
管理会計論 講義復習ブログ⑤ 部門別計算

管理会計論CPA専任講師の梅澤です。@umechan_cpa
昨年11月からCPAでは初学者向け公認会計士講座の管理会計論の講義がスタートしています。この講義復習ブログでは,主にCPAの受講生向けに,講義内容の復習ポイントについて説明していきたいと思います。
今回は,中級期第6回と第7回で学習した部門別計算についてです。
部門別計算の定義について
費目別計算において把握された原価要素を,原価部門別に分類集計する手続きであり,原価計算における第二次の計算段階である点を押さえましょう。費目別計算で分類測定は終わっており,これを分類集計する手続きになります。
なお,総合原価計算においては,製造部門は工程と表現されますので,工程別計算に部門別計算の手続きが内包されます。
部門別計算の目的について
正確な製品原価計算と原価管理を行うことが目的(メリットになります)。
正確な製品原価計算のメリットは,作業の性質毎に設定された製造部門に原価を集計することで,因果関係に沿った計算が可能となる点に紐づけて押さえましょう。
原価管理のメリットは,権限・責任の区分に基づいて設定された原価部門に原価を集計できるようになる点に紐づけて押さえましょう。
なお,計算経済性の観点からは部門の設定数は一定の範囲内に抑えるべきである点にも注意してください。
原価部門の分類について
原価計算基準の文言になりますので,名称は覚えておきましょう。なお,以下の点に注意してください。
・副経営も製造部門である点
・補助経営部門(工場管理部門は含まない)が相当の規模となった場合には製造部門扱いとなる点
・原価部門は計算組織上の区分であって,実際の組織の区分ではない点
第一次集計について
部門個別費,部門共通費の定義を押さえましょう。
なお,個別原価計算を前提とすれば,通常は,製造間接費を部門個別費と部門共通費に分類して,原価部門に集計します。
部門共通費の配賦基準の選択の際の注意点,また配賦基準の適用方法は,製造間接費を製品に配賦する際の注意点と同様になります。
第二次集計について
補助部門費を製造部門に配賦する目的(メリット)を製品原価計算と原価管理の観点から説明できるようになっておきましょう。
製品原価計算の観点では,補助部門費の因果関係に沿った配賦計算が可能となる点について意識しながら説明できるようになっておいてください。
原価管理の観点では,製造部門が消費した補助部門費も製造部門の責任原価である点を意識して説明できるようになっておいてください。
直接配賦法,階梯式配賦法,相互配賦法について
各種の補助部門費の配賦方法について,メリット・デメリットを比較しながら説明できるようになっておきましょう。なお,階梯式配賦法と相互配賦法について,計算をするために必要なデータは同様であることから,経済性の観点から両者に差は無い点に気を付けてください。
また,階梯式配賦法では配賦順位決定ルールの適用について,ルール②のどちらを適用すべきかの判断をできるようになっておいてください。指示がなければ簡単な第1次集計額の比較で判断しましょう。
相互配賦法では連立方程式の立て方を工夫するようにしてください。具体的には,連立方程式になるべく分数が入らないように式を立てるように工夫しましょう。
製造部門費の予定配賦について
製造部門費の予定配賦を行う場合には,予定配賦率設定時において製造部門費の予算額を算定する必要性から,補助部門費の配賦計算が必要となります。すなわち,予算データを用いて第二次集計まで要求されます。なお,月末以降において,製造部門費配賦差異を算定しなければなりませんので,製造部門費の実際発生額を算定する必要性から,補助部門費の配賦計算が必要となります。すなわち,実績データにおいても第二次集計が要求されます。なお,実績データの第二次集計の方法は,予算データにおける第二次集計の方法と同様の方法によって行われます。
補助部門費の配賦方法~単一基準と複数基準 実際配賦と予定(予算許容額)配賦~
①単一基準の問題点及び②実際配賦の問題点をまず説明できるようになりましょう。
そのうえで,複数基準の実際配賦では①の問題点のみ解消できる点をまず説明できるようになりましょう。また,単一基準の予定配賦では①②の両方の問題が解消できることを説明できるようにしてください。しかし,単一基準の予定配賦では補助部門において管理不能な操業度差異が補助部門に残ってしまう責任会計上の問題が新たに生じることを合わせて押さえましょう。結果として,実際原価計算の範囲内では,複数基準の予定配賦(予算許容額)配賦が最も望ましい方法であるという流れで説明できるようにしておいてください。
部門共通費の個別費化への取り組み
部門共通費を個別費化する主たる理由は原価管理になります。個別費化の方法を3つ挙げられるようにしておいてください。
一般費について
押さえるべきはこの3点です。
①一般費の定義
②一般費は補助部門として処理される点
③負担能力基準等で製品に直接配賦される点
補助部門費の製品への直接配賦について
以下の2つのケースを想定できるようにしてください
①製造部門よりも製品に直接配賦する方が因果関係に基づく計算となる場合(ex製品検査部)
②製造部門に合理的な配賦基準が見いだせない場合(ex一般費)
なお,②の背景には計算経済性の観点からの判断がある点を意識してください。
コスト・センターについて
原価に対してのみ責任を負う管理単位をコスト・センターといいます。このコスト・センターには管理可能な原価のみ集計する必要がある点を押さえましょう。その理由は①~③の流れで押さえてください。
①原価管理を効果的に行うためには動機づけが重要
②動機づけのためには責任会計との結合が必須
③責任会計を機能させるためには管理可能性原則に沿った原価集計が重要
最後に,部門別計算は計算理論ともに理解するのに時間がかかるものです。しかし,短答式試験において最も頻出といえる論点の一つになりますので,時間をかけて構わないので,しっかりと復習し,確実に得意にしていきましょう。