
【純資産】東芝の減資について解説!損失処理して心機一転

東芝に関するニュースが目を引きました。
東芝、2399億円を減資へ 15年度決算も一部訂正|Reuters
財務体質を改善するため、2399億円の減資を実施すると発表した。6月22日開催の定時株主総会に付議する。
効力発生日は7月31日。
資本金4399億円のうち2399億円を取り崩すことで、累損を一掃する。
「資本金2,399億円を取り崩すことで累損を一掃する」
今回注目するのはこの一文です。ちゃんと理解できてる人からすると問題ないのですが、そうでないと「なんとなくわかるけど、よくわからない…」そんな文章です。
そこで今回はこの部分について解説をします!
東芝は資本が毀損している
まずは東芝の現在の状況から。純資産の部はこんな感じです。
上記のうち、資本金と資本剰余金は元手なので、元手8,207億円とまとめて考えていきます。(資本金4,399+資本剰余金3,808)
そうすると元手8,207億円に対して累積損失(累損)が△4,621億円となっているということがわかりますが、この状況は何が起きているんでしょうか?直感的にイメージできるように、累積損失がない場合とある場合を比較してみましょう。
この図の通り、累積損失があるということは、その分だけ資本を毀損(減少)してしまっているということを表すのです。
こう考えると、東芝は株主から出資してもらった額のうち半分以上も毀損しているんですね。いやはや、その影響の大きさがわかります。
減資からの損失処理で累損を一掃しよう
資本が毀損している状態、すなわち利益剰余金がマイナスとなっていても会計上は特段何か処理をしなければいけないということはありません。つまりこのままでもいいんです。
ただ利益剰余金がマイナスだと見栄えが悪いですよね。
そこでこれを解消するために東芝が今回行ったのが「減資からの損失処理」です。
「減資からの損失処理」というのはざっくり言うと、元手と損失を相殺しちゃうことです。
元手と累損が相殺されていますよね。こうすることで純資産の見栄えがよくなりました。
これが累損を一掃するという意味です。
実質的には何も状況は変わらない
「累損を一掃」と聞くと、過去の赤字が帳消しになって万々歳とか、業績が復活したというようなとてもつもない効果があるようにも聞こえます。
しかし、上記の図の「純資産の合計金額」を見て分かる通り、その中身は数字の入り繰りにしかすぎません。(損失処理をしても純資産合計は3,587億円で変わらない)
つまり、やってることは単なる純資産の内訳を整理しただけということになります。
ただ整理することで利益剰余金が0になるので、「心機一転再出発します!」というアピールになります。
東芝の今後に期待しましょう。
実際の仕訳及び試験的に重要なこと
参考までに東芝の行った仕訳を示しておきます。
<減資(資本金から資本剰余金への振替)>
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
資本金 | 2,399 | 資本剰余金 | 2,399 |
<損失処理(資本剰余金と利益剰余金の相殺>
借方項目 | 金額 | 貸方項目 | 金額 |
資本剰余金 | 4,620 | 利益剰余金 | 4,620 |
資本金と利益剰余金を直接相殺はできないため、一回資本金を資本剰余金に振り替えた上で、資本剰余金と相殺しています。
最後に公認会計士試験的に大事な点を1つ。
損失処理は資本と利益の混同には当たらない!
※ 今回は説明の都合上、金額などについて省略した部分があります。正確に把握したい方はこちらを参考にしてください。
利益準備金及び資本金の額の減少並びにその他資本剰余金の処分についてのお知らせ|東芝
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
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