公認会計士の専門学校講師が語る 簿記の学習に反復が欠かせない理由!
簿記の学習に反復が欠かせない理由とは?
専門学校で、公認会計士・税理士の学習をスタートする場合にも、簿記検定対策の勉強をスタートする場合にも、簿記の学習を開始すると、
『簿記は習うより慣れることが重要』
『反復練習はとても重要です』
などと、反復の重要性を聞く機会も多いと思います。
しかし、理屈を抜きに反復が大事と言われても、なかなか反復する気にならないのも現実だと思います。
そして、その結果反復が不足して、簿記がなかなか得意にならないという悪循環に陥ってしまうリスクもあります。
確かに、簿記は反復が重要です。では、なぜ反復が必要なのか。
今回は、反復が必要な理由を色々説明していきたいと思います。
1.忘却曲線
これは、多くの方が聞いたことがあると思いますが、忘却曲線の話です。人の記憶は、定期的に反復をしないと定着しないようにできています。そのため、何度も反復をすることで記憶を短期記憶から長期記憶へ移行させることが必要になります。
長期記憶とは、脳が生きていくために必要な情報と判断し、忘れないように記憶することです。よく酔っ払いで意識もなくなっているような人が、自宅に千鳥足でも帰れるのは、帰宅する経路が長期記憶に貯蔵されているため、無意識でも家に帰ることができるためです。
そして、多くの情報が入ってきた場合に、脳はいったん短期記憶に貯蔵します。そして、その後ほとんど使用しない情報は自然い忘れるようにして、何度も入ってくる情報は重要なので、長期記憶に移行し、忘れないように記憶する仕組みになっています。これは、脳のキャパシティーが一杯にならないようにしている機能です。
そのため、反復をして定着させることが重要です。
2.脳の回路の仕組み
脳の回路は、何度もその思考を繰り返した場合に強化され、素早く処理できる仕組みになっています。
イメージで言うと、最初はジャングルのように通りづらいのですが、何度が通っていると徐々に獣道のように通りやすくなり、広い道路になり、コンクリートで塗装され、最後には高速道路ぐらい早く進めるようになります。そのため、ある程度反復を行い、コンクリートで塗装された道路以上に回路を強化することで、『わかる』から『できる』に進化させることが可能です。
スポーツであれば、『わかる』と『できる』の違いは明確に意識できると思いますが、勉強になるとわかる段階でできると勘違いして反復をしない結果、いつまでたってもジャングルの中を進んでいる状態になってしまいます。その結果、わかってはいるけどテストでは点数が取れないリスクがあるのです。
3.複式簿記という新しい概念
上記、忘却曲線と脳の回路の仕組みは、簿記以外のすべての物について定着させるための一般理論として言われていることです。
しかし、簿記は、一般の定着の理論ともう一つ、複式簿記という新しい概念が入るために、より反復が重要と言われるのです。
複式簿記という概念は、取引を『原因』と『結果』に分けて2面的にとらえることになります。
その結果、財産の状態を表側の『資産』と裏側の『負債』と『資本(純資産)』で表現することが可能になり、会社の財産の状況を適切に表示できるようになります。
また、資本(純資産)の増減を『収益』と『費用』に分けて捉えることで、経営成績についても適切に開示できるのです。
この複式簿記の原理は、非常に優れた原理なのですが、算数で言うところの足し算・引き算ぐらいの根本原理であり、1の次は2、2の次は3ぐらいのルールである。そのため、まずは反復を行い、1+1は2ということに違和感がないのと同様の感覚にすることが求められます。
会計が苦手な方は、この複式簿記の原理を受け入れない、または反復して定着していないということが多いのが現状です。
この複式簿記の原理は、会計に限らず、ビジネスの仕組みを理解する上で、とても重要な概念であるのと同時に、新しい概念なので、反復を行い、定着させることが重要になるのです。
このように、簿記は、
・記憶を定着させるためにも
・素早く思考回路が処理できるようになるためにも、
反復が重要と言われるのです。
そのため、是非、簿記の学習を行っている方は、例題や復習問題などの問題演習をしっかりと行い、反復を実践してほしいと思います。