菅沼講師

トヨタの種類株式発行について④ ~AA型種類株式の性質~

こんにちは!

企業法専任講師の菅沼です。(@suganuma_cpa)

トヨタの種類株式発行について④ ~AA型種類株式の性質~

トヨタの種類株式発行についての第4弾!

今回はAA型種類株式の性質について,会社法を学習するうえで典型論点である「株式と社債の比較」とからめて書いていきたいと思います。

1.株式と社債の相違点

株式と社債の相違点は,会社法を学習するうえで典型論点です。

様々ある具体的相違点のなかで,今回取り上げたいのは, 経営参加権,② 配当と利息,③ 出資の払戻しと償還,④ 会社清算時における取扱いの4つです。

まず,AA型種類株式を無視して,一般的な株式と社債の相違点をみてみましょう。

経営参加権

株主は株主総会における議決権があるため経営参加権が与えられておりますが,社債権者にはそのような権利はありません。

配当と利息

株主に対する配当に関しては,分配可能額があり,かつ,株主総会の剰余金配当決議等を経て,はじめて剰余金配当を受けることができるし,その額は不確定です。これに対して社債権者は,利益の有無に関わらず,確定利息を受けとることができます。

出資の払い戻しと償還

株主は,債権者保護のため,資本維持の要請により,出資の払戻しは原則として認められておりません。取得請求権付株式による取得請求が認められる場合であっても,分配可能額がなければ請求することができません。

これに対して,社債権者は,利益の有無に関わらず,償還期限が来れば償還を受けることができます。

会社清算時

会社清算時,株主は会社の債務を弁済した後の残余財産分配請求権しか有しておりませんが,社債権者は,株主に先立ち一般の債権者と同一順位で会社財産から弁済を受けることができます。

以上,一般的な株式と社債の具体的相違点の一部です。

ここで,AA型種類株式と社債を比較してみましょう。

経営参加権について

AA型種類株式には議決権があるため,社債と異なり①の経営参加権が認められます。

そこは普通株式と一緒ですね。

配当と利息について

AA型種類株式は株式である以上,分配可能額がなければ配当を受けることができないのですが,非参加的累積的優先株式であるので,配当額が確定しているという点で一般的な株式より社債に近いということができるでしょう。

出資の払戻しと償還について

AA型種類株式は,期間が経てば会社に取得してもらえるという点で社債に近いですが,分配可能額がなければ取得請求をすることができないため,その点は社債と異なります。

会社清算時について

AA型種類株式はあくまで株式ですので,債権者よりは当然に劣後的な地位となります。しかし,普通株式よりは優先されますので,そういう意味では,普通株式よりも社債に近いということができるでしょう。

2.AA型種類株式の性質

以上を踏まえて考察しますが,そもそもトヨタですので,分配可能額や会社清算の心配をする必要はないという前提に立つと,社債と異なるのは①の経営参加権,つまり議決権(その他監督是正権を含む)があるだけと言えます。

さらに,AA型種類株式は,期間が経てば普通株式に転換することができるわけですので,社債の中でも,転換社債型新株予約権付社債(いわゆる転換社債(CB))に性質が最も類似していると言えそうです。

ただ,社債の利回りと比べるとAA型種類株式の配当利回りはかなり高いというのもポイントです。

したがって,

・ 普通株式よりも配当額は少ないが,社債を購入するよりもはるかに高い利回りを確保できる。

・ 株価下落リスクはないに等しく,株価が上がれば売却益を得ることもできる。

・ 議決権もある

といった感じでしょうか。ただし,譲渡制限株式であり,取得請求も5年経過後なので,5年間は換金ができないという点は要注意です。

以上を踏まえると,5年間は資金を拘束されても構わないリスク回避志向の個人投資家を対象にしているようですね!

次こそ最終回にしようと思いますが,次回は,AA型種類株式を発行する目的について書きたいと思います。


受講生の主な就職先

資料を取寄せる(無料)  無料説明会を予約する