斉藤講師

「監査論 12月短答式試験後の学習法(2016)」齊藤講師(監査)ブログ 

 

 

こんにちは。

監査論の主任講師の齊藤です。@cpasaito

ブログの更新が久しぶりになってしまい,申し訳ありません。

 

12月の短答式試験後,5月短答式試験や8月論文式試験に向け,これから監査論をどのように勉強していくべきか,という相談が多くなっております。

そのため,今回は,監査論の勉強方法について述べたいと思います。監査論の勉強方法で悩んでいる方は,かなり長いですが,是非参考にしてもらえればと思います。

 

1.監査論の特徴と位置付け

まず,監査論は,時間をかければかけるほど,比例的に成績が伸びるという科目ではありません。つまり,間違った学習方法をしていると,いくら学習時間を費やしても成績が伸びにくいという特徴があります。そのため,監査論は,他の科目以上に正しい学習方法を行うことが非常に重要な科目になります。

また,正しい学習方法を行うことにより,監査論の考え方を一旦身につけてしまえば,あまり時間をかけずに安定して「合格点+α」の点数が取れる科目になります。

そのため,監査論は,高得点を狙うというよりは,あまり時間をかけずに「合格点+α(短答の場合は合格点+2問,論文の場合は偏差点55%)」の点数を目指すのが,公認会計士試験の合格という視点においては最も効率がよい科目という特徴があります。

 

2.論文対策において目指すべき状態

まず,監査論の論文対策については,テキストに記載のある論点や規定(論文の重要性A及びBの論点や規定に限る)について,結論のみならず,理由も自分の言葉で説明できるという状態にすることが目標になります。

つまり,一つひとつの論点や規定について,以下の状態にすることが目標になります。

■結論を覚える(参考法令基準集に掲げられている規定については,知っている/調べられるという状態でよい)

→ なぜ,その結論になるかについて理由が説明できる(←論文対策では,ここが大事。ここまでできれば,「合格点」が取れる)

監査の基礎的概念(例えば,監査の目的,監査人の責任など監査総論や監査主体論の論点,効果的かつ効率的な監査の実施)から説明できる(←論文対策では,ここまでできれば,「合格点+α」の点数が取れる)

 

3.短答対策において目指すべき状態

次に,監査論の短答対策については,テキストに記載のある論点や規定について,結論を暗記することが目標になります。これは,短答式試験では結論がひっかけられることが多いからです。しかし,すべての論点や規定を単純暗記することは難しいですし,単純暗記してもすぐに忘れてしまうので,その論点や規定について,なぜ,その結論になるのかについて,理由を説明できる状態にすることが望まれます。つまり,監査論の短答対策においては,「結論を暗記するための理解」,「結論を忘れづらくするための理解」をすることが望まれます

 

4.論文対策と短答対策の共通点と相違点

このように,論文対策においては理由を説明できることがより重要になりますが,短答対策においては結論を覚えることがより重要になるという違いがあります。

しかし,論文対策であっても短答対策であっても,「結論を覚える」,「なぜ,その結論になるかについて理由が説明できる」ことが大事になることは変わりません。つまり,自習する際のウェイト付けが少し変わりますが,インプットの段階では大きな差はありません

 

5.結論や理由を押さえるうえでのポイント

では,どのように学習すると,結論を覚えやすくなるのでしょうか??また,理由を説明できるようになるのでしょうか??

 

それは,各規定や結論を具体的にイメージすることが最も大事になります。つまり,会計学の知識と関連させながら,どのような財務諸表項目(確認の論点の場合は売掛金など,会計上の見積りの論点の場合は退職給付引当金など)の数値を検証したいのか?自分が監査人だったら,どのようなことに気を付けながら,どのようなことを実施するか?を具体的に考えながら,講義を受講したり,テキストを読むことがポイントになります。その結果,自分のイメージと各規定や結論が一致した場合には,忘れづらくなりますし,仮に忘れたとしても試験時間内で考え,正解に辿り着けることができるようになります。その一方で,自分のイメージと各規定や結論が一致しない場合には,講師に質問することをオススメします。なぜなら,監査論の大事な視点が抜けている可能性がありますので。

 

また,各規定が,監査のどの段階の話なのかをイメージすることも大事になります。つまり,当初の監査計画の策定段階,監査の実施段階,監査証拠の評価段階,監査意見表明段階のうち,どの段階の話なのかを具体的に考えながら,講義を受講したり,テキストを読むことがポイントになります。監査の流れをイメージしながら,この段階で理解し,この段階で検証しないと,財務諸表の数値が正しいとは言えないよな!と考えながら,講義を受講したり,テキストを読むと,結論や理由を理解しやすくなります。

 

このような前提のうえで,論文対策と短答対策の具体的な学習方法をアドバイスしていきたいと思います。

 

6.論文対策について

監査論の論文式試験においては,① 事例問題,② 典型的な論点だが,より深い理解が問われる問題が出題される傾向にあります。

そのため,① 事例問題,② 典型的な論点だが,より深い理解が問われる問題に分けて,対策を書いていきたいと思います。

 

(1) 事例問題

まず,事例問題の対策について,書いていきます。事例問題の対策としては,問題の読み取りが何よりも重要になります。また,事例問題については,出題範囲に偏りがあります(事例を踏まえてどのような意見を表明するか,ある特定の意見を表明する場合に追加となる要件は何か,事例からリスクを識別したうえで当該リスクに対応する実証手続は何かなど)ので,答練や模試だけで出題可能性の高い事例問題についてはカバーすることができます。そのため,答練をベースに対策していただければよいと思います。

なお,過去6年間の出題範囲と想定配点をまとめておきましたので,参考にしてください。

 

(2) 典型的な論点だが,より深い理解が問われる問題

次に,典型的な論点だが,より深い理解が問われる問題の対策について,書いていきます。このような問題は,以下のようなプロセスを踏んで,記述する必要があります。

 

問題を見たときに,記述する可能性のある論点(結論・理由・監査の基礎的概念との関連)を頭の中で網羅的に列挙する

その後,答案用紙の行数を把握する

問題の趣旨に最も適合する文章を選び出す

最後に記述する

 

ここで,このプロセスの中で最も重要になるのは,①の「記述する可能性のある論点(結論・理由・監査の基礎的概念との関連)を頭の中で網羅的に列挙する」ことになります。つまり,記述しなければならない論点が3つあるにも関わらず,1つしか思い浮かばなかった場合には,その1つの論点を闇雲に長い文章にして記述しなければなりません。また,そのときの点数は,満点の1/3の点数が上限になってしまいます。このような状態では,合格点を取ることは難しくなってしまいます。

 

では,どのように学習すれば,記述する可能性のある論点(結論・理由・監査の基礎的概念との関連)を頭の中で網羅的に列挙することができるのでしょうか??

それは,先ほども述べさせていただきましたが,各論点をイメージして,監査の基礎的概念と関連付けておくことが大事になります。具体的には,監査総論で学習する論点(監査の目的や監査人の責任など)や監査主体論で学習する論点(独立性,能力,正当な注意義務,監査の品質管理など)と関連付けておくことが大事になります。また,監査実施論の場合には,効果的かつ効率的な監査の実施やリスク・アプローチの考え方と関連付け,監査報告論の場合には,監査人の責任の明確化と利害関係者の理解の促進と関連付けておくことが大事になります。さらに,その他の論点については,各論点の基本的な考え方が記載されている,テキストの最初の数ページの内容と関連付けておくことが大事になります。

このように,各論点を押さえることによって,記述する可能性のある論点が芋づる式で頭に思い浮かぶようになります。

 

次に,③の「問題の趣旨に最も適合する文章を選び出す」ことも重要になります。つまり,頭に思い浮かんだ論点の行数が12行,実際の答案用紙の行数が6行の場合には,問題の趣旨に最も適合する文章を選び出す作業が必要になります。

 

では,どのようなことに注意しながら自習すれば,問題の趣旨に最も適合する文章を選び出すことができるようになるのでしょうか??頭に思い浮かんだ12行の文章をポイントを外さずに6行に圧縮できるようになるのでしょうか??

それは,テキストの各論点を要約できるようにすること,つまり,結論,理由を重要なキーワードを使って,簡潔に説明できることが大事になります。なぜなら,テキストに掲載されている論点の全文を書き写す問題は出題される可能性が低く,むしろ,複数の論点の要約を繋ぎ合わせて記述する問題が出題される可能性が高いからです。

 

また,一問一答形式の問題の解答を暗記するのもリスクがあります。なぜなら,人間は,暗記した文章があると,問題の趣旨に適合していなくても,理由をこじつけて,その暗記した文章を書きたくなってしまうからです。つまり,一所懸命暗記したことが,論点外しの原因になってしまうおそれがあります。CPAでも,6年前までは一問一答形式の論文対策集を作成し配布していましたが,解答を暗記した結果,論文式試験で論点外しをしてしまう受講生が多かったため,現在ではテキストベースで自習するように薦めています。

 

つまり,ある特定の文章を書きたいといった偏った判断をせずに,真っ白な心の状態で,「問題の趣旨に最も適合する文章を選び出す」ことが,合格点を取るために必要になります。

 

そして,最後に,④の「記述する」という段階の話をしていきます。この段階において,時間があれば,より正確な文章(より高得点)にするために,参考法令基準集を使って,関連する規定を調べるという選択肢もあると思います。この場合,自分がその問に使える時間や取りたい点数,参考法令基準集に書いてある場所がある程度分かっているかなどを勘案して,参考法令基準集を使うか否かを判断するようにしてください。

ちなみに,監査論の上位者の中には,参考法令基準集を一切使わずに記述している人もいますので,必ずしも,実務指針の文言を使って記述する必要はないと考えられます。

また,「監査基準」の文言を使うと文章が引き締まるという意味で,また「監査基準の改訂前文」については出題可能性が高いという意味で,「監査基準」や「監査基準の改訂前文」については,ある程度記述できるようにしておいた方がよいと思います。

 

なお,過去6年間の出題範囲と想定配点をまとめておきましたので,参考にしてください。

 

(3) 使用する講義・教材

論文対策としては,上記で説明した記述するに当たっての重要な視点を意識したうえで,圧縮講義を受講し,講義を再現できるように,必要な事項をテキストに書き込んでおくことが重要になります。そして,その後は,テキストの読み込みを反復することが重要になります。

また,上級答練・直前答練論文式模擬試験を通じて一般的な記述の仕方,記述するうえでの思考プロセス(論理構成),事例問題における事例の読み取り方などを習得していくことが重要になります。そして,答練の解説では,上記で説明した記述するに当たっての重要な視点が,具体的にどのように活きるのかを説明していきますので,答練の解説を受講することにより,自分の学習方法が正しいか否かを把握し,今後の学習方法を微修正していくことが重要になります。

なお,監査論について,CPAで学習することを検討されている方は,圧縮講義,上級答練,直前答練をセットにした「論文対策フルパック 監査論」がオススメになります。

 

7.短答対策について

続いて,監査論の短答対策について,説明していきます。短答対策については,「3.短答対策において目指すべき状態」で説明したように,テキストに記載のある論点や規定について,結論を暗記する必要があります。しかし,すべての論点や規定を単純暗記することは難しいですし,単純暗記してもすぐに忘れてしまうので,その論点や規定について,なぜ,その結論になるのかについて,理由を説明できる状態にすることが望まれます。

また,結論を覚えやすくするため,理由を説明できるようにするためには,「5.結論や理由を押さえるうえでのポイント」で説明したように,① 各規定や結論を具体的にイメージすること,② 各規定が,監査のどの段階の話なのかをイメージすることが大事になります。

このように学習することにより,5月短答式試験の合格だけでなく,8月論文式試験の合格も近づくことになります。

 

(1) 難易度の把握

まず,監査論の短答式試験の難易度(合格点と平均点),つまり,短答式試験において何問正答する必要があるかについて説明していきたいと思います。下記では,過去8回分の出題形式,監査論の平均点(公認会計士・監査審査会が公表),監査論の合格点(CPAが公表),参考として全体の合格ボーダー(公認会計士・監査審査会が公表)を挙げさせていただきます。

 

このように,監査論の平均点は非常に低く,90点を超えるような高得点を取ることが難しい科目です。そのため,合格点としては65点~70点程度になる科目であるということを認識しておく必要があります。

 

(2) 重要性の判断

次に,短答式試験における論点ごとの重要性(出題頻度の高い論点)を把握することが重要になります。下記では,過去の短答式試験における出題頻度を参考に,絶対に対策しておかなければならない13論点を挙げさせていただきます。なお,当該分析は,過去9回分の短答式試験を対象に,問題全体が特定の論点から出題されている場合には1問,他の論点との組み合わせで出題されている場合には0.5問としてカウントしています。

 

 

また,最近,財務諸表監査の歴史の問題が出題されています。ただ,監査の歴史について網羅的に学習することは難しいので,最低限,平成14年以降の監査基準の改訂について,どのような内容の改訂が行われたのかについては,覚えるようにしてください。

 

なお,2016年12月の短答式試験でも,上記13論点から70点分出題されています。

 

そのため,まずは,上記論点を重点的に学習してください。しかし,他の論点であっても,基本的な問題が出題された場合には他の受験生が正答してきますので,他の論点についても基本的な論点については正誤判断ができるように学習しておいてください。より詳しくは,短答直前答練第1回の解説で説明しますので,参考にしてください。

 

(3) 使用する講義・教材

短答対策としては,上記で説明した「3.短答対策において目指すべき状態」及び「5.結論や理由を押さえるうえでのポイント」を意識したうえで,圧縮講義を受講することをオススメします。ここでのポイントは,講義を再現できるように,圧縮講義を受講しながら必要な事項をテキストに書き込んでおくことです。

その後,短答対策問題集を解く(少なくとも2回は解く)ことにより短答特有のひっかけポイントを把握するようにしてください。ここでのポイントは,短答対策問題集を解いた結果把握した,新たな知識や短答特有のひっかけポイントをすべてテキストに書き込んでおくことです。

そして,最後に,新たな知識や短答特有のひっかけポイントなどが書かれているテキストを読み込むことにより,重要論点の知識の定着を図ることが重要になります。

また,2月下旬から始まる短答対策直前答練や4月上旬から始まる短答式模擬試験を受け,自分の実力をチェックしながら,適時勉強計画を修正していくことが重要になります。

なお,監査論について,CPAで学習することを検討されている方は,圧縮講義,短答対策問題集,短答直前答練をセットにした「短答対策パック 監査論」がオススメになります。

 

以上が監査論の学習方法のアドバイスになります。

 

是非,この機会に監査論と真剣に向き合ってください。また,このブログが,皆さまの合格の一助になれば幸いです。

 

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