梅沢講師

管理会計論 講義復習ブログ⑦ 単純総合原価計算

管理会計論CPA専任講師の梅澤です。@umechan_cpa

 

昨年11月からCPAでは初学者向け公認会計士講座の管理会計論の講義がスタートしています。この講義復習ブログでは,主にCPAの受講生向けに,講義内容の復習ポイントについて説明していきたいと思います。

 

今回は,中級期第9回~第11回で学習した単純総合原価計算についてです。

 

完成品換算量について

総合原価計算では月末仕掛品等を完成品に換算して原価配分を行っていきます。

直接材料費について完成品換算量を算定する必要性について毎年必ず質問がありますが,直接材料費についても進捗度と完成品換算量は必要となります。それは,始点投入材料であれば月末仕掛品の進捗度が100%となり,実在量と完成品換算量が一いたしますが,途中点投入や平均的投入の場合には実在量と完成品換算量が一致しないケースがあるためです。

 

月末仕掛品の評価方法について

原則法について悩むことは無いと思いますが,簡便法の方は原価計算基準の理論問題で出題される可能性がありますので,最終的には文言を正確に押さえてください。

 

先入先出法か平均法の判断について

このフローチャートを丸暗記する等は必要有りません。以下の2点を押さえておけば大丈夫です。

・ボックス図の借方が作れなければ,先入先出法を採用できず平均法にならざるを得ない。

・金額データを原料費加工費それぞれについて月初と当月投入を合算できなければ,平均法を採用できず先入先出法にならざるをえない。

 

単純総合原価計算の意義について

単純総合原価計算の単純の意味合いは,すべての製造方法が同じであり,製造原価も同額ずつ消費したと仮定するということです。簡単にいえば,製品の種類が1種類であることを意味しています。

この点,単純個別原価計算における単純の意味合いは,部門別計算を省略することですので注意してください。

 

仕損費の範囲について

総合原価計算においては,補修費は仕損費にならない点に注意してください。これは,総合原価計算では期間生産量に原価を集計したうえで,期末における完成品や月末仕掛品に原価を按分しますが,この時,期末における完成品や月末仕掛品について,補修を経たか否かを区別しないためです。簡単にいえば,総合原価計算は個別原価計算と異なり簡便な処理をするためです。

 

仕損費減損費の処理について

度外視法と非度外視法について,負担関係及び負担割合を考慮するか否かといった観点から,計算構造を理解してください。なお,先入先出法では当月投入分からのみ仕損等が出たと仮定して計算する点も意識して押さえましょう。

なお,非度外視法においては以下の点を意識してください。

① 仕損等が複数出る場合についての処理は,進捗度の小さい順に計算する点

② 区間平均的発生の減損についての処理は,発生区間の加工換算量割合で負担させる点。③ ②の時,先入先出法の場合には月初仕掛品の前月の加工量については按分割合に含めない点。

 

異常仕損等について

正常性概念を重視する方法と原価発生原因主義を重視する方法は選択適用である点を押さえましょう。

そのうえで,月末仕掛品と異常仕損が,正常仕損等を負担するか否かを考えて,一方が負担する場合には,負担しない方から計算する点を意識しましょう。この点,負担するか否かが月末仕掛品と異常仕損で同じであれば,両者は同じ単価で計算することができます。

 

度外視法と非度外視法の比較について

正確な製品原価計算の観点,原価管理の観点,経営意思決定の観点から,非度外視法が優れています。

正確な製品原価計算の観点からの比較については,負担割合について歩減の発生状況別に直接材料費と加工費のどちらの計算が度外視法と非度外視法で異なるのか,を説明できるようにしておきましょう。

原価管理や経営意思決定の観点からの比較については,仕損費を把握できるか否かを出発点にして押さえましょう。

 

副産物等について

副産物の原則処理は,主産物の総合原価から控除する方法です。結果として,仮に副産物が仕損であったと考えて,加工進捗度を加味した度外視法を採用した場合と同様の処理になります。軽微な副産物は原価計算上処理を行わず,売却時に原価計算外の収益とすることになります。

なお,副産物は主産物とは異なり経済的な重要性が劣るものになります。そのため副産物への原価配分額は評価額を持って計算するという簡便的な処理を行うのです。また,そもそも主産物の製造過程から必然的に派生する副産物の原価消費量はわかるはずもないですので,原料費や加工費にわけて評価額を算定したり,ましてや副産物の原価を正確に計算することなどできるものではありません。ただし,指示によっては非度外視法的な処理を副産物や作業屑に適用したり,評価額を原料費や加工費にわけて算定したりすることもあります。問題としてはあまりよくないと思いますが,指示があれば指示に従って計算してください。

 

減損の安定的発生について

減損率が安定している場合には,完成品や月末仕掛品ごとに,それぞれがどれだけ減損を発生させたかを把握することができます。そのため減損費をそれぞれについて算定し,そのまま負担させる計算が要求されます。

計算のポイントとしては,生産データを台形の面積図に落とし込めることが重要となります。

 

純粋先入先出法について

純粋先入先出法では完成品について,月初からの完成品と当月着手分からの完成品を分けて計算することになります。この内,当月着手分からの完成品の単位原価は当月の原価だけで構成されますので,純粋な期間比較が可能となり原価管理に役立つというわけです。

 

最後に,総合原価計算の形態は,単純総合原価計算の他に等級別総合原価計算や組別総合原価計算があります。等級別や組別でも,今回学習した内容はすべて関わってきますので,仕損の処理を中心に最重要論点の位置づけで復習するようにしてください。

 


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