菅沼講師

トヨタの種類株式発行について① ~そもそも種類株式って何?~


トヨタの種類株式発行について① ~そもそも種類株式って何?~

こんにちは!

企業法専任講師の菅沼です。

トヨタの種類株式の発行が話題となっていますね。

やはり,種類株式を発行している株式会社は極めて少ないので馴染みがないというのもあると思いますが,先日行われたトヨタの定時株主総会において,種類株式発行に係る定款の一部を変更する議案が可決されました。

1.トヨタの種類株式の概要

今回,発行が予定されている種類株式については,「元本保証」と言われていますが,どんな株式なんでしょうか。

細かいことは抜きにして,ざっくり確認してみましょう

・ 譲渡制限がある非上場株式なので自由に譲渡をすることができない

・ 発行から5年間の配当額は普通株式に比べて少ない見込み

・ 発行してから5年経過後,トヨタ側の事情でトヨタに強制取得される場合もある

(対価は金銭)

その代わりに,

・ 発行から5年後より,株主はトヨタに対して取得請求可能

(つまり発行から5年を過ぎた後は会社に買い取ってくれと請求することが可能であり,取得対価は金銭または普通株式から選ぶことができ,金銭を対価とするときは発行価格で買い取ってもらえる

・ 残余財産の分配については普通株式に先立って受けることができる

こんな感じの株式です。

あと,種類株式の内容ではなく募集株式の発行等における募集事項の内容ですが,発行価格について,市場価格よりも3割程度高い価格(例えば,市場価格が8,000円だと1万円を超える価格)で発行することが予定されております

また,議決権は制限されていないので,議決権はあります


2.そもそも種類株式って何?

種類株式とは何かを簡単に確認しましょう。

そもそも,株式は,特別な定めをしなければ,譲渡は自由であるし,議決権や剰余金配当請求権も当然あります。また,会社側から株式を強制的に取得されることもなければ,株主が会社に対して株式を買い取ってもらうことを当然に請求することはできません。

そして,会社法の大原則である株主平等原則によって,同じ株数を持っていれば平等に扱われます。つまり,同じ株式数を有している株主に対して,会社が剰余金の配当をする場合は,同額の配当をしなければなりませんし,同じ株式数を有している株主は株主総会において同数の議決権を有することになります。

しかし,株式会社がある株主に限って譲渡制限を付したい,ある株主に限って議決権を制限したい,ある株主に限って優先的に配当をしたい,ある株主に限って取得請求権を与えたい等という場合には,種類株式を発行することでこれを実現することができるのです。

すなわち,種類株式とは,内容が違う株式を複数発行した場合のそれぞれの株式のことをいうのです。

会社法において,株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした種類株式を発行することを認めています。

① 剰余金の配当

② 残余財産の分配

③ 株主総会において議決権を行使することができる事項(議決権制限株式)

④ 譲渡による株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(譲渡制限株式)

⑤ 株主が当該株式会社に対して,株式の取得を請求することができること(取得請求権付株式)

⑥ 株式会社が,一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができること(取得条項付株式)

⑦ 株式会社が,株主総会の決議によってその全部を取得すること(全部取得条項付種類株式)

⑧ 株主総会または取締役会において決議すべき事項のうち,当該決議のほか,当該種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(拒否権付株式)

⑨ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること(取締役等選任権付種類株式)

会社法で認められないものを除き,①~⑨を自由に組み合わせることもできます(例えば,譲渡制限株式でありながら議決権も制限した種類株式や,議決権については制限されますが配当に関しては優先的に受けることができる種類株式を発行することもできます)。

トヨタが今回発行することを決定した種類株式は,上記の①,②,④,⑤,⑥について,既存発行の株式とは内容の異なる種類株式です。

つまり,剰余金の配当および残余財産の分配について優先的に受ける権利が与えられている譲渡制限株式,かつ,取得請求権付株式,かつ,取得条項付株式ということです。

「あれ?剰余金の配当について優先的に受ける権利が与えられてるって,普通株式に比べて配当額は少ない見込みなんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思いますが,長くなってきたので,それぞれの詳しい内容については次回説明したいと思います!

さて,恒例の「教えて!ガヌー!!」のコーナーに参ります(息抜きにお読み下さい)。

ペンネーム:条文マニアさんからの質問です。

【質問】

「会社法の条文を1条~979条まで一言一句くまなく探したのですが,「普通株式」の定義がありませんでした。ガヌー,普通株式って何ですか?」

【回答】

一言一句くまなく探したなんて,さすが条文マニアさんですね。今度飲みに行きましょう。確かに,「普通株式」は会社法で定義されているものではなく,一般的に使われている用語に過ぎません(実は種類株式も会社法で定義されていないのですが,ややこしくなるのでスルーします)。ただ,一般的なイメージは,「特別の定めが何もない株式」のことを指す場合が多いと思います。

ここで,種類株式発行会社において,

A種類株式:特別の定めが何もない株式

B種類株式:優先配当株式

の2種類を定めている場合は,A種類株式が普通株式と呼ばれるでしょう。

これに対して,

A種類株式:議決権制限株式

B種類株式:優先配当株式

の2種類を定めている場合は,どちらが普通株式かわかりませんよね。つまり,普通株式と呼べる株式がない種類株式発行会社も考えられるということです!

まぁ何が言いたいのかということですが,普通株式に正しい定義なんてないので,「何の変哲もないスタンダードな株式」と思っていれば大丈夫です!

※ 次回の「教えて!ガヌー!!」はお休みです。

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