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菅沼講師

企業法入門講義 復習ブログ 第2回

2020年目標の企業法入門講義がスタートしております。
この入門講義復習ブログは、入門講義を受講した方を対象に、講義内容の復習ポイントを説明していきたいと思います。

第2回の内容のポイントです。

1.株主総会の招集時期

招集は人に集合するように求める行為です。
飲み会をするにしても、日にち、時間、場所等を決めてみんなに伝えないと開催できないですよね。そのイメージです。

株主総会は招集のタイミングによって、
① 定時株主総会
② 臨時株主総会
の2つに分類することができます。

①の定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集される株主総会です。
年に1回必ず開催される定例会のようなイメージですね。
この定時株主総会では毎期の剰余金の配当に関する事項や次の取締役を誰にするのか等を決定していきます。
日本は3月末決算の会社が多いです。4月1日~3月31日を1事業年度としている会社が多いので、3月末に締めくくって、大体6月の中旬くらいに有名企業の定時株主総会が集中するという感じです。

②の臨時株主総会は、必要がある場合にはいつでも招集することができます。
回数制限等はありませんので、開催したければ思う存分、何回でも招集できます。

臨時株主総会は、事業年度の途中で、何か問題があった場合等、臨時で決定しなければならない場合に招集されます。
最近の例で言うと、日産自動車のゴーン元会長は取締役でしたが、4月上旬に臨時株主総会が開催され、解任、つまり、取締役をやめさせられました。
このように、事業年度の途中で急遽、重要事項を決定しなければならない場合は、臨時株主総会が開かれることになります。

2.議題と議案

株主総会を前提に説明します。

議題は、株主総会の目的である事項です。何を決めるのかという株主総会の決議のテーマです。

例えば、みなさんが夏休みにお友達と旅行に行こうと考えているとします。
日にちは決まっていますが、まだどこに行くかは決まっていないよという場合、みなさんは旅行のパンフレットを持ち寄ったりして、場所を決めていくことになると思います。
その場合の集まりの議題、目的である事項、テーマは、「旅行の場所をどこにするか」ということになります。

株主総会での議題の例としては、「取締役選任の件」です。
この場合の株主総会の決議は、取締役を選ぶことが目的事項、テーマとなります。

次に議案ですが、議案は株主総会の目的である事項についての具体的な案のことです。

先ほどの旅行の話で例えると、議題は旅行の場所をどこにするかということでした。
議案は議題に対する具体的な案のことなので、北海道、沖縄、京都、ハワイといった具体的な場所の提案が議案ということになります。

株主総会の議案の例としては、「Aさんを取締役として選任する件」です。

もう一つ具体例を示しておきますが、株主総会で剰余金の配当を決める場合は、
議題が「剰余金の配当の件」
議案が「1株に対して100円配当する、とか、1株に対して200円配当する」
という感じになります。

3.議決権

株主総会の議決権は、株主総会の決議に加わることができる権利です。

株主の議決権は、株主の意思を会社経営に反映させる手段として非常に重要な権利です。
したがって、会社法では株主の議決権は保障されております。
その保障のための大原則が「1株1議決権の原則」です。
株主は原則として、1株につき1個の議決権を有します。
つまり、10株を持っている株主は10議決権(10票)、100株持っている株主は100議決権(100票)というように、持株数に比例して、議決権の数も増えていくということになります。
資本多数決ともいいます。

これは、株主の負担する経済的リスク、株式数(出資額)に比例した決議への影響力を保障しようというものです。株式を多く持っている株主ほど、多く出資している株主ほど、リスクも大きく抱えているので慎重な判断をするでしょ、という考えに基づくものです。

この1株1議決権の原則は強行法規とされております。
強行法規は、勝手にルールを作っちゃだめだよ!というものです。
つまり、強行法規とされているルールを無視して、勝手にルールを作ることは認められないということです(講義では目玉焼きの調味料の例で説明しました)。

したがって、会社法が特別に定めているものを除いて、議決権自体を制限することはできません。

入門講義第2回で紹介したのは、数ある例外の中から「議決権制限株式」です。
今の段階では、議決権が制限されている株式があるんだな、ということを認識してもらうだけでOKです。

4.議決権の行使

先ほどは議決権という権利自体のお話をしましたが、権利があっても行使できないと意味がありません。
議決権は、株主自身が実際に株主総会に出席して行使するのが原則です。
ただし、議決権は株主にとって重要なものですが、株主が全国各地に散らばっているような場合は特に、株主自身が株主総会の会場に出向いて議決権を行使することが難しい場合があります。
その日は予定がある、忙しい
場所が遠い
そういった株主でも重要な議決権をできる限り行使しやすくするための制度として、

① 議決権の代理行使
② 書面または電磁的方法による議決権の行使(いわゆる、書面投票・電子投票)

を紹介しました。

① 議決権の代理行使
株主は、代理人を立てることでも議決権を行使できます。
その日は行けないので代わりに出席して議決権を行使してもらうようお願いするわけですね。
高齢者や病気をしている方が、親族に代わりに行ってもらうようなケースもあります。

② 書面または電磁的方法による議決権の行使(いわゆる、書面投票・電子投票)
この2つは、最終的な議決権の行使方法が書面(投票用紙を郵送)なのか電磁的方法(インターネットで投票)なのかは違いますが、趣旨は一緒です。
どちらも、イメージは事前投票です。

選挙等でも期日前投票という制度があると思います。
選挙当日に仕事等で選挙に行けない人のために、事前に投票できる制度ですね。

これを、株主総会に置き換えると、当日、株主総会の会場に足を運ぶのが難しい人のために、投票用紙を会社に郵送したり、インターネットで投票しておくことで、事前に議決権を行使しておくことができる制度がこの書面投票制度・電子投票制度です。

代理人による議決権行使と違って、他人にお願いすることなく、自分の意思を直接決議に反映させることができます。

5.株主総会の決議

株主総会は株主にとって重要な事項を決定していきますが、その重要性も議題(目的・テーマ)によって変わってきます。
そこで、会社法は、その重要性や判断を慎重にする必要性等に応じて、普通決議・特別決議・特殊決議という種類を設けております。

① 普通決議⇒② 特別決議⇒③ 特殊決議の順番で株主に与える影響が大きい事項を決定していくことになります。

① 普通決議
普通決議は、株主総会の中でも一番オーソドックスな決議です。
剰余金の配当も原則として、この普通決議で決定していくことになります。具体的にどんな内容を決めるのかは、今後学習が進むにつれてわかってきます。

ポイントを絞りますが、普通決議では定款により定足数の要件を完全に排除することができます。
定款によって定足数が排除されている場合は、その場に集まった株主の議決権の過半数が賛成すれば可決されることになります。

これに対して、役員(社長さん等)の選解任を決定する株主総会の決議は普通決議によりますが、特則として、定足数の要件を完全に排除することはできません。定足数の要件は3分の1未満に引き下げてはいけませんよ、とされております(つまり、定款で要件を緩くしても3分の1以上にはしてねってことです)。

これは、機関としての役員の地位の重要性(社長さんの地位の重要性)から、できるだけ多くの株主の意思を反映させたうえで、決定したいという考えが基にあります。

② 特別決議
特別決議は、合併等の慎重な判断が必要な決議です。
入門講義でイメージをしておいてほしいのは、定款の変更です。
定款の変更、つまり、会社の内部的なルールの変更は株主にとって慎重に判断していかなければならないので、特別決議とされております。

定足数については、普通決議と違って定款によっても完全に排除することはできません。
決議要件も過半数ではなく、3分の2以上とされております。

③ 特殊決議
特殊決議は第2回では扱いませんでした。
また、何を決めるのかが出てきたときに戻ってきます!

6.株主総会の決議の瑕疵

ここは、重要なので、ちょっと長くなります。ごめんなさい。
瑕疵とは、日常用語で使うことはないと思いますが、一般的には「キズ」という意味で使われます。
ただ、法律上は、欠落や欠点がある、何か欠けているものがあるという意味で使われますので慣れましょう。

株主総会の決議に瑕疵がある、と言ったら、株主総会の決議の中に何かしら問題がある、欠けているものがあるという意味です。
今後、様々な瑕疵をやっていきますが、例えば、株式の発行に瑕疵がある、と言った場合は株式の発行の中に何かしら問題がある、欠けているものがあるという意味です。

※ 用語の説明で扱った重要箇所
ここでは講義中、序章を使って、様々な用語を説明しました。
簡単におさらいしましょう。

① 法律行為(契約)
最も重要な法律行為は契約というお話でした。
売買契約をイメージしましょうというお話でしたが、契約はお互いの意思表示の合致が必要になる法律行為です。
契約は「申込み」と「承諾」という意思表示が合致して成立します。一方的な意思だけで契約が締結されてしまうと、押し売りの独壇場になってしまいますからね。

つまり、申込み側からスタートしますが、~を買いませんか?~を売ってくれませんかという申込みをまずしてから、相手方が申込みの内容について承諾(買います、売ります)をすることにより、はじめて契約は成立します。

当たり前のことですが、承諾がない限り契約が成立することはありません。

② 法律関係
法律関係の意義は、わかりやすくいえば、登場人物の権利義務はどうなっているかということです。
法律関係と聞いたら、これを言えるようにしてください。要は、「誰が誰に対してどういう内容の権利を有しているか、誰が誰に対してどういう内容の義務を負うか」ということです。
誰がという意識はみなさん持ちやすいですが、「誰に対して」ということを強く意識してください。
権利を持っていても誰に対して行使できるか、義務を負っていても誰に対して果たす必要があるのかは法律を学ぶうえで非常に重要な視点です。

③ 有効と無効
有効は法律行為の効力が発生していることです。
無効は法律行為の効力がはじめから発生していなかったことをいいます。まさに無の状態。何も発生しいません。

Aさん(売主)とBさん(買主)との間の土地の売買契約が有効か無効かで、法律関係(誰が誰に対してどういう内容の権利を有しているか、誰が誰に対してどういう内容の義務を負うか)は全く違います。

この売買契約が有効ならば、売主であるAさんはBさんに対して「代金を支払え!」と売買代金支払請求権を根拠に請求することができますし、Bさんはそれに対応する義務をAさんに負っているということになります。
これに対して、買主であるBさんはAさんに対して「その土地引き渡せや!」と土地の引渡請求権を根拠に請求することができますし、Aさんはそれに対応する義務をBさんに負っていることになります。

これに対して、この売買契約が無効ならば、法律関係は何も発生しません。お互い何の権利も義務もないということになります。

④ 取消し
要はキャンセルです。ちょっと難しい概念です。
テキストには、「取消しは、ある法律行為に何らかの瑕疵が存在することを理由に、一定の者の意思表示によってその行為の時点にまでさかのぼって当該行為を無効とすること」、「取消しがなされるまで、法律行為は一応有効なものとして扱われる」とあります。

まず、大事なポイントは、取消しができる場合においては、法律行為に何らかの瑕疵がある場合でも法律行為は一応有効なものとして扱われます。問題があっても即無効とされるわけではないというわけです。

その時に、取消し権を有するもの(もはや、「取消し」という魔法を使うことができる魔法使いのようなイメージでいいです)が取消しを唱えることによって、その法律行為を行為時点まで遡って無効となるのが取消しです。

このように、取消しができる行為であっても必ずしもその行為が無効になるわけではありません。
取消しを主張できる者が取消しを主張することによって、はじめて、その行為が行為時点まで遡って無効になる、取消しの主張がなされなかったら、ずっと有効のままというのがこの取消しのイメージです。

⑤ 原告と被告
原告は訴えを提起した側(訴えた側)です。訴えの原点となる者と捉えてください・
被告は訴えられた側です。この2つはしっかりと区別できるようにしましょう。

それでは、株主総会の決議の瑕疵に一旦戻ります。

(1)株主総会の決議の瑕疵の総説
① 瑕疵がある行為は無効となるはず
株主総会の決議に瑕疵がある場合(決議の手続や内容に瑕疵がある場合)は、民法の一般原則によれば(「本来ならば」くらいに思ってください)、その決議は無効になるはずです。
これは大原則ですが、法律で求められているものが欠けている場合は、その行為は無効と考えます。
法律で求められているものが欠けている場合であっても、その行為が有効になってしまうのであれば、誰も法律を守ろうとはしなくなってしまうためです。

※ 民法の一般原則
民法の一般原則によれば、無効は、いつでも、誰でも、どのような方法でも主張することができるとされております。
また、相対効の原則によって、判決の効力は訴訟当事者間(訴えの原告と被告)にしか及びません。

② 民法の一般原則に委ねるのは妥当ではない
瑕疵があるとはいっても、株主総会の決議が成立したという前提でその後が動いていった場合は、決議は有効という前提で会社と取引先等の利害関係者との間に多数の法律関係ができあがってきます。

例えば、ワタクシ菅沼が株式会社アキラくんを設立して、その後、株主総会で菅沼を取締役に選任したとしましょう。
そして、その決議に何か問題があった、瑕疵があったよという場合をイメージしてください。
ただ、決議に瑕疵があっても、一旦、菅沼を取締役にしようと決めたならば、ハリキリ菅沼は株式会社アキラくんの取締役という前提で様々な取引をしてしまうこともあると思います。
株式会社アキラくんの名前で、商品を売ったり、買ったり、お金を借りたりするわけです。
これによって、様々な法律関係が取引先等と株式会社アキラくんとの間にできあがってきます。

つまり、選任する決議に瑕疵があるとはいえ、決議がされた場合は、その決議が有効、つまり、菅沼が株式会社アキラくんの取締役であるという前提で、様々な法律関係ができあがってしまいます。

こんな状態で、
「株式会社アキラくんの取締役選任決議には瑕疵があったので、菅沼はアキラくんの取締役ではありません」
「菅沼が取締役という前提で契約したものも、すべて無効です」
こういう主張を民法の一般原則により、いつでも、誰でも、どのような方法でも無制限に認めてしまうと、もう大混乱、収拾がつかなくなってしまうんですね。
なので、会社法はどういうルールにしたかというと、瑕疵があっても、ちょっとした瑕疵くらいだったら、当然には無効にはしないこととしました。

(2)法的安定性の確保・法律関係の画一的確定
そこで、会社法は、法的安定性の確保と法律関係の画一的確定の要請に応えるために、瑕疵の内容(どんな瑕疵か、どこに欠けている部分があるのか)と瑕疵の程度(相対的に軽い瑕疵もあれば重い瑕疵もあります)に応じて、特別の制度を設けております。
入門講義では、決議取消しの訴えだけを扱います。

法的安定性の確保・法律関係の画一的確定という用語は今後もすごくよく出てきます。

① 法的安定性
法的安定性は、法律関係が変動せずに安定している状態のことです。
つまり、有効ならば有効のまま安定している状態
有効という法律関係が変動しないで安定している状態をイメージしてください。

一旦有効にしたものを無効にすると、それが有効だという前提で作られた法律関係も芋づる式に無効になって大混乱してしまうので、混乱しないように安定した状態を目指してほしいという要請が法的安定性の確保の要請です。

② 法律関係の画一的確定
法律関係の画一的確定は、判決の効力を当事者だけでなくすべての人に画一的に及ぼすことをいいます。
相対効の原則を貫くと、「決議は無効だから菅沼はアキラくんの取締役じゃない!」という訴えの判決は原告(訴えた側)と被告(訴えられた側)にしか及ばないことになります。
つまり、判決が確定して、菅沼は取締役じゃないということが確定しても、それは原告と被告の間だけです。
したがって、訴えた人にとっては、菅沼は取締役じゃないですが、その他の人にとっては、菅沼は取締役ということになってしまい、これもまた大混乱が発生します。
こんな利害関係者が多くなる会社で、こんな事態は回避したいですよね。
そこで、原則を修正して、判決の効力は世の中のすべての人に及ぶことが求められます。この要請を法律関係の画一的確定といいます。

(3)決議取消しの訴え
① 訴えの性質とその処理
決議取消事由(決議取消しの訴えが提起される原因となる瑕疵)が存在する株主総会の決議は、法定安定性を確保するために有効とされますが、決議取消判決が決まるとその決議は取消しされることになり、決議は決議時点まで遡って無効となります。
つまり、会社法は決議取消事由が存在する場合であっても決議を当然には無効にはしません。
訴えを提起できる者(提訴権者)が訴えを提起できる期間内(提訴期間内)に訴えを提起して、その認容判決が確定した場合に初めて決議は無効となるものとしております(民法の一般原則とちがって、いつでも、誰でも、どのような方法でも無効を主張できるわけではないです!)。
このように、決議取消しの訴えは形成訴訟(※)とされております。

※ 形成訴訟は、原告が一定の法律上の原因(ここでは、株主総会の決議に瑕疵があること)を主張して、既存の法律関係の変動を求める訴えです。
既存の法律関係が有効であれば、その変動、つまり有効なものを無効にしてくださいと求める訴えが形成訴訟です。

② 取消主張の可及的制限
決議の取消しの主張を無制限に認めてしまうと法的安定性を害してしまうので、会社法は無効を主張できる人(主張権者)、主張できる期間(主張期間)、主張する方法(主張方法)を制限することで、決議の取消しの主張をできる限り(可及的に)制限しております。

③ 決議取消判決の効力
法律関係の画一的確定の要請から、決議取消判決は第三者に対しても効力を有する、対世的効力があるとされております(対世効)。
つまり、「決議は取消し」という判決が確定したときは、世の中のすべての人にとって、その決議は無効ということになります。

そして、決議取消判決により決議が取り消された場合は、その決議は遡及的に無効となります(遡及効)。

判決の効力は、どこから効力が及ぶかという点で、遡及効と将来効に分類されます。

将来効の趣旨は、法的安定性を確保することにあります。
つまり、行為時点から判決確定時までに作られた法律関係には影響を与えない分、混乱が生じないように配慮がなされております。

ここで、法的安定性の確保をするべく、決議取消判決の効力は将来効かと思いきや、遡及効です。この理由は入門講義の段階ではわからないので気にしないで大丈夫です。

現段階では、決議取消判決は遡及効、ということを覚えておくだけでOKです。

7.役員(取締役・会計参与・監査役)・会計監査人の選任・解任8.取締役
会計参与は次回(第3回)で扱います。
会計監査人は公認会計士のことです。これも次回扱います。

(1)会社と役員・会計監査人との関係
株式会社と役員・会計監査人との関係は、委任に関する規定に従います。
委任に関する規定は民法の規定なので、試験範囲外ということで踏み込む必要はないです。

会社と取締役の関係で言うと、会社が取締役に会社の経営をお願いする委任者で、取締役が経営をお願いされている受任者という関係ですね。

(2)取締役の資格(定款による資格制限)

判決の効力は、どこから効力が及ぶかという点で、遡及効と将来効に分類されます。

「株主でないと取締役になることができない」
このルールを定款で定めることができるか否かですが、公開会社か非公開会社かで変わってきます。

公開会社はできません。
公開会社は株式の譲渡が自由、つまり、株主が交代することに会社の承認がいらないわけなので、会社からすると、誰が株主になってもいいと思っているということです。
そんな能力を問わない、誰でも株主になっていいというスタンスの会社において、株主からしか経営者である取締役を選ぶことはできないのはちょっと問題だよということですね。
公開会社では、しっかりと経営能力がある人を幅広く選べる体制にするべきだということです。

これに対して、非公開会社では定めることができます。
非公開会社の発行する株式はすべて譲渡制限株式ですので、株式の譲渡、つまり、株主が交代するためには会社の承認が必要となります。
つまり、非公開会社にとっては誰が株主でもいいわけではなく、株主になる人を会社が選べるということです。
そのような非公開会社の実態から、定款で定めるのであれば、取締役の資格を株主に限定することを認めております。

(3)取締役の人数
取締役の人数に関するルールは、取締役会を置いているかどうかで変わります。

取締役会を置いていない場合は、特にルールはないです。1人でも2人以上の複数人でも、とりあえず1人以上選ばれていれば問題ないです。

これに対して、取締役会設置会社では、取締役は3人以上とされております。

今後、監査役会や指名委員会といった、いろんな会議体を見ていくことになります。
そういった株主総会を除く機関として会議体の最低人数は、どれも3人以上とされております。

(4)役員の選任
役員は、株主総会の普通決議で選任しますが、これはおさらいです。
特則があって定足数については、定款によって3分の1未満に引き下げることは認められませんでした。
その会社の経営者を選ぶ以上、それなりの議決権を持っている人が出席している状態で決議をしてほしいということです。

(5)役員の辞任
役員はいつでも辞任できます。辞任は役員側からの関係を解除することです。
役員側がやーめたということで、いつでもその会社との委任関係を解除することができます。

(6)役員の解任
解任は、辞任とは逆で、会社側から関係を解除することです。クビということですね。

役員はいつでも株主総会の決議により解任できます。
ポイントは、「いつでも」ということです。
解任される理由の有無にかかわらず、株主総会の決議があれば、役員は解任されます。

8.取締役

(1)業務の執行と代表
業務の執行に関する意思決定を「業務執行の決定」、その執行を「業務の執行」といいます。

みなさんがコンビニでお茶を買おうという場合に、この意思決定と実際の行為を分ける意識はないと思います。
なんとなく、コンビニに行って、綾鷹にしようかな、生茶にしようかなって好きなお茶を選んで、なんとなく買っていると思いますが、この一連の行為を細かく分けると、意思決定と執行に分かれているんですね。

どこのコンビニに行ってどのお茶を買うか、という意識決定をする部分と
実際にコンビニに行ってレジまで持っていって買うという執行部分に細かく分けることができます。

これは、会社でも一緒です。
業務を執行していくためには、
どこの会社とどんな取引をするか、という意思決定をしたうえで、
実際にその会社と契約を締結して執行していく必要があります。

これは、テキストP.③-133に掲載されている表です。
この青いマーカー部分を入門講義ではおさえましょう。
監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社は特殊な会社ですので、次回扱います。

(2)代表権
代表権は難しいですが、がんばりましょう。

代表権は「対外的な関係」で重要になる権利です。
会社とその取引先等の外部者との関係(会社が得意先との間で商品を売ったり買ったり、会社が銀行からお金を借りたりする際)において重要になります。

法人の代表権のある機関の行為は、当該法人自体の行為とみなされます。
「代表権のある機関の行為=法人の行為」のようなイメージです。

会社は法人なので、会社の名前で取引ができます。会社の名前で銀行から借金をすることもできるわけです。

例えば、株式会社アキラくんの取締役であるワタクシ菅沼が、業務執行の一環で銀行からお金を借りる場合を考えましょう。

このときに、菅沼に代表権があれば、つまり代表取締役であれば、菅沼の行為は株式会社アキラくんの行為になるので、株式会社アキラくんが銀行からお金を借りたことになります。
お金を借りたことになれば、会社は借金という義務を負うことになります。

これに対して、菅沼に代表権がない、平取締役である場合は、菅沼の行為は株式会社アキラくんの行為にならないので、株式会社アキラくんは銀行からお金を借りたことにはなりません。

行為の結果として生じる権利義務を会社の権利義務とするためには、ある機関が行った行為が会社の行為にならなければならないというわけですが、そのための権利が代表権ということです。
代表権を持っている機関が行った行為が会社の行為とみなされて、その行為から発生する権利義務が会社の権利義務になってくるというわけですね。

9.取締役会の職務

取締役会は、
① 取締役会設置会社の業務執行の決定
② 取締役の職務の執行の監督
③ 代表取締役の選定および解職
を行います。

① 取締役会設置会社の業務執行の決定
取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定を行います。
取締役会は、一定の業務執行の決定を代表取締役等に委任することができますが、流石に、「これは取締役会の決議で決めてね!と会社法が規定している事項」や「定款で(会社の内部ルールで)これは取締役会の決議で決めよう!と定めた事項」は、決定を取締役に委任することが禁止されております。
こういう事項は会社法が重要と考えているものや、その会社にとって重要だから取締役会の決議が要求されているわけです。
したがって、しっかりと取締役会で話し合って、慎重に決めてねということですね。

ここで、具体的に取締役会の専決事項(取締役会の決議で決めなければならない事項)とされているものとして、
(ⅰ)重要な財産の処分および譲受け
(ⅱ)多額の借財(借入れ)
を紹介しました。
この2つは、入門講義の段階から、取締役会で決定する必要がある事項、取締役に委任することができない事項とおさえてください。

② 取締役の職務執行の監督
取締役会は、代表取締役等の業務執行等を監督します。
代表取締役が取締役会の意思決定に従って、ちゃんと業務を執行しているかを監督するということですね。

③ 代表取締役の選定・解職
取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならず、代表取締役を解職する権限もあります。
この解職権限は、取締役会の大事な監督権限のひとつです。
取締役会の決定に従わない代表取締役を解職して代表権を奪うことによって、代表取締役を監督することもできるということです。

10.取締役会における議決権

株主総会における株主の議決権と比較しながら、おさえましょう。

(1)取締役会における議決権(頭数多数決)
取締役は、取締役会においては、1人につき1個の議決権を有します。
全員、株主総会で議決権の過半数の賛成を得て、選任された者なので、平等に扱うべきということです。
自分が投票して当選した国会議員がいたとして、その人だけなぜか議決権が少なかったら不満ですよね。

(2)議決権の行使方法
取締役は、株主総会における株主と違って、代理人による議決権の行使や書面投票・電子投票が認められません。
取締役は、株主がこの人に経営をしてもらいたいということで、その人の能力を見込んで選ばれた人です。
そんな取締役が経営を放棄して、勝手に代理人を立てたり、集まって話し合わずに経営事項を決めてしまうのは、株主の意思に反するということです。

11.取締役の義務

(1)善管注意義務
会社と取締役の関係は委任に関する規定に従います。
会社が取締役に会社の経営をお願いする委任者で、取締役が経営をお願いされている受任者という関係です。

したがって、取締役は民法の規定により、会社に対して、善管忠義義務を負います。
一般的、常識的に考えられている程度の話ですが、取締役であるならば、この程度の注意はしたうえで職務をするでしょうという水準があるはずです。
取締役はその程度の注意はしたうえで、職務をする義務があるということです。

(2)忠実義務
ざっくり言うと、取締役と会社の利益が衝突(バッティング)する場合は、会社の利益を優先しなければならないという義務です。
経営者が会社のためではなく私利私欲のための経営に走ってしまうと、株主の信頼のもと会社の経営を任されているという任務に背くことになるので、取締役には忠実義務があります。

(3)株式会社と取締役の利益衝突についての特別の定め
取締役は会社に対して善管注意義務や忠実義務を負っておりますが、この義務は非常に抽象的な義務です。
場合によっては義務としてちょっと弱い、抽象的すぎるという場合もあります。
そこで、会社法は、経験則的に取締役が自分の利益を追求しがちな場面について、特別の規定を置いております。
第2回では、競業避止義務を紹介しました。

競業避止義務はこのような経緯で設けられている規定なので、趣旨は会社の利益の保護です。
取締役が自分の利益を追求しがち、会社の利益を損なうおそれが高い場合を規制するものなので、当然、規制の趣旨は会社の利益の保護になります。

(4)競業避止義務
競業避止義務は競業取引という取引に関する規制です。
まずはこの競業取引が何なのかをしっかり捉えていく必要があります。

衣料品販売業を営んでいる甲社の取締役であるAさんが、個人的に衣料品販売した方が自分の懐に入るお金が大きいという理由で、個人で衣料品を販売する。
これが典型的な競業取引です。
つまり、会社の社長が同業種を勝手に立ち上げてしまうようなイメージです。
会社の取締役がいきなりライバル企業になる競合他社になるから競業というイメージです。

競業取引をする場合は、取締役は事前に株主総会の普通決議(取締役会設置会社では取締役会の決議)により承認を受けなければなりません。

この競業避止義務の趣旨は、先ほど紹介した通り、会社の利益保護です。
会社の取締役は、その業界について経営のノウハウも知っているでしょうし、得意先の情報や人脈もあると思われます。
そんな、知識、経験、地位にある人が、勝手にその会社の競合他社を始めてしまうのであれば、得意先を奪われたりして大変な目に合ってしまうということです。

例えばですが、国見さんがCPAとは関係ないところで個人で会計士講座を展開する「クニミ塾」を作ったような場合を考えてください。
そして、CPAの生徒をクニミ塾がどんどん奪ってしまったとします。
これでは、CPAは大損害です。
国見さんは、会計士講座について熟知していて、会計士講座を展開するノウハウも持っています。
そんな国見さんが自由に競業できてしまえばCPAはたまったもんじゃありませんので、競業避止義務があるということです。

競業避止義務は事前の承認だけではないです。
取締役会設置会社では、事後的な取締役会への報告義務もあります。
取締役会は先ほど説明したとおり監督機関でもあるので、監督しやすいように、事後的な報告を求めているということです。


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