
平成26年会社法改正の概要③ 菅沼講師(企業法)

企業法専任講師の菅沼です。@suganuma_cpa
改正法の概要,最終回です!
今回は,【資金調達に関する改正】,【組織再編行為等に関する改正】です。
※前回前々回の記事はこちらより御覧ください。
【資金調達に関する改正】
1.公開会社における支配株主の異動を伴う募集株式の発行等
公開会社では,授権資本制度が採用されているため,原則として,取締役会の決議により募集株式の発行等を決定することができます。また,募集株式の割当てについても株主総会の決議は不要です。
しかし,募集株式の発行等によって支配株主が異動する場合は,株式会社の経営のあり方に重大な影響を及ぼすことがあり得ることから,新たな支配株主が現れるような募集株式の割当てについては,既存株主に対する情報開示を充実させるとともに,その意思を問うための手続を設けることが相当です。
そこで,改正法は,公開会社における募集株式の割当て等の特則を設けました。
また,募集株式の発行等について当該規定を設けても,同じく支配株主の異動を伴う募集新株予約権の発行について何らかの規律を設けないと募集新株予約権の発行をしたうえで,直ちに引受人が新株予約権を行使することにより,容易に当該規定が潜脱されてしまいます。よって,募集新株予約権の発行においても同様の規定を設けました。
2.新株予約権無償割当てに関する割当通知
ライツ・オファリング(新株予約権無償割当てを用いた増資方法)を普及させる観点から,ライツ・オファリングによる増資に必要な期間を短縮することができるように,新株予約権無償割当てに関する割当通知に関して改正がなされています。
3.発行可能株式総数に関する規律の徹底
改正前会社法においては,公開会社における発行可能株式総数に関する規律が徹底されていない場合があったため,これを徹底する改正がなされています。
その他,資金調達に関する改正として,募集株式が譲渡制限株式である場合の総株引受契約等の承認に関する改正がなされています。
【組織再編行為等に関する改正】
1.親会社による子会社の株式等の譲渡
改正法は,株式会社が,その子会社の株式等を譲渡することにより,株式等の保有を通じた当該子会社に対する支配を失う場合には,事業譲渡と実質的に異ならない影響が当該株式会社に及ぶと考えられることから,一定の子会社の株式等の譲渡については,事業譲渡等と同様の規制を及ぼすこととしました。
2.組織再編行為の差止請求制度に関する改正
組織再編行為の無効を争う手段としては,組織再編行為の無効の訴えがあるが,事後的に組織再編行為の効力が否定されると法律関係を不安定にするおそれがあります。そうであれば,株主が,組織再編行為の効力発生前にその差止めを請求することができるとするのが相当であると考えられました。
ここで,改正前会社法においては,略式組織再編行為に該当する場合に限って差止請求の規定が設けられていましたが,改正法は,略式組織再編行為以外の組織再編行為についても差止請求の規定を設けることにしました。
3.詐害的な会社分割における債権者の保護
改正法は,詐害的な会社分割における残存債権者(会社分割において,吸収分割承継会社または新設分割設立会社に承継されない債務の債権者)を保護するための制度を設けました。
また,事業譲渡においても,譲受会社に承継されない残存債権者を害する詐害的な事業譲渡が行われるおそれがあることから,会社分割の場合と同様に,残存債権者を保護する規定を設けました。
4.分割会社に知れていない債権者の保護に関する改正
改正前会社法においては,分割会社に知れていない債権者に対する保護が不十分であったため,分割会社に知れていない債権者の保護に関する改正がなされました。
その他,組織再編行為等に関する改正は,以下の通りです。
・ 簡易組織再編行為等における株式買取請求に関する改正
・ 略式組織再編行為等における株式買取請求に関する改正
・ 株式移転の無効の訴えの原告適格に関する改正
以上,全3回 ①【機関に関する改正】②【株式に関する改正】と【設立に関する改正】③【資金調達に関する改正】【組織再編行為等に関する改正】に渡って,改正法の概要を説明してきました。
あくまで概要ですので,詳しい内容は改正論点講義をご覧頂ければと思います!
https://www.cpaonline.jp/shopdetail/000000001046/
では,平成28年公認会計士試験もがんばっていきましょう!
次回は,年末特番ということで,「絶対に笑ってはいけない匿名組合24時」を,ガースー黒光りファンドを舞台にお送りいたします(うそです)。
お楽しみに!