
【収益認識に関する包括的な会計基準】簡単な概要と公認会計士試験への影響

平成28年2月4日に「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」が企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されました。
収益認識に関する包括的な会計基準というのは、その名の通り、収益認識を包括的に規定した会計基準です。収益に関する包括的な基準であるためすべての企業・業界に影響を及ぼす非常に重要な基準です。
公表の経緯
会計基準は様々開発されていますが、そのほとんどが費用に関する会計基準です。
(退職給付,減損,資産除去債務,ストック・オプションetc…)
それに対して収益に関しては、基準がほとんどありません。
包括的な基準としては、一応、企業会計原則の損益計算書原則があります。損益計算書原則には「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」と規定されています。
が、企業会計原則の公表日は1949年であり、当時と現代ではビジネス環境が大きく違いますので規定としてはほとんど機能していないのが実情です。また、工事契約やリース(リースの貸手)などの個々の基準の幾つかに個別の規定はありますが、やはり、包括的な基準はありません。概念フレームワークには考え方が記載されていますが、あくまでも考え方であり会計基準ではありません。
そんな中、平成26年5月に、IFRSを作成しているIASBと米国基準を作成しているFASBは収益に関する包括的な会計基準を共同して公表しました。公表から数年経過していますが、まだ強制適用はされておらず、平成30年に強制適用という予定になっております。
これらの状況から日本においても収益に関する基準の開発が始まったという流れになります。
今後の流れそして会計士試験への影響
今はまだ意見の募集を行っている段階ですが、今後は集まった意見をもとに検討し、開発し、そして、適用となります。
適用開始時期はIFRSと米国基準の強制適用日と同様に平成30年を目標としているそうです。
公認会計士試験の試験範囲は適用されている基準が適用範囲となるため、当該基準の試験範囲となるのも平成30年以降に試験範囲となると予想されます。
(順調に開発・適用されればですが)
基準の内容
最後に基準の内容を少しご紹介しておきます。実際には様々な規定が含まれる予定ですが、その中からわかりやすいものを3つだけピックアップしてご紹介しておきます。
返品権付き販売
現在は「返品調整引当金として返品が見込まれる金額だけ売上総利益を調整」していますが、これが「返品が見込まれる金額はそもそも収益として認識しない」となる可能性があります。
ポイント制度
現在はポイントについては規定がないため「販売促進費として処理」したり「収益のマイナスとして処理」したり個々の企業の判断で処理が行われいますが、この辺が整備される予定です。
契約に複数のサービスが含まれる場合
ソフトウェアの開発とその後のサポート・サービスというように複数の内容が1つの契約に含まれる場合がありますが、この場合の会計処理が整備される予定です。
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
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