
売上割引を理解する!商品販売と代金の決済を区別しよう!

売上割引は売上の取り消しをせずに、費用に計上します。
その理由は「利息の性質だから」と説明されることが多いです。
これがいまいちわかりづらいので、今回はちょっと違う視点で説明をしようと思います。
ここで、
①貸倒
②手形の割引
③売上割引
の共通点はなんでしょう?
それはずばり、
売上の取り消しにはしない!
です。
この3つの会計処理の本質がわかれば、おのずと売上割引も見えてきます。
取引と仕訳の確認
<具体例>
当期に商品を100で販売し、以下の仕訳を行った。
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
売上債権 | 100 | 売上 | 100 |
これは普通の取引です。
ここから会社は代金を回収するわけですが、以下のように、取引の顛末を3つのケースにわけてみます。
上記代金の内10が貸し倒れ、90だけ回収した。
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
現金預金 | 90 | 売上債権 | 100 |
貸倒損失 | 10 |
満期日よりも前に銀行に割引し、割引額10を差し引いた90を受け取った。
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
現金預金 | 90 | 売上債権 | 100 |
手形売却損 | 10 |
支払期日よりも前に代金が決済されたため、売上割引10を差し引いた90を受け取った。
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
現金預金 | 90 | 売上債権 | 100 |
売上割引 | 10 |
これらの各ケースはその理由は違えど「100販売したけど、回収できたのは90だけ」という点では共通しています。
その結果、各ケースとも10の費用(貸倒損失、手形売却損、売上割引)が生じています。
こういう考え方もありでは?
ボブ
「どのケースにおいても、100売ったけど、回収金額が10減って90になってる。だとしたら実質90で売ったことになるんだから売上の取り消しをするべき。」
「つまりこう!」
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
現金預金 | 90 | 売上債権 | 100 |
売上 | 10 |
「どやァ」
ノボ
「なるほどね」
会計では、商品の販売と代金の決済を別の取引と考える!
勉強するとわかるとおり、ボブの主張するような仕訳はしません。
なぜなら、商品売買は大きく、「商品の販売」と「代金の決済」の2つにわけられますが、会計ではこの2つの取引を区別して考えるからです。
上記の貸倒や割引はぜんぶ代金の決済の取引です。
そのため、
販売:100で販売した
決済:90しか回収できなかった(10損した)
と、捉える結果、
90しか回収できなかったとしても、100販売したという事実は変わらないということになるのです!
よって、売上の取り消しはせずに、別途費用を計上します。
返品・値引きは「商品の販売」の範疇
対して、返品や値引きはどうでしょう。
返品は販売の取り消し、値引きは販売代金の値下げです。
つまり、これらは代金決済ではなく、「販売」の範疇の話となります。
そのため、返品・値引きは別途費用は計上せずに売上の取り消しとして扱うのです。
どうでしょうか。
売上割引についてすっきりしてもらえれば幸いです。
販売と決済を区別するという考え方は、売上割引は以外でもでてきます。
有名どこでいうならば、外貨建取引の二取引基準という論点があります。
大切な考え方なので、ぜひともしっかりおさえましょう!
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
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