
【固定資産の減損会計】将来キャッシュ・フローが税引き前である理由

「将来キャッシュ・フローには、利息の支払額並びに法人税等の支払額及び還付額を含めない。」
減損会計の基準にはこの規定があります。(固定資産の減損に係る会計基準二4.(5))
理由としては利息や法人税等の支払額は「通常、固定資産の使用又は処分から直接的に生ずる項目ではない」からです。(減損会計意見書四2.(4)⑥)
利息はまだいいんですが、法人税等については直感的にイメージができず、むしろ、法人税等の支払は考慮した方が合理的と考えてしまう方も多いようで、度々質問を受けます。
ボブ「仮に将来CFが100だったとしても、税金40(税率40%)かかるんだから、得られるCFは税引き後の60で考えた方がいいんじゃないですか??」
ノボ「それはだね・・・」
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減損の将来CFが税引前である理由
とてもシンプルな設例で考えましょう。
取得原価:90
耐用年数:1年
残存価額:ゼロ
税 率:40%
この建物の税引き前将来CFが100だとします。
これを前提に固定資産が減損しているかどうか検討してみます。
将来CFは税引き後の方がいいという意見の方は
帳簿価額90 > 将来CF60
となり、減損しているという意見です。(将来CF60は100-税金40で算定)
本当にそうでしょうか?
実は違います。ちゃんと考えるとこの設例の建物は税金を考慮しても減損していません。
これは税引き後のCFをきちんと算定してみるとわかります。
<税引き後の将来CF>
収益+100
税金△ 4
合計 96
帳簿価額90 < 将来CF96 ∴減損していない
ついつい税金△40(100×40%)かなと思いがちですが,そうではないのです。
なぜなら建物の90は減価償却され損金に算入されるからです。
減価償却を考慮すると・・・
益金100-損金90=所得10
となり、税金は
10×40%=4
となるのです。
これでわかりました。将来CFから法人税等を引くと合理的どころかむしろ非合理になってしまうのです。
減損会計は将来のCFと帳簿価額(投資額)を比較して判定しますが、帳簿価額が税引前である以上は、将来CFも税引き前である必要があるのです。
管理会計論の意思決定的に言えば、タックス・シールドを考慮していないんだから将来CFも税引き前でやろうぜ!ということです。
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
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