
【ツイ簿記】対価が株式の場合に計上されたのれんも償却すべき?

問題
昨日Twitterにおいて以下の投げかけをしました。
【ツイ簿記】のれんを償却する論拠として「投資原価を上回った金額を利益とするために,のれんは償却すべき」というものがある。ここで合併の対価として「株式」を交付した場合には現金投資をしておらず財産の流出はないため当該論拠は当てはまらない
— 登川雄太 (@noborikawa_cpa) 2016、 1月 27
投票して下さったみなさまどうもありがとうございます。
現金対価の場合には払った以上の収益を獲得できないと利益とはいえないというのは直感的にわかりますが,対価が株式の場合には資産の減少がないため,それを上回る必要はなさそうとも思えてしまいます。
果たしてどっちなのでしょうか?
問題を見てなかった人は一回考えてみましょう。
解答
では早速解答の発表です。
解答は
「誤り」
です。
対価が株式の場合においても「投資原価を上回った金額を利益とするために,のれんは償却すべき」という論拠は当てはまります。
解説
以下のシンプルかつ非現実的な設例で考えてみます。
①Aさんが100出資をしてX社を設立した。X社は設立に伴い株式を1株付与した。
②X社は設立直後にZ社を合併した。Z社はペーパーカンパニーで純資産額は0であるが,X社は合併に伴いZ社の株主に対して100の株式を1株交付した。
①の設立時の仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100 | 資本金 | 100 |
②の合併時の仕訳
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
のれん | 100 | 資本金 | 100 |
合併後の貸借対照表は現金100,のれん100で純資産(資本金)は200となります。また発行済株式数は2株です。
ここで今回の論点は合併後のX社がのれんの金額100を上回る利益をあげる必要があるか否かですが,考える際のポイントは以下の2つです。
「のれんは実態のない資産である」ということ,「元々の1株当たり純資産は100である」ということ。
検討
仮に利益を50計上したとしましょう。この場合の貸借対照表は現金150,のれん100で純資産は250です。合併後の株式数は2株ですので1株当たり純資産は125となります。こうすると一見のれんの金額を上回る利益をあげる必要はないと思ってしまいます。
しかし考慮しなくてはいけないのが,のれんは実態のない資産で無価値ということです。
のれんの100は無価値である以上,本来の1株当たり純資産はのれんの100を引いた150÷2株=75となり,当初の1株当たり純資産を下回ってしまいます。
対して利益を100計上した場合を考えてみると,現金200,のれん100で純資産300ですが,のれんは無価値なので本来の純資産は200となります。その結果1株当たり純資産は200÷2株=100となり,当初の100と一いたします。
これらの結果から合併後のX社はのれん計上額である100の利益をあげてようやくトントンであることがわかります。
そのため今回の論点であった,「対価が株式の場合においても投資原価を上回った金額を利益とするために,のれんは償却すべき」という論拠は当てはまるということがわかるのです。
※文中にある本来の1株当たり純資産や,本来の純資産というのは普段は使わない表現なので注意してください。