
【分配可能額】実務でも間違えることはある?HOYAの算定ミスについて解説します!

珍しいニュースが飛び込んできました。
日経新聞
HOYA、自社株買い236億円超過 「算定ミスが原因」
HOYAのIRニュース
平成28年2月に決議した自己株 式の取得に関する第三者委員会設置のお知らせ
あら。分配可能額。
HOYA、自社株買い236億円超過 「算定ミスが原因」 :日本経済新聞 https://t.co/4RilaAMU7N
— 国見健介 (@cpakunimi) 2016年5月18日
日経新聞の記事から一部抜粋してみます。
HOYAは18日、会社法の規定を236億円上回る自社株買いをしていたと発表した。自社株買い可能額の算定ミスが原因としている。
(中略)
自社株の取得可能額は直近で発表した本決算の単体ベースの利益剰余金(利益準備金を除く)が基準になる。期中に配当や自社株買いをした場合、実施額に応じて可能な額が減少する。期中に発生した利益は可能額に加算できないなどの規定もあり、算定ミスにつながった可能性がある。
要は「分配可能額の計算間違えちゃいました!」ということです。
あーそうなんだと終わらせてもいいのですが、せっかくなのでこのニュースに突っ込んでいきます。
上記の引用文のうち、注目してほしい箇所を太字にしてみました。
分配可能額を勉強した方はこの文章理解できますよね?
ちょっとピンと来ない・・・という方は以下の説明を参考にしてみてください。
期中に配当や自己株式を取得した場合
期中に配当や自社株買いをした場合、実施額に応じて可能な額が減少する。
<解説>
基本的に、配当金の支払や自己株式の取得は分配可能額の枠内でしかできません。
別の言い方をすると配当や自己株式の取得は分配可能額を使用することになります。
そのため、期中で配当や自己株式の取得をした場合には分配可能額は減少するということになるわけです。
期中に利益を獲得した場合
期中に発生した利益は可能額に加算できないなどの規定もあり
<解説>
分配可能額は前期末の貸借対照表の金額をもとに算定されます。では当期中の取引で利益を獲得した場合にはどうなるのでしょう?
例えば100円の商品を150円で販売し50円の利益を獲得したとします。この場合にはその時点で分配可能額は50増えるのでしょうか?
結論は「増えない」となります。
これは決算をしていないことが理由です。決算を行っていない期中の段階では,まだ利益は確定していないと考えるため分配可能額に含めてはいけないのです。
ちなみに、この論点に付随して「自己株式の処分差額」の話もあります。
例えば100円で取得した自己株式を150円で処分し自己株式処分差益(その他資本剰余金)が50計上された場合,その50円はやはり決算するまで分配可能額には含めることはできません。
これは上述した「決算するまで期間利益を分配可能額に含めない」ことと整合させることが理由です。
期中の利益は分配可能額に入れないんなら、自己株式処分差額も入れちゃダメ!
というわけです。
HOYAは具体的にどんな算定ミスをやったの?
日経新聞の記事内容から察するに、
「期中に行った配当や自己株式取得の金額を分配可能額から控除しなかった」という気がします。
ただ、HOYAの発表資料に算定ミスの内容が書いておらず、本当の理由はわかりかねます。(>_<)
何はともあれ、HOYAは分配可能額の計算を間違えてしまったみたいですが、受験生の方は間違えないように気をつけましょう!
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
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