
単式簿記と複式簿記の違い(デメリットとメリット) 登川講師(簿記)
こんにちは、CPAで公認会計士講座の講師をしている登川(@nobocpa)です。
簿記(記録の方法)には単式簿記と複式簿記の2つがあります。今回は、その両者の違いそして、複式簿記が優れている点を解説します!
1.単式簿記の解説
1-1.単式簿記の特徴
単式簿記とは、取引をお金という一面にのみ注目して記録を行う方法です。
一番身近な例で言うと、銀行預金の通帳が該当します。通帳は、預金の増加と減少のみに注目していますよね。
例えば、携帯電話の通信料を預金から10,000円支払った場合には、「預金が10,000円の減少」のみが記録されます。
1-2.単式簿記のデメリット
① 現金の増減理由はわからない
なぜ預金が増えたのか?なぜ預金が減ったのか?という増減の理由については、通帳の「取引内容欄」を見れば個別の入出金の増減理由は判明します。
しかし、1年間通じて結局いくら携帯料金を払ったのか?ということはわかりません。仮にこれを把握しようとするならば別途集計が必要です。
個人の取引のように年間の取引量が少なければ力技で集計ができますが、企業のように取引量が膨大な場合には集計は困難となります。
② 儲けの金額がわからない
増減理由がわからないということは、儲けの金額がわからないことと同じです。同じ入金でも、商品の売上代金の場合には儲けとして扱いますが、借金による入金の場合には儲けではありません。
この違いを区別することは非常に大切ですが、単式簿記では「入金」として一括りにされるためその区別はできません。
③ 現金の動かない取引は記録ができない
「掛けで商品を販売した」「建物を使用することでその価値が下がった」のように現金が動かない取引は記録ができません。
つまり、単式簿記によれば、預金の増減の明細と、その結果の預金残高は把握できても、それ以上のことは把握できないのです。
別の言い方をすれば、貸借対照表と損益計算書が作成出来ないということを意味します。(イメージ出来ない方は、自分の通帳から貸借対照表と損益計算書を作成してみてください。すると、「言葉ではなく心で理解できたッ!」と思えるはずです)
2.複式簿記の解説
2-1.複式簿記の特徴
複式簿記とは、取引を2面的に捉えて記録を行う方法です。先ほどの携帯料金の例でいうと、通信料10,000円の発生と預金10,000円の減少の2つを記録します。このように、預金の増減だけでなく、その増減理由まで記録を行うのが複式簿記の特徴です。
簿記を勉強されている方は、
(借方)通信費10,000円(貸方)預金10,000円
という仕訳をきれると思いますが、これは、預金の減少だけでなく、通信費の発生まで同時に記録しているというところが大きな特徴なのです。
2-2.複式簿記のメリット
複式簿記によると、単式簿記のデメリットが全て解決できます。
すなわち、現金の増減理由は別途集計を力技でする必要はありません。なぜなら、もとから記録しているからです。
また、だからこそ、儲けの金額も計算できます。さらに、現金の動かない取引も記録ができます。なぜなら、複式簿記の場合には、通帳のように預金の記録だけをしようという発想は一切ないからです。
そして、一番大きなメリットが財務諸表の作成です。複式簿記を導入することで、通信費の金額や建物の金額など、預金に限らずすべての金額を記録できるため、貸借対照表と損益計算書が作成できることになるのです!
3.まとめ
財務諸表を作成するためには、複式簿記が不可欠です。
実際の企業では複式簿記が利用されているため、普段簿記を学習する際は複式簿記のみを学習しますので、単式簿記のことは一切知る必要はありません。
しかし、単式簿記のデメリットを理解することで、みなさんの複式簿記の勉強もより理解が深まるでしょう!
【簿記の細道~複式小話】
ボブ「単式簿記の方が単純な仕組みで理解しやすいんで、そっちの方がいいなと感じちゃいました。」
ノボ「ボブ!会計のプロを志す者がそのような気持ちでどうする!複式簿記は複雑な企業の取引を借方と貸方という単純な仕組みに落としこんで記録する方法だ。一回理解すればその単純さに気づくことができるだろう。複式簿記は複雑簿記ではなく、複式簿記こそ単純簿記だ!」
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CPA会計学院
財務会計論講師
登川雄太(Twitter)
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