福岡:三ノ輪さん、よろしくお願いします。

三ノ輪:よろしくお願いします。

【公認会計士を目指すまで】
理系大学院から公認会計士を目指そうと思った理由

福岡:現在慶應大学院2年生、高校は桐蔭学園ということで中高一貫教育ですか?

三ノ輪:そうですね。私は幼稚園からずっと桐蔭学園に在籍していました。中学、高校、大学と10年間ずっとラグビーをしていました。

福岡:それで桐蔭学園から慶應大学の理系に進まれたのですが、大学に進まれる時にはどんな方向を目指したいと思われて選ばれたんですか?

三ノ輪:元々親の仕事の関係で建築関係に興味がありまして選びました。大学では建築や構造力などを勉強していました。

福岡:学科はどこだったのですか?

三ノ輪:システムデザイン工学科という学科で、そこに建築が含まれていました。

福岡:まさにお父さんの後を継いで建築の仕事をやっていこうと思っていたのですね。でも理科系の方だと実験などが大変だったのではないですか?

三ノ輪:そうですね。実験など大変でしたね。

福岡:学校に行って実験をしたりラグビーの練習をしたり大忙しでしたね。

三ノ輪:そうですね。朝はカフェでバイトをして、昼間は授業に行って、夕方は練習に行くという毎日でしたね。

福岡:大学を卒業されてからは大学院に進まれたのですね。

三ノ輪:はい。大学院の理工学研究科に進みました。大学院では勉強しようと思ったので、ラグビーは引退しました。

福岡:そこでもやはり勉強は建築の事を学ばれていたのですか?

三ノ輪:それが違うんです。大学4年生の時に研究室に配属されるのですが、そこで建築系の研究室を選ばずに、ソフトウェアとかを作るようなプログラミングとかをメインにする研究室に入りました。自分が建築をゴリゴリやっていくのはちょっと違うなと感じまして、そこで少し方向転換をしました。

福岡:専攻を変えることに不安等はありませんでしたか?

三ノ輪:自分の同級生とかは既に一流企業に入っていたので、自分は社会人になるのが遅れてしまう劣等感を感じつつも、今そのまま社会に出ても、何も提供できない焦りが大きかったです。なんでもいいから何かしらのスキルを身につけてから卒業したいと思いました。

福岡:なるほど。三ノ輪さんはどの時点で公認会計士という資格を知って、目指そうかなと思ったのですか?

三ノ輪:友人が公認会計士を目指していたので、資格の存在は知っていました。でもその時は公認会計士について詳しく知らなくて、なぜ目指しているのだろうという程度の認識でした。

福岡:目指そうと思ったきっかけはあったのでしょうか?

三ノ輪:2016年の11月に就活を初めた時に、IT企業や製造業を見ていたのですが、少し就きたい職業と違うなという思いがあり、IT以外にも様々な業種を見ていました。その過程で既に試験に合格していて、現在監査法人で働いている友人の話を聞く機会がありまして、会計士にはこういうことが出来て、こんな選択肢があって、将来的にはこういうことまで出来るよという話を伺いました。その話を聞いて会計士に魅力を感じるようになり、その後も色々な会計士の方にお話を伺うようになりました。その結果目指してみようかなと思いました。

福岡:なるほど。

三ノ輪:最終的に国見先生にお話を伺いに行って、勉強しようと決めました。

福岡:それはいつ頃ですか?

三ノ輪:11月頃ですね。

福岡:2016年の11月にということですね。

三ノ輪:はい。国見先生が覚えていらっしゃるかはわかりませんが、「理系の子は受かるよ」と言っていただいたのがすごく印象深くて。それを聞いてなんの根拠もありませんが受かるのかなと思いましたね(笑)

【CPAでの学習方法】
研究室からいただけた時間が9ヶ月だったので、その間に合格する必要がありました。

福岡:その後CPAにすぐに入学したのですか?

三ノ輪:1ヶ月後の12月の半ばくらいには初めていたと思います。

福岡:ちなみにその時は大学院の1年目ですよね?

三ノ輪:そうですね。

福岡:会計士の勉強と大学院との両立に問題はなかったのですか?

三ノ輪:私は結構特殊なパターンで、指導教員の先生の方に、会計士を目指して勉強がしたいという話をした際、大学院1年生の前半でガッツリ研究してきたせいか研究を止めていいから半年から9か月くらい専念していいよ、と言っていただけました。大学院的にはあまり良くないのですが、そういう理解があって助かりました。

福岡:なるほど。

三ノ輪:研究を一度ストップして、研究室のことは考えなくてもいいから、会計士の勉強に専念いいよという言葉のおかげで短期間合格を目指すことが出来たので絶対に9ヶ月で受からないといけないなと思いましたね。

福岡:国見先生が9ヶ月で受かりましょうと薦めたわけではないですよね(笑)通常であれば2年か1.8年受験コースをお薦めしますよね。

三ノ輪:そうですね、1.8年コースを薦めていただきました。しかし社会人になるのが1年遅れてしまうので、学生じゃなくなってしまうというのが自分の中でとても嫌だったんです。同級生は社会人としてバリバリ働いていて、ただでさえ遅れを取っているのに、もう1年というのは納得できなかったというのがあります。それも短期で目指そうと思ったきっかけですね。

福岡:それで大学院の研究もストップして、公認会計士試験の勉強をすることを決めたのですね。

三ノ輪:ストップといっても必ず行かなければならない行事というのがありまして、そういったものには行きましたが、それ以外の日常的な研究は一度ストップしました。

福岡:大学院1年生の12月から勉強を始めたということですが、どのような勉強をされたのですか?簿記もその時初めて勉強されたのですか?

三ノ輪:はい。

福岡:最初は勉強法やコツもわからず難しかったと思いますが、どのように勉強を進めていったのですか?

三ノ輪:最初はとにかく授業を消化しなければ間に合わないという状態でしたので、最初の入門コースから自分の出来る限界のスピードでひたすら受け続けました。

福岡:DVDで授業を消化していかれたのですか?

三ノ輪:そうですね。毎日DVDを倍速で見ていました。

福岡:限界というのは具体的にどのくらいのスピードで消化していたのですか?

三ノ輪:最初の方は、多い時で1日4本(注:1本あたり3時間程度)くらい授業を見ていました。

福岡:なるほど。

三ノ輪:200本の授業を3ヶ月くらいで見終えたかったので、1日最低2本は見るようにして、残りの時間は基本的にその復習をするだけという感じでした。

福岡:そのペースを持続させるのは大変だったでしょう?

三ノ輪:そうですね。

福岡:授業を進め続けているとなんだかわかった気になりますけど、後でわからなくなったりしますよね。問題を解いてみて実力を確かめていましたか?

三ノ輪:はい、していました。結構辛かったです。

福岡:勉強場所は基本的にCPAの校舎だったのですか?

三ノ輪:そうですね、CPAと学校の図書館とカフェと家を数時間ごとに分けてポンポン移動してという感じでした(笑)講義は校舎で見て、復習は他の場所でやるという感じで使い分けていました。

【合格までのスケジュール管理】
9ヶ月という無茶なスケジュールに親身になってアドバイスしてくれた先生に感謝です。

福岡:その勉強のペース配分というのは自分で作られたのですか?それとも先生と相談されましたか?

三ノ輪:登川先生に相談した時に作っていただきました。9ヶ月で合格したいと言った時に、普通なら「無理だ」と言われてしまうところを、しっかり1日2本ずつ見ていけば現実的なペースだからと真面目に相談に乗っていただきました。それが合格できた一番の勝因というか、もし登川先生がいらっしゃらなければ受かってなかったかもしれない、と感じます。本当に登川先生には感謝しています。

福岡:その後のスケジュール相談も登川先生によく相談されていましたか?

三ノ輪:そうですね。定期的にではありませんが、自分一人で勉強しているとこの勉強法が正しいのかなと思うことが出てきて、その度に相談すると丁寧に教えてくださり、「それで大丈夫だよ、良いペースだよ。」とアドバイスをいただきました。相談するたびに、合格することが現実的になっている感覚を受けましたね。最初は受かればラッキーというくらいに思っていたのですが、本試験が近づくにつれ、やはり受かりたいという思いも強くなっていきまして、その中で登川先生の存在は大きかったですね。

福岡:空いている時間は全て勉強されていたので、受験時代のお友達はあまりいなかったのではないですか?

三ノ輪:そうですね。CPAで話すのは講師の方くらいしかいなかったんです。その中で同じラグビーサークルの後輩が同じ受験生として仲良くしていたので、その存在は結構大きかったですね。

福岡:詰め込んで勉強をされていましたが、息抜きの時間というのはありましたか?

三ノ輪:ないですね(笑)基本的に勉強をしていないと落ち着かなかったので。

福岡:1日DVDを2本見ると決めたら平日も休日も関係ないと決めた以上はそのペースを守っていたのですね。

三ノ輪:そうですね。この9ヶ月はもうそれだけでした。

福岡:ある程度講義が進んでいくと、答練なども出てくるかと思いますが、答練を受けるペースも登川先生にスケジュールを組んでもらっていたのですか?

三ノ輪:いえ、答練はライブで受けることはほぼ不可能なスケジュールでしたので、まとめて何回分かもらって、頭の調子の良い時に解いていましたね。受けるタイミングというのは完全に自分の気分次第という感じでした。そこは計画的にはやっていませんでした。

福岡:なるほど。

三ノ輪:やはりテキストばかり読んでいると、自分の知識がついているかどうかがわからないので、そう感じた時に解くようにしていました。

福岡:作成した答案を提出したりはしていましたか?

三ノ輪:最初は提出していましたが、後半は全然提出できませんでした。解いた後に答練の解答を読んで、間違えた論点をテキストの該当箇所にチェックしていました。

福岡:最初はおそらく短答向けの答練が中心だったかと思うのですが、論文式試験も意識しながら勉強をされたのですか?

三ノ輪:短答受験のときは一切論文を意識していませんでした。とにかく短答に受かろうという一心でした。短答に合格した人は監査法人に採用される枠というのがあるので、最悪それでもいいかなと思っていました。そのため、短答に受からないと何も始まらないと思っていたので、5月までは短答のことしか考えていませんでした。

福岡:なるほど。

三ノ輪:あの時は相当辛かったですね。

【短期合格を支えたCPAの重要性】
短期合格を目指す上で重要性は必須です。メリハリのついた学習で効率的に得点を伸ばすことができます。

福岡: CPAではテキストに論点ごとの重要性というのを明示しています。重要性が高いA論点とB論点をやれば8割の範囲が学べるようになっていますが、時間がない中でC論点はやらない、とか何か工夫をされていましたか?

三ノ輪:そうですね。最初の方はA・B論点しか見ていませんでした。終盤の合格が見え始めたあたりからC論点にも手を付け初めました。初めは本当にA・B論点しか見ていなかったので、それが効率的な勉強に繋がったと思います。

福岡:A・B論点しか見ていなかったことについて不安はありませんでしたか?

三ノ輪:講義の中でもA・B論点だけをしっかり押さえていれば大丈夫だというお話もあり、他を覚える時間も余裕もなかったのでとりあえずA・B論点の勉強をして、A・B論点だけは落とさないようにしました。

福岡:テキストは説明や例題を含めて全てに重要性を振っているので、取捨選択して勉強できるのは効果的でしたか?

三ノ輪:あれはすごく使いやすいなと感じました。他の予備校がどうなっているのかはわかりませんが、重要性が説明や例題にまで付されているのはすごくいいなと思います。

福岡:重要性を全く振っていなかったり、この分野はAだとかいうように大きな単元ごとに重要性が振られていたりする予備校はあるようです。その点CPAは細かく問題ごとに振ってあるので学習範囲を明確に把握できて便利ですよね。

三ノ輪:振っていないと、全ての論点を同じレベルで読んでしまうので頭にうまく入ってこないのではないかと思います。また大きな範囲が重要と言われても全てを覚えられません。やはり例題や小項目ごとにAと書いてあると、絶対にここは覚えようという気持ちになりますし勉強をしながら強弱がつけやすくなりますね。

福岡:合格できそうかなと思った、と先ほどおっしゃいましたが、それはいつ頃でしたか?

三ノ輪:短答前に3回模試がありまして、1回目は合格点まで100点以上点が足りていなくて、実はそこで一度諦めかけたことがありました。しかし、周りから「このペースの人にしては良い点だ」と言われたり、「むしろ良く取れたね」と同情されました。私は負けず嫌いなので、気を使われているのが嫌だったので「次は絶対に7割取るぞ」という意欲が高まりました。

福岡:なるほど。燃えたのですね。

三ノ輪:2回目は100点以上点数が上がり、良い順位が取れました。

福岡:何位くらいでしたか?

三ノ輪:順位表に載るくらいですね。

福岡:結構上位ということですね?

三ノ輪:比較的上位の方に入れました。その時が、「あ、いけるかも」と思った瞬間ですね(笑)

福岡:1回目から2回目の間に、何か変えて取り組んだことはありますか?

三ノ輪:勉強法自体は一切変えなかったのですが、気持ちが全然違いました。「本気で覚えよう」、「落ちたら死ぬんだ」というくらいに追い込みました。メンタルの部分が大きく変わったと思います。漫然とテキストを見たりせずに、1回でこの論点は絶対に覚えようという気持ちで読み続けていました。

福岡: 12月に会計士を目指された時点から心を決められていましたが、さらにもう1段スイッチが入った感じですよね。

三ノ輪:そうですね。さらにスイッチが入った感じがありました。

福岡:その頃は1日何時間ほど勉強されていましたか?

三ノ輪:時間はあまり計ってはいませんが、起きている間はずっとやっていたので12時間以上はしていたと思います。

福岡:朝8時頃に起きて夜9時くらいまでは、ほとんど勉強をしていたという感じですかね。

三ノ輪:そうですね。一番追い込んでいた時は4時間くらいしか寝てなかったです。

福岡:ちなみにそれだけやっていると、勉強効率が悪くなる時はありませんでしたか?

三ノ輪:ありましたね。そういうときは思い切り寝るようにしていました。あとは体を壊さないようにというのが一番大きかったですね。しっかりと寝るようにしていました。

福岡:何か楽しみはなかったのですか?

三ノ輪:この頃はトイレの中やお風呂の中、食事中でもずっと勉強していましたので、寝るのが一番の楽しみでした。

福岡:本当に受かると決めた以上は、自分のためのご褒美は寝ることぐらいだったということですね。それで迎えた5月の短答の手応えはどうでしたか?

【短答式試験合格と論文式試験勉強法】
理解中心の覚え方だったため、たった3ヶ月の論文対策でも効率化出来たと思います。

三ノ輪:手応えはありませんでしたが、自己採点では合格ボーダーは超えていたので安心しました。

福岡:すると、論文に向けての勉強を始めたと思いますが、租税法も経営学も初めてで、他の科目も論文式試験の問題への対応力もつけないといけない中で、どんな勉強をされていましたか?

三ノ輪:短答が終わってからの3ヶ月間が一番辛かったですね。とりあえず租税法と経営学の授業を見終わるまでは、完全にそちらにフォーカスしていました。

福岡:とにかく論文科目のDVDを全て見てしまおうという感じですかね。

三ノ輪:授業を見て理解するのが先だと思っていたので、最初の1ヶ月くらいはそれを消化するために費やしました。残り2ヶ月は、企業法と財務諸表論と管理会計論は論文対策集を使って勉強していました。丸暗記ではないですが、全部頭の中にいれようと思いました。

福岡:監査論はどのように勉強していたのですか?

三ノ輪:監査論は最後の1ヶ月で手をつけ初めたという感じですね。論文対策としては特に変わったことはしていません。

福岡:基本的に短答でそれぞれの科目を勉強してきて理解してきているので、論文対策集を覚えることもそんなにストレスはなかったですか?CPAは出来るだけ理解して暗記することを減らそうという指導でしたが、どのような感想ですか?

三ノ輪:そう言われていたおかげで、理解中心の覚え方だったため、ストレスなく論文の勉強に移れました。企業法はやはり全く別物というのはありましたが、それ以外の科目はすんなりと移ることができました。そこが時間短縮といいますか、効率化出来たところかと思います。

福岡:論文では短答とは違って、自分の理解を表現出来るかが問われますがそこはいかがでしたか?

三ノ輪:理系でほとんど活字を読んだことがない様な状態だったので、苦労しました。

福岡:短答は答えが与えられていますが、論文は自分で文章を書く練習が大変でしたよね?

三ノ輪:そうですね。

福岡:具体的にどの様な方法で取り組みましたか?

三ノ輪:答練は短答の時よりも論文の時の方が使いました。解答をひたすら読むということをしていました。テキストよりも論文対策集と答練の解答をひたすら読んでいましたね。答案の論文構成が理解できていないというのが大きかったので、文の作り方を知りたいという意味でそれをしていました。

福岡:細かいことを覚えようというのではなくて、文章の構成などというのを見ていたということですか?

三ノ輪:基本的な流れの把握を中心にやっていました。

福岡:例えばこの問題の解答の構成は3つの部分から成っている、というように意識して書く練習をすると、論述に必要なセンテンスだけ記憶し書けるようになれば、全てを覚えて書く必要はないということが分かるようになり、効率よく勉強できそうですよね。

三ノ輪:そうですね。この問題には何個書くべき論点があるか、などは結構大事にしていました。この論点は4つ挙げて、それぞれに具体的にこういうことがあるというような感じですね。それを理解した上で暗記していました。

福岡:文章構成を一通り回した後で、最後はテキストに戻られたのですか?

三ノ輪:そうですね。

福岡:勉強する科目のバランスはどうでしたか?

三ノ輪:会計学の配点が大きいので財務会計論と管理会計論ですね。あと監査論は論文対策集がなかったのでテキスト中心にやっていました。論文の重要性が高いところからつぶすようにしていました。また、文の作り方は自然に解答を読んだりしているうちに出来るようになっていたので、その枠にあてはめるためのパーツをテキストで補充していくイメージでした。

福岡:実際に自分で答案に起こした訳ではないのですか?

三ノ輪:そうですね。書いている時間がもったいないので答案には起こさなかったです。短答の勉強の時もそうでしたが、あまり書くという作業はしていませんでした。

ちゃんと書いたのは最後の模試くらいです。それまではひたすら読むという作業をしていました。

福岡:実際に模試を受けてみてどうでしたか?

三ノ輪:合格ボーダーは超えているかなというくらいでした。

福岡:すごいですね。ある意味ぶっつけ本番ですよね。

三ノ輪:そうですね。時間が無かったので模試で練習しようというのはありました。

福岡:自信はありましたか?

三ノ輪:全然ありませんでした。

福岡:初めての論文の答練を受けてみると、分かっているつもりでも、書こうと思うと最初の3行くらいで結論まで終わってしまって何を書いていいのかわからないと不安になる初学の方は多いのですが、そうならなかったのはなぜでしょうか?

三ノ輪:やはり文章の構成をつくれるような覚え方をしていたので、全く書けなくなるという現象が起こらなかったのかなと思います。

【科目配分とスランプ脱出】
勉強時間に集中していない時間は作らないような工夫をしていました。

福岡:得意科目や苦手科目はありましたか?

三ノ輪:そんなにありませんでしたね。得意というのも苦手というのもなくて。1日の時間の中で等しい時間を各教科に当てていたので、どこかに偏った勉強法ではなく、得意なものを伸ばそうとか、苦手なところに時間をかけたりすることもなかったです。そのおかげかもしれませんが、どこかで凹んでも、どこかで取れるだろうというのはありました。

福岡:時間配分に工夫はありましたか?何時から何時にはこれを勉強するとか。

三ノ輪:勉強時間を記録するアプリがありまして、それを活用していました。

福岡:Studyplusですか?

三ノ輪:そうですね。あれを使って1教科2時間であれば2時間やって、どんなに集中できてなくても次の教科にいくと決めて学習していました。それを常に記録していました。

福岡:自分の好きなものだけ、また苦手なものだけに時間をかけてやるのではなく、バランスをみながらやっていたということですね?

三ノ輪:やはり時間を記録していると偏りが視覚化されてよく分かるので、じゃあ次の日はここを減らしてこっち側に時間を割こうとかというようにしていました。

福岡:集中出来ていないなと思う時もありましたか?

三ノ輪:もちろんありました。

福岡:どうしても字面だけ追ってしまうとかですかね?

三ノ輪:頭に全然入ってこないなと思う時はよくありました。やはり人間なので、疲れが溜まっている時やしっかり寝られなかった時などは全然集中出来ていませんでした。あとはずっと同じ場所でやっていた場合もあまり集中できなかったですね。

福岡:何か対応策を取ったりしましたか?

三ノ輪:場所を変えてみたり,疲れている日は早く寝るようにしてみたり、健康的な食事を食べてみたりなど、できるだけ勉強に集中できるように工夫をしていました。

福岡:起きている時間は限られていますからね。その間にしっかり頭を働かせないと意味ないですものね。

三ノ輪:集中できていないと精神的に辛くなってきますからね。

福岡:集中できなくてスランプに陥った時期などはありましたか?

三ノ輪:あったような気がしますね。そう感じたら、その状態から出来るだけ早く抜け出せるような変化をつけようとしていました。

福岡:それは例えばどのような変化ですか?

三ノ輪:例えばペンの色を変えてみたり、付箋を貼ってみたり、テキストに書き込みをしてみたりというような些細な変化ですが、そういうことで脳への刺激やインプットの仕方を変えるようにしていました。

福岡:先ほどおっしゃいましたが、短答模試の1回目を受けて、合格点より100点低かった。そこで2回目は気合をいれ,良い点が取れたし短答本試験も合格した。しかし、論文式試験を考えると3ヶ月間でやることはこんなに溜まっている。このような状況でも気持ちは折れませんでしたか?

三ノ輪:辛いなという部分はありました。でもラグビーをやっていた時の方が辛かったと感じることが多くて、あれと比べたらこんなもの大したことないなという感じはありました。基本的に風邪を引かない体質なのですが、論文式試験の一週間くらい前に39℃のの熱が出まして、そのときは「もう終わったな」と思いました(笑)結局当日まで治りませんでしたが、自分は今までこんなにもやってきたんだという精神力で挑みました。

【試験後合格発表までの過ごし方】
全てを出し切った試験から発表までの過ごし方

福岡:試験科目全てが終わって、手ごたえとしてはどうでしたか?

三ノ輪:もう絶対に落ちたと思いましたね(笑)

福岡:自分で各科目を振り返ってみてどうでしたか?

三ノ輪:科目別では会計学が何も手応えがなくて、絶対だめだろうという思いがありました。企業法や監査論、経営学などは比較的書けたとは思ったのですが、租税法、会計学はもうダメだという状態でした。

福岡:自分のなかではダメかもしれないという感じだったのですね。

三ノ輪:はい。しかし蓋を開けてみたら、意外と良い点数だったりしていました。

福岡:失礼ですが総合順位はどのくらいでしたか?

三ノ輪:500位台だったと思います。一応結果を持ってきました。

福岡:監査論が高いですね。

三ノ輪:監査論の齋藤先生が予想をすごく当てていて論文も書きやすかったです。

福岡:やはり監査論、企業法、経営学で稼いだという感じですか?

三ノ輪:そうですね。

福岡:手ごたえが良くなかった会計学も偏差値51だったのですね。

三ノ輪:自分のなかでも会計学は結構得意な方だなと思っていたのですが、それがひどかったのでかなり自信を失っていました。

福岡:試験を終えてからはどう過ごしていたのですか?

三ノ輪:体調が戻らなかったので1,2週間はずっと寝込んでいました。

福岡:監査法人のイベントなどがありましたがそれどころではなかったのですね。

三ノ輪:監査法人のイベントにも少し行きつつ、元気を取り戻しつつという感じでしたね。体重も6キロくらい落ちました。

福岡:そんなに落ちたのですか。それで9月の半ばくらいには体調が戻ったということですが、合格発表まではどのように過ごしていましたか?

三ノ輪:ひたすら研究をしていました。研究室の作業をストップしていましたので,他のことは一切考えずに研究をしていましたね。

福岡:会計士の結果のことは考えていましたか?

三ノ輪:落ちたら落ちたでその時に考えようと思ったので、今やるべきことをやろうと思っていました。そのため合否については考えていませんでした。

福岡:合格発表があり無事合格となりましたが、やはりホッとしますよね。

三ノ輪:嬉しいよりも安心のほうが大きかったですね。

福岡:大変失礼ですが、もし落ちていらしたらどうしていましたか?

三ノ輪:勉強は間違いなく続けていたと思います。それでも短答合格者として監査法人に就職していたかなと思います。

福岡:監査法人に勤務しながら続けていたということですね。

三ノ輪:そうですね。学習範囲は終わっていたので、後1年続ければいけるかなという感覚はありました。

福岡:落ちていた場合でも合格できる目処があったということですね。

三ノ輪:そうですね。働きながらでもいけるのではないかというレベルにはなっていると思っていました。落ちたらそのような方向性で、受かったら就職しようという気持ちでした。

福岡:そして今後は監査法人に進まれるということですね。

三ノ輪:はい、そうですね。

福岡:大学の先生も理解してくれているのですね。卒業は今年の3月ですが、監査法人に勤務しながら大学院に通うという形ですか?

三ノ輪:いえ、4月から正社員なので、卒業するまでは非常勤で入れる時に入ろうかなという感じですね。やはり今は研究を第一に考えてまずしっかり卒業したいですね。

【私のテキスト活用方法】
“どうやったら点が取れるか”を考えながら勉強することが大切です。

福岡:使用教材を見せてもらってもいいですか?

三ノ輪:はい。取り立てて変わったことはしていないです。特に計算科目は本当に何も書いていません。

福岡:9ヶ月で受かる方というのはどんな風に勉強していたのかというのが気になります。

三ノ輪:理解はその瞬間に絶対しようとして、暗記は何回転もさせることで定着を図っていましたね。

福岡:理解したらもう忘れませんでしたか?

三ノ輪:いえ,忘れますね(笑)忘れないように、理解した内容を読んだときにわかるように文字で起こしていました。自分が読めばわかるように、読みながら紙に書いたりしていましたね。

福岡:自分なりの理解を横に書いておいたということですね。

三ノ輪:そうですね。理解する作業をもう一度繰り返さない様にしていました。

福岡:では自分なりの理解を手書きで書いておいて、これを読み返せば思い出せるような感じだったのですね。

三ノ輪:テキストの活字だと思い出せませんが、自分が書いた文字を見たら理解出来る様にしていました。

福岡:先程のページに付箋が沢山貼ってありましたね。

三ノ輪:テキストを加工することが好きではないので、テキストにはあまり書き込んでいないのですが、重要性が高いところのページ数とキーワードを付箋に書いていって、復習するときはここだけ見て復習していきました。キーワードを見て周辺の論点が頭の中に出てくるかどうかを記憶の基準にしていました。

福岡:自分の中のインデックスになっているのですね。

三ノ輪:そうですね。これで思い出せれば、復習もすぐに終わりますからね。キーワードを見て太字のところが思い出せるかとかを確かめていました。

福岡:最後に復習するときには、この付箋を見ながら、これに関しての論点が思い出せるかをザッとみていく訳ですね。

三ノ輪:そうです。

福岡:その章の重要なことなどを再現できるようなリストになっているということですね?

三ノ輪:そうですね。試験直前などはここだけを見て、全体的にパッパッと見ていくイメージですね。

福岡:ちなみに、この付箋は何でしょうか?

三ノ輪:これは一周目の時に大事そうなところにポンポン貼っていったものですね。

福岡:だんだんそれが、こちらのキーワードの書かれた付箋の方に集約されていったということですね?

三ノ輪:何周目かで、段階に分けていました。最初は付箋を貼っていくだけで、次はこの色を変えて文字を入れていって、まだ覚えていないところはまた色を変えて文字入れてということをやっていました。

福岡:登川先生からもノートはあまり作らない方がいいよとかそういった話はありましたか?

三ノ輪:いえ、勉強方法自体はあまり聞きにいった事がなかったので、完全に自分の頭に入りやすい方法でやっていたという感じですね。

福岡:会計士試験の学習をしてみて、試験範囲的な分量は多かったと感じますか?会計士試験というのは一言でいうとどういう試験でしたか?

三ノ輪:ひたすら分量が多かったですね。想像の何倍もありました。最初は半年くらいでいけるだろうと思っていたのですが、想像以上に多かったので大学受験の時の様な頭からガンガンやっていくという勉強方法だと絶対に受からないなと思いました。途中からいかに効率的にやるかという風にシフトしていきました。

福岡:これから勉強する人に対して、効率的に勉強するという点で何かアドバイスをお願いします。もちろん9ヶ月で合格することを勧めることは難しいと思います、三ノ輪さんの勉強法は、多忙な社会人の方にも通じる学習方法かなと思います。仕事しながら勉強する方へはどんなアドバイスをされますか?

三ノ輪:漫然とやらないというのが一番大事だと思います。なんとなく読んでいると、その瞬間は覚えていても、時間が経つと忘れてしまったりします。だから目的を持つ、具体的にこの答練でこれだけの点を取るために、どうしたらいいのだろうかと考えたり、なんとなく勉強を始めてみるのではなく、勉強を始める前にまずどうやったら点が取れるか、勉強方法の部分から考えてやるというのがすごく大事だと思います。

福岡:なるほど。

三ノ輪:その人にあった勉強方法は恐らく沢山あると思うのですが、漫然とやると学習量がすごく多いので、何年もかかってしまうと思います。9ヶ月で受かると決めたら、その中でこの点を取るためには何が必要なのか、といった勉強の質的な部分も非常に重要かと思います。勉強量ももちろん必要なのですが、勉強方法が重要だと思います。それとモチベーションの保ち方もそこに加わってくると思います。そのバランスをうまく保てるようにするにはどうするか、をずっと考え続けないと漫然と勉強している状態になってしまいますね。

福岡:気をつけないと、ついやるべき事が何かを見失ってしまいますよね。

三ノ輪:そうですね。時間がある方は特にそういう傾向があるような気がするのですが、時間がない人ほどしっかり効率的にできているのではないかと思います。

福岡:勉強になりました。

三ノ輪:短期間で勉強することのメリットもあるのではないかと思います。短期間で全体像を見ているので。そこで短期間での勉強のメリットをうまく活かせる何かを考える必要はあるとは思いますが。

福岡:なるほど。よくわかりました。ありがとうございました。

【将来の会計士像】
理系の強みを活かした会計士になりたいです。

福岡:今は研究をしているということですが、これからは会計士の道を選ぶということですよね。今後はどのような会計士を目指したいと思われていますか?経歴的には異色ですよね。

三ノ輪:そうですね。バックグラウンドが他の人と違うと思うので、会計士っぽくない会計士、他の人に出来ないような何かをしたいなと思いますね。そういう意味で、理系というバックグラウンドであったり、今は持っていませんが語学力を磨いたり、普通の人が普通にしていたら得られないようなスキルをどんどん身につけていきたいです。頼られるではないですが、自分にしか出来ない価値を見出せるような会計士になれたらと思います。

福岡:今監査というのが非常に方向を大きく変えて、AIの導入により、統計的なサンプリングではなく、精査の時代に戻っていいのではないかと思っています。取引的な不正を精査して潰していくという意味では、理系の統計学的な知識が活かされてくるのではないかと感じます。そういう意味で三ノ輪さんは、監査法人からは期待される気がするのです。

三ノ輪:活かせるのならば活かしたいなというのはありますね。でもまずは監査ですね。今まで積み上げられてきた監査というのをしっかり身につけたいというのがあります。ゆくゆくはそういった自分が持っていたバックグラウンドを活かして何かが出来るようなことがしたいと思っています。

福岡:楽しみです。ありがとうございます。それ以外に新たにチャレンジしてみたいということはありますか?

三ノ輪:まず今は英語の勉強をしています。ペラペラに話せる様になればカッコいいなという漠然とした目標ですが、そういうのがあるので自分の持っていないカッコよさそうなスキルを身につけたいなと思っています(笑)

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