短答管理で自分の実力を最大限発揮するための準備と実践

皆様,先日の短答式本試験本当にお疲れさまでした。
チューターの梶谷です。
短答式試験における管理会計論(以下,短答管理)はH31Ⅰから大幅に難化し,稼ぐことも可能だった科目から大きく転ばないようにする守りの科目に変わりました。
今回は現環境下において自分の実力が最大限引き出せる,私なりの短答管理の攻略法を皆さんに伝授したいと思います。
このブログはこんな方向けです。
・短答管理について十分に学習ができているはずなのに,一向に点数が取れない方
・短答管理で高得点取れることもあるが,全体的に点数の安定感がない方
まず目標点数を掲げておきます。
理論7/8以上
計算3/8以上
合計56点以上
この点数を安定して取ることを目標に以下論じていきます。では見ていきましょう。
(このブログの最後にR2Ⅰの問題を私が実際に1時間計って解いた様子をできる限り詳細に記録していますので,参考にしてみてください)
1. 本試験における立ち回り
以下を徹底しましょう。細かくは後で補足します。
①理論問題は,計算問題の品定めをしながら最初の20分以内に終わらせる
②理論が終わり次第,①での品定めを目安にしながら,問題に軽く眼を通し,問題の優先順位を決める
③優先順位の高い計算問題から解いていく
④問題文をじっくり読んだ結果,解答プロセスが浮かばないときに何分間粘るかというルールも自分の中で事前に設定しておく(それを超えたら飛ばす)
⑤解答プロセスが浮かんでからはゆっくり丁寧に解く
⑥解答数値を導くまでの各段階について可視化しておく
⑦解くと決めたものについて最終数値が選択肢になかったとき,何分間粘るかというルールを自分の中で事前に設定しておく(それを超えたら飛ばす)
⑧残り15分を切ったあたりで,解かない問題を2,3問確定させる
上記ルールに従い,最低4問に解答できればOKです。
そしてそのうち3問は必ず正解しましょう。
上記ルールについて補足しておきます。
「①問題の品定め」については 最終数値がどこの金額か,どこの論点からの出題か,分量感の目安,指示は典型的か,といった部分について各問20秒程度を目安にさらっと確認してください。少し見ておくだけで,理論を解き終わってからスムーズに計算問題に移行できます。
「②優先順位」では,どれだけ明瞭に解答プロセスがイメージできるかという点を重視して下さい。単に計算量が少なそうとか,自分の得意論点だからという理由で安易に解き始めてしまうのは大変危険です。②での並び替えは実際に問題を解きながらどんどん変更していくので,2,3分程度で③に移行したいです。ただ,解答プロセスについて問題を読んだだけではイメージできないことも往々にしてあると思いますので,その場合には指示が複雑ではなさそう,分量が少なそうなものから問題文を読み,とりあえずボックス図を書いてみる,分析図を書いてみるなど資料整理して手を動かしてみるのがいいと思います。
「④問題を見て何分粘るか」について,私は2分手が止まったら次の問題に移行するようにしています。このあたりはご自身で最適な時間を探って下さい。ここができる,できないが短答管理の安定感に直結してくると確信しています。
「⑤ゆっくり解く」については,意外と思われるかもしれませんがその方が確実に安定します。その理由は2つです。まず気持ちが先行して焦ってしまうことが減ります。そして電卓の入力ミスや加算減算のミスといった細かいミスが減ります。短答管理で最も重要なのは,最終数値を導き出すまでの試行回数を減らすことであり,1試行あたりの時間短縮は必要ありません。
「⑥解答数値の可視化」についても「⑤ゆっくり解く」と関連しています。1回目に出した数値が選択肢になかったとき,もう一度解かなければいけませんが,もしその数値を電卓だけで出していれば,1回目の試行と同じだけの時間がかかってしまいますし,もしかすると計算プロセス自体に間違いがあるかもしれません。軌道修正を図るという意味で,解答プロセスの見える化は非常に重要な要素です。最終数値と選択肢の差額を取って検討すると,この方法によってすぐに間違っている箇所が判明するということがよくあります。
⑦について私は一回目に最終数値を出してから5分以内に選択肢にある数値が導き出せなかった場合は一旦飛ばすことにしています。一旦問題から離れて再度解いてみると,一回目の解答での勘違いに案外サクッと気づけることがあります。反対にずっと1問に固執しても間違った同じ工程を何度も何度も繰り返すことになり,どこがミスっている箇所なのかに気づけないものです。また,そもそも問題選択を誤っており,実は難しい問題だったというパターンもあるので,とにかく1問に固執するのはやめましょう。
「⑧解かない問題を確定させる」については,解けそうな問題に集中するためです。人間は課題を明確にしないと注意力が散漫になる生き物なので, ラスト15分で解答できる問題数はせいぜい2問だ,と認識しておきましょう。そのため,解かないと決めている問題を2択3択に絞るプロセスも残り15分になるまでの段階で終えておきましょう。
会計士試験は結局本試験の時間で全てが決まるので,本試験というのはすごく緊張します。したがって本試験会場で新しいことを試すのはまず無理と思って下さい。そのうえで,本試験での立ち回りを事前に細かくシミュレーションしておくことで問題に対して平常心で向き合うことができます。
2.学習時に意識すべき点
次に普段の学習時において意識すべき点を述べます。
普段の学習においてアウトプットの機会を増やし,上記のルールを実践し,その枠組の中でより自分にあったルールにカスタマイズして下さい。そして本試験までにマイルールを固めましょう。本番の短答管理で実力が出し切れない人の大半は,毎回の答練の点数だけに意識が取られ,上記マイルールが明確に定まっていない,もしくは本試験の場でマイルールの徹底ができていない人たちです。
その意味でも毎回の答練は必ず受け,その振り返りまで必ずセットで行いましょう。また,答練以外でも短答形式の問題を時間を計って解きましょう(私は管理会計計算の短答問題集から論点横断的にランダムな8問をピックアップし,40分で解くという練習を本試験の3ヶ月ほど前から週に1度はやっていました)。
そういった意味でいえば,実際は本試験が始まる前に勝負は殆ど決まっていると言っていいでしょう。入念な下準備があってこそ,本番で実力が発揮できるというものです。
そのため普段の自習の段階では,解ける問題を増やすという視点(いわゆるインプットの視点)以外にも,解ける問題を見分ける能力を身につける(いわゆるアウトプットの視点)という視点も意識して学習しましょう。
現環境下ではどちらの能力も同じくらい大切です。前者は得点可能性を,後者は安定感を決める要素となります。後者を意識できていない人は普段の答練の結果がよくても本試験で失敗してしまうことがあります。
解ける問題を見分ける能力は,単なる問題演習では身につきません。問題を見たときに解答プロセスをイメージするという本試験の感覚を自習段階から強く意識しましょう。
具体的に言えば,自習段階のときから,よく聞かれやすい最終数値(部門別であれば補助部門費配賦後製造部門費,標準原価計算でいえば各種差異など)を把握しておきましょう。
そして最終数値を求めるにあたって,どこのデータがあれば当該数値が求められるのか,という点を強く意識しましょう。
3.(参考)R2Ⅰ本試験における私の立ち回り
最初に言っておきますが,今回の立ち回りは上記ルールを徹底しきれていません。これから短答管理を受ける方は毎度の答練や模試において常に自分の立ち回りを下記のように事後分析し,本試験における立ち回りをブラッシュアップしておいて下さい。またもう一点重要なのは答練や本試験を解いているときは,マイルールに従って全力で問題と対峙して下さい。
つまり問題を解いている際は,問題を効果的,効率的に解くための記録のみにとどめ,事後分析のためのメモはしないで下さい。本試験のときと同じ気持ちで答練や模試を受験するためです。
その代わり答練や模試の時の感覚を忘れないうちに記録するためにも問題を解き終わったらできる限り早く事後分析を行って下さい。
(下記①はデータを取るため必要以上に詳細記録していますのであくまでも②の事後分析③の総括を参考としていただければ結構です)
※ここから先読まれる方は具体的なイメージを持っていただくために実際の本試験問題と照らし合わせながら読み進めることをおすすめします
①解答順序(内解答時間)
~試験開始~
問題1(1分50秒)
解答終了
↓
問題2(15秒)
論点把握,「製/間集計」とメモ,費目なので後回しだなと考える
↓
問題3(45秒)
解答終了
↓
問題4(10秒)
論点把握,部門別なので「解く」とメモ
↓
問題5(2分15秒)
解答終了
↓
問題6(10秒)
論点把握,工程別なので時間がかかると判断
↓
問題7(2分15秒)
解答終了
↓
問題8(10秒)
論点把握,「標準」とメモ,標準なので解きに戻ろうと考える
↓
問題9(1分10秒)
解答終了
↓
問題10(2分20秒)
分量が少なかったのでとりあえず手をつけてみる,解答には至らず飛ばす
↓
問題11(1分30秒)
解答終了
↓
問題12(20秒)
論点的にも分量的にも厳しいと判断し「とばす」とメモ
↓
問題13(1分50秒)
解答終了
↓
問題14(15秒)
柱書を見る限り,単なる差額原価収益分析なので「とけそう」とメモ
↓
問題15(0秒)
見た瞬間飛ばす
↓
問題16(45秒)
解答終了
ここまでで約16分
15秒で一番解答プロセスが明確だった問題4を解こうと判断
↓
問題4(12分50秒)
しっかり問題を読んでみるとあまり解きなれていない簡便法の相互配賦法と判明。一瞬面食らうも解答プロセスは明瞭なので解く。しかし最終数値が選択肢になかったので,どこでミスったか全力で探すと一回目に最終数値を出してから7分くらいしてようやくミスの原因が判明し,解答終了
↓
次に確実に解けそうなのは問題8と判断
↓
問題8(3分40秒)
とりあえず時間のかからなそうな選択肢1の数値を出すと解答と一致。選択肢2以降を出そうと考えるも明らかに時間がかかりそうだったこと,問題4で時間を食った自覚が合ったことから,選択肢1の一致を信じて解答終了
↓
とりあえず糸口は見えかかっていた問題10に着手
↓
問題10(1分40秒)
再度解くもやはり浮かばず。タイムロスは避けたかったため,自己規定より短い時間で飛ばす
↓
問題14(50秒)
「とけそう」というメモを頼りに解いてみる。が,問題文をよく読むとあまり解きなれていない形式であることに気づき,飛ばす
↓
問題15(10分)
設備投資は割と得意だったため,一旦問題を読んでみる。見慣れた形式ではなかったものの,問題文通りに解けば解答できそうだと判断し,解いてみる。1回では数値が合わず,2回めの計算で選択肢と数値が一致し,解答終了
↓
このあたりで残り時間が13分を切っていたので問題6と問題14は解かないことを決意
↓
問題12(1分)
とりあえず問題文と選択肢をみるとキャッシュ・コンバージョン・サイクルで2択まで絞れることに気づく。しかしキャッシュ・コンバージョン・サイクルすら出す時間がもったいないと判断し,日数が半端だった35と憶測をし,解答終了
↓
問題10と問題2のどちらを解くか迷うも推定が必要な問題10から解くのは危険だと判断,問題2に着手
↓
問題2(7分)
問題文を読んでみると,意外と解きやすそうと気づく。最終数値を集計すると,エの肢は一致,しかし他は合わない。ウの肢と最終数値を比較すると資料(5)で引っ掛けようとしている肢とわかり,アかイの2択に絞る,しかしアの肢はあまりに集計額とかけ離れていたことからありえないと判断し,解答終了
↓
問題10(4分)
解いてみると,突然式が思い浮かび,残り時間に焦りながら解答終了
~試験終了~
②事後分析
各設問の正誤(内合計解答時間)
※適当にマークした3問は除いています
問題1 ◯(1分50秒)
問題2 ◯(7分15秒)
問題3 ◯(45秒)
問題4 ◯(13分)
問題5 ◯(2分15秒)
問題7 ◯(2分15秒)
問題8 ◯(3分47秒)
問題9 ◯(1分10秒)
問題10 ◯(8分)
問題11 ◯(1分30秒)
問題13 ◯(1分50秒)
問題15 ✕(10分)
問題16 ◯(45秒)
良かった点
・理論の解答時間が合計で12分台と大幅に時間を稼げたこと
・2回めに問題10を解いたときにすぐ飛ばせたこと
・問題8で勇気を持って次に進めたこと
・終盤の問題2で冷静な判断ができたこと
・問題10を解き切ることより問題2を解くという判断ができたこと
・問題14に早く見切りをつけられたこと
悪かった点→改善方法
⑴問題4で気持ちが先走りしてしまい,必要以上に速く解こうとした結果,不用意なミスをして無駄なタイムロスが生じたこと→計算を解き始める前に一回深呼吸してから意識的にゆっくり解く
⑵問題4で何度も数値が合わなかったのに,解ききるまで飛ばせなかったこと
→一回目に最終数値を出してから5分経ったら一回飛ばして次の問題に移行する
⑶問題4で下書きの補助部門費負担割合を分数で書いてしまい,わかりにくかったこと
→負担割合は小数にできなければ配賦基準数値の合計値と各部門の数値をメモしておくだけでよい
⑷理論の一周目で問題10に時間を掛けすぎたこと
→計算問題は理論が一通り終わるまでは流し見に留める
⑸時間を掛けて数値をあわせたにもかかわらず,加算減算を逆にし,問題15を落としてしまったこと
→解答の選択肢を選ぶ前に有利不利,加算減算は再度確認するというルーティンを組み込む
⑹難易度Bである問題6よりも難易度Cである問題15を優先してしまったこと
→結果論なので問題ない。今回問題6が解けなかった原因は問題4で不用意に時間を掛けすぎたことにある
⑺問題2で棚卸減耗の18,000円が異常だと見抜けなかったこと
→盗難は異常な原因によるものと再認識しておくこと
⑻問題6と問題12を切るという判断が遅すぎ,問題10で必要以上に焦ってしまったこと
→15分前にはあと2問に絞るというルールを徹底すること。問題10で焦ったことは終盤なのでやむを得ない。
③総括
このように,問題を解いて丸付けをしたあとは,試験の立ち回りについて良かった点と悪かった点を洗い出しましょう。ここで重要なのは良かった点についても書き出すことです。試験時間中に自然とできたことでもそれを可視化しておくことによって,次回以降の試験でも同じような立ち回りを再現することができます。
また悪かった点についての分析においても,全てについて改善点を上げる必要はありません。(上記⑹,⑻)
次回以降の改善に繋げられるものについてのみ検討しましょう。
僕は受験生当時,事後分析プロセスで得られた気付きについて各論点レベルの改善点(上で言う⑶や⑺)であれば自分が普段使っている回転教材の方にフィードバックしていました。
反対に論点横断的な改善点(上で言う⑴,⑵,⑷,⑸,⑻や良かった点の中で該当するもの)については自分が普段使っているスケジュール帳にメモし,定期的に見返すようにしていました。
このように毎回の試験が終わるごとに自分のいい点悪い点をはっきりさせ,その改善点を探求していくことで,短答管理への問題意識は薄れていきます。そしてそこでの気づきを定期的に確認することで試験時間中の立ち回りは劇的に改善します。
おわりに
というわけでここまで長々と説明してきましたが,最初からすべてを徹底してほしいとは思っていません。なによりいきなりできるようにはなりません。
しかし訓練していけば皆さんの短答管理の点数は確実に上がっていきます。みなさんがこのブログの内容を少しずつでも取り入れて,短答管理への苦手意識が軽減でき,短答管理に苦しむ皆さんの助けに少しでも貢献できれば幸いです。
また今回はアウトプット時の注意事項に重きを置いてお話をしてきましたが,今後需要があればインプット時の学習ポイントについてもブログを書きたいと思います。
ご意見,ご不明点等あれば梶谷のTwitterまでご連絡下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございました!