菅沼講師

トヨタの種類株式発行について② ~種類株式の内容の詳細とポイント~

こんにちは!

企業法専任講師の菅沼です。(@suganuma_cpa)

前回に引き続きトヨタの種類株式発行について書いていきます。

申し遅れましたが,この種類株式,「AA型種類株式」という名前が付けられています。

AA型とは,昭和初期に開発生産されたトヨタ初の乗用車の車名だそうです!

今回は,このAA型種類株式の内容の詳細とポイントを説明していきます。

1.剰余金の配当について

AA型種類株式を有する株主は,普通株式を有する株主に先立ち,以下の配当年率によって算出された剰余金の配当を受けることができます。

1年目:0.5%

2年目:1%

3年目:1.5%

4年目:2%

5年目以降:2.5%

すなわち,配当年率は5年目までは毎年0.5%ずつ増加し,5年目以降は2.5%で一定となります。ここで,AA型種類株式は上記の配当を普通株式を有する株主に先立って受けることができる優先株式なのですが,非参加的累積的優先株式であるということがポイントです。

【用語】

優先配当を受けた後に,普通株式とともに配当を受けることができる株式を参加的優先株式といい,できない株式を非参加的優先株式といいます。

また,ある期における配当が所定の優先配当金額に達しない場合に,当該不足額が次期以降の剰余金から優先的に支払われる株式を累積的優先株式といい,支払われない株式を非累積的優先株式といいます。

つまり,非参加的優先株式であるため,上記の配当年率により算出される額を超えて普通株式を有する株主と一緒に剰余金の配当を受けることができません。また,何かの事情で上記の配当年率により算出される額に剰余金の配当額が達しなかった場合であっても次期以降に当該不足額が優先的に支払われるということです。

すなわち,配当年率が固定されており,足りない場合であっても次期以降に補てんされるということです。これは,実質的に配当額があらかじめ確定していることを意味します。そういう意味で,非参加的累積的優先株式は,あらかじめ定められた確定利息を受けることができる社債と類似しますよね。「株式の社債化」です

ここで,トヨタの普通株式の最近の配当利回りは2%前半のようなので,これと本件種類株式の配当年率の平均(5年間で1.5%)を比べると,AA型種類株式の配当年率の方が低いといえます。

したがって,発行から5年間の配当額は普通株式に比べて少ない見込みであるといえるのです。

すなわち,参加的優先株式であれば,優先的に配当を受けた後,普通株式とともに配当を受けることができるため普通株式に比べて配当額が少なくなることはないのですが,非参加的優先的株式の場合は,普通株式の配当利回りとの関係では,優先配当株式の方が配当額が少なくなることもあるのです。

あくまで,「優先」というのは普通株式に先立って一定額をもらえるという意味ということですね。

2.残余財産の分配について

AA型種類株式を有する株主は,普通株式を有する株主に先立ち,残余財産の分配を受けることができます。とはいっても,債権者よりは当然劣後的な地位にあります。

しかし,トヨタが破たんする可能性はほとんどないと考えられるので,あまり意味のない内容といえそうです。

3.譲渡制限株式

AA型種類株式は譲渡制限株式であるため,譲渡について取締役会の承認が必要となります。

ただし,公開買付けへの応募の場合は譲渡制限が外れます。したがって,敵対的買収の防衛策ではないということですね。

AA型種類株式はこの他にも取得請求権と取得条項が付されていますが,これを書き出すとまた長くなるので,また次回説明いたします!


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