【イベントレポート】「グローバルキャリアを目指すならUSCPA!駐在経験者が語るリアルストーリー」力強いメッセージを抜粋!

2025年9月23日、秋分の日にオンラインで開催されたトークイベント「グローバルキャリアを目指すならUSCPA!駐在経験者が語るリアルストーリー」。意欲的なタイトルに説得力を持たせるキャリアを歩んできた岡本航さんをゲストに迎え、USCPA学習で身につくスキル、それを活かして海外で働くための具体的なアクションを語っていただきました。多忙で参加できなかった方々もご安心を。今回はイベントの内容を抜粋してレポートします。
季節の変わり目は、新しい挑戦に向けて動き出すのに最適なタイミング。海外就職・外資系・グローバルポジションに少しでも関心を持っているなら一読の価値ありです。
目次
ゲスト
- 2013年、新卒で伊藤忠商事株式会社に入社し、東京本社で営業経理を4年、インド駐在中は2年にわたり経理、税務、経営企画などバックオフィス業務全般を経験。2018年にワシントン州でUSCPAを取得。2021年に伊藤忠商事を退社、その後はロンドン大学の修士号を取得し、2023年に株式会社unlock.ly入社。同社のCFOとして中小企業投資の実行、投資先のPMI・バリューアップ、M&Aアドバイザリーの業容拡大などに貢献してきた。
モデレーター
- メーカーの営業マンからキャリアをスタートし、USCPA資格取得後に大手監査法人に転職。その後リクルートホールディングスで連結決算やIR、コーポレートファイナンスなどの実務を担当。2019年よりUSCPAの講師業を始め、CPA会計学院にて主任講師として従事。株式会社EdiFinanceの代表取締役として会計ファイナンス人材に特化した英語コーチング事業にも力を入れている。
念願の総合商社で予想外の経理職へ
「海外に行ける可能性が高そうで、給料も良さそうだったから」と、就職活動で総合商社を優先した理由を語った岡本さん。大学時代にカバンを売るECサイトのインターンをしていた経験から伊藤忠商事の繊維部門に興味を持ち、それをアピールすることで面接を突破したものの、入社後は同社の金属カンパニーで経理部門に配属されることになる。
伝票打ち込みや連結決算の処理、営業スタッフのサポートなど、日々の業務は多岐にわたり、アルミを中心とした非鉄金属原料の開発及びトレードビジネスをバックオフィスからサポート。その経験を礎に岡本さんは会計ファイナンス人材としての専門性を高めていく。
吉田講師との対話では、大手商社の経理業務の複雑さや、オーストラリアやブラジルの子会社と連携しながら行う会計処理の難しさについても触れられた。
「子会社の鉄鉱石から採掘されたマテリアルの利益配分、国境を越えて取引する際の会計処理など、大手商社の経理は複雑な仕組みを理解する必要があると思います。当然ながら英語力も求められるわけですよね?」
「英語に関しては、日常会話が苦手でも会計の専門用語を使えれば実務に支障はなかったですね。ただ私の場合、読み書きは問題なかったのですが、ヒアリングとリスニングはダメで。当時の社内基準で英語のレベル評価が9段階に分かれていたのですが、レベル6を超えないと駐在を任せてもらえないんです。でも私はずっとレベル5で、駅前留学で2週間ほど缶詰になって特訓させられたことも……それでも無事に駐在を経験できました」

USCPA取得の経緯と勉強法
USCPA取得を目指した理由について、岡本さんは「入社3年目で業務が落ち着いき、時間に余裕ができたこと」、「営業部の投資チームにUSCPA資格の所有者が多く刺激を受けたこと」を挙げた。最初の3~4か月は朝5時に出社して、始業までを勉強時間にあてるスタイル。その後、インドの子会社に駐在してからも地道に努力を重ね、受験はドバイの会場を選択した(当時はインドでUSCPA試験を受けることができなかったため)。
勉強期間は約1年、合計1000時間ほど。特に力を入れたのがFAR(Financial Accounting & Reporting/財務会計)の勉強で、450時間ほど費やしたという。
「FARは90点台を取った記憶があります。試験時間の半分ほどで全問解き終わって、途中で退出したんですよ。明らかに勉強しすぎ。『やりすぎちゃったな……』と、帰り道で少し反省しました(笑)。時間配分のバランスが悪かったからか、その後、 AUD(Auditing and Attestation/監査及び証明業務)の試験で一回つまづいてしまいまったんです」
「AUDは日本人がいちばん苦戦する科目なんですよ。実務経験者じゃないと分かりにくい監査の概念を理解する必要があり、英語力もいちばん求められる科目ですから。では、質問を変えます。岡本さんの場合、努力して取得したUSCPAは実務に活きましたか?」

「そうですね。最初からインドのスタッフは駐在の私を尊重してくれていましたが、経理の知識やスキルに関しては懐疑的な目を向けられていた部分もあったと思います。その後、USCPAを取ってからは現地の経理責任者が私を信頼してくれるようになり、円滑なコミュニケーションがはかれるようになった実感があります。日本に帰国してからも、営業部門から一目置かれ優先的に仕事を任せてもらえるようになりました」
「伊藤忠は当時からIFRS(国際会計基準)を適用していましたよね?」
「まさに私が入社したのがIFRSへの移行のタイミングでした。だからUSCPAの受験勉強においても、会計分野に関しては実務を通して理解している内容が多かったですね。とはいえ総合商社の実務では特殊な論点しか扱わなかったするので、受験勉強を通して、ようやく会計の全体像を体系的に理解できた実感がありました」
インド駐在中の特別な経験
インド駐在時代の2年間、岡本さんは経営活動の計数管理や定性的情報の取りまとめなど、経理よりも経営企画の業務をメインに担当。当時、財務経理の人材はニューヨークやロンドンに駐在員として行くルートが主流だったが、金属カンパニーにはインドにバックボーンを持つメンバーが多かったこともあり、自然と岡本氏の駐在先もインドになったのだとか。
「最初の約半年は英語でのコミュニケーションに苦労しましたが、その後、急に全てクリアに聞き取れるようになりました。その後、本社の税務室に戻った後も、インドの案件は私が担当する流れになったのですが、ニューヨークに駐在して英語がペラペラの人も、インド人とのミーティングでは何を言っているのか分からなかったようです。駐在する前はインド英語が自分の武器になることは予想していなかったですね。他にも、インド大使館との交流など、日本ではできない経験をたくさん積ませていただきました」
USCPA資格が開いたさらなる学びの機会
その後、奥さんがイギリスの大学院に留学することが決まり、岡本さんも同行することに。もともと「外の世界を見てみたい」という思いがあり、伊藤忠を退職する決断をした。ロンドンでは約1年間滞在し、フリーランスとして友人が起業した会社のナスダック上場準備のサポートをしながら、CPA会計学院でUSCPA鋼材の教材作成も行う。
「フリーランスで働きながら、USCPA資格を活かしてロンドン大学の大学院で会計学修士を取得されたそうですね。しかも半年という短い期間で。すごいです!」
「フリーランスの間に会計の知識を身につけておかないと社会復帰が難しくなると思ったので、もともとACCA(英国勅許公認会計士)取得を視野に入れていたんです。理由は明確で、USCPA保有者は、13科目あるACCAの受験科目のなかで8科目が免除になるから。さらに、ACCAを持っているとロンドン大学の修士号のオンラインコースを受講できるんです。その流れを目指して勉強を始めたのですが、途中でロンドン大学の制度が変わり、USCPA保有者でも修士号のオンラインコースを受講できることになり、ACCAを取る必要がなくなってしまった。これは幸運でしたね。結果、週1回のオンライン授業と課題提出で修了できて、比較的お手軽に修士号を取ることができました」
「じゃあ、私も取ろうかな(笑)」
「本当におすすめです。今日、私がいちばん推したい情報です」

イベント参加者とのQ&Aセッション
Q.1 総合商社ではACCAとUSCPAの認知度や評価に違いはありましたか?
「私が伊藤忠に在籍していた頃の話ですが、ACCAの認知度はほぼゼロ%で、そもそも資格所有者が人事評価で加点される文化もなかったと記憶しています。『難関資格を持っているけど動けない人』より『資格を持っていないけどちゃんと動ける人』の方が評価されていたし、つまり資格の勉強で得た専門知識を生かすも殺すも自分次第だと思います」
「資格は自分に興味を持ってもらうための入り口としては機能するはず。仕事のパフォーマンスが同じレベルの2人を比べる場合、資格所有者のほうが業務のアサインメントで目立てる可能性はありますよね」
Q.2 現在フィリピンにインターンで滞在してるのですが、行く前は精神的に不安でした。岡本さんはインドに行く前、メンタルが不安定になることはありましたか?
「通常は駐在の1~2か月前に言われるそうですが、インドは難色を示す人が多かったらしく、私は4か月前から予告されていたんですよ。『心の準備をしておけ』と。だから精神的な準備はできていたのでのですが、さすがに最初は少しホームシックになりました」
Q.3 もし現職を選ばなかった場合、USCPAを生かしてどのようなキャリアの選択肢を考えたと思いますか?
「改めて商社の経理で働くことも考えていましたが、企業の財務・会計領域の課題解決を専門会計系コンサルファームにも興味がありました」
おわりに:現職の役割と今後の展望
岡本氏は日本帰国後、伊藤忠時代の同期が起業した株式会社unlock.lyに入社。CFOとしてグループ全体の連結決算を担当しながら、投資先の弁当屋や卸会社の取締役も務めている。今後の展望として、投資先を増やしていくことや、将来的にはファンド設立なども視野に入れていることが語られました。最後に、USCPA資格について「取って損になることは全くない」「自分の能力を証明する強い武器になり、キャリアの可能性が広がる」と力説してイベントは幕を閉じた。
資格取得は目的ではなく、さらに大きな挑戦を達成するための手段です。資格取得で得た知識やスキルを活かしてキャリアアップに繋げることが重要で、そのためには岡本さんのように継続的な学習や実践が不可欠なのかもしれません。
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