう改善すべきか振り返ることが重要だと思いました。それから、CPAの受講生の皆さんは優秀な方が多いので、順位も一応は気にするんですけれども、まずは自分がやったことがどう点数に反映しているかというところを見ていました。ちゃんと伸びているのであれば、この学習方法は間違っていないんだと確認して、最後の逆転をイメージしながら基礎を固めていきました。
それと、気持ちの切り替えをうまくしようと心掛けました。日々の仕事が終わってからの勉強のペースで追いつくのかなという不安と焦りが付いてまわったのですが、焦ったところで、学んだことを身に付けないと結局点数は上がらないと思い直して、目の前の課題に取り組みました。また、模試の答案をもとに、講師の方々に自分の学習状況を把握していただいて、計画の確認や修正をしました。

――:模試後に各教科の講師に聞いて、「ここは今の段階できなくていいよ、ここはできてないないとまずい」などレビューしてもらったのですね。

越智:そういうメリハリはつけられたので、単純に点数が悪いから落ち込むということはありませんでした。そこからどうしたら本番に間に合うようにできるかという視点で、やる気をかなり引き出していただくようなかたちで面談していただきました。

――:ライブの講義に出ることはほとんどありませんでしたか?

越智:ライブの講義はさすがに出られなかったんですけれども、Webの倍速再生で時間短縮できたので、自分が理解できないところは巻き戻して何度も聴きました。一つの講義の中でも、自分が2回、3回と聴くべき箇所というのは、全体のうちのいくつかの箇所だと思うので、その部分を1回目のときにしっかり納得するまで繰り返して、仮に分からなくてもメモに残していました。
しっかりとメモしたテキストを回すことで、何度も講義を受けたことと質的に遜色ないような効果でやれていたのではと思います。

――:書いてあるものを見ると、リンクもして、あの映像で言っていたなと思い出しますね。

越智:はい。講義を何度も見直す余裕はなかったので、1回目でしっかりメモを残すようにしました。国見先生もおっしゃっていたんですけれども、理解は最初に固めて、そこから反復していくとよいということで、理解が中途半端なまま反復しても何度も間違えたり誤った形で覚えてしまったりしてしまうので、効果が半減してもったいないと思いました。はじめに、理解し切るということを意識して、ある程度のところまで理解できていたからこそ、繰り返す回数も少なくできたのかなと思います。

――:急がば回れというか、最初は200時間、300時間かけて集中して一度しっかりと理解したほうが後々早いですもんね。

越智:CPAではどの科目でも、まずはしっかりと理解するためのテキストや問題が調えられているので、講義で理解した内容を自分で使えるか問題を解いて確認して、間違ったものを自分で解けるまで反復しました。
理解していないものを反復しても、なかなか理解に転じるのは難しいと感じました。ですから、深く広く理解されている講師の方に、こうだよと最初にしっかり噛み砕いて教えていただいた上で、その道筋と同じようにやれば解けるというところをまず最初に固めて、そのやり方を自分のものにすることで、違う形で出ても、教わったものをベースにして使っていけるという良い流れで力を伸ばすことができたと思います。

――:将来はどんな会計士になりたいですか?

越智:まずは抽象的ですが、世界中のどこに行っても、自分が関わることで問題を解決したり、新しい価値をもたらすことができる会計士になりたいと思います。そのためには広い土台が必要だと思うし、監査人として客観的に企業を見ていくだけではなく、自分がプレーヤーとして価値あるものを作り上げていく経験も必要になってくるかもしれませんが、最終的にこれまでのどの会計士とも違う、会計士の枠にとらわれないような、自分ならではの道で社会の役に立ちたいと思っています。

――:日本の会計士試験を働きながら合格した、やり切る力があれば大丈夫ですね。

越智:確かに、これから会計士の資格を持つことで得られる多様な可能性を引き出すには、そういう働きながら勉強するというハードルを乗り越えて、自分を成長させることが将来の支えになると思って挑戦した1年でした。

――:勉強していく中で、論文に再挑戦する最初にそう思われたんですよね、本当にすごいと思います。1回目の論文式試験が駄目だったとき、もうやめてしまおうかなと思ったとおっしゃっていましたよね。

越智:その論文1年目のときもそうですし、5月の短答式試験のときも、これで駄目だったら本当に諦めて、まったく違う方向で別のキャリアを歩んで行こうという覚悟で臨みました。
そのきっかけになったのも、関西の会計士の方とお会いする機会があって、「次がダメなら諦める覚悟を最後まで忘れずに、合格するぞ!という意識を強く持って、不安にのまれることなく、弱気にくじけることなく、いままで以上に一心不乱に日々勉強に励み続ければ、きっと花開くときがくるから、明けない夜はないから」というお話をいただいて、私に足りなかったのはこれだったんだと気づきました。
特に今は、論文式試験は3回のチャンスがあるので、どうしてもそれを踏まえて戦略を立てることもあると思います。ただ、それだけではなくて、今回が最後なんだ、これで決めるんだ、というように逃げ道をなくして危機感を自分に持たせ続けることで、押しつぶされそうなときでもまた立ち上がって、最後まで粘って、やれるだけのことをやりきれたのかなと、振り返って思います。

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