国際的な税務に精通している公認会計士は圧倒的に不足している!?~二重課税防止策の租税条約から解説~
MS-JAPANさんが運営するカイケイネットに『二重課税を防止するために存在する租税条約』という以下のコラムが掲載されていました。
【以下カイケイネットさんのコラム文章】
【コラム】二重課税を防止するために存在する租税条約
企業の活動はますますグローバル化していますが、国境を越えて企業が稼いだ所得が自分の国と外国の両方で課税されてしまっては企業としてはたまったものではありません。こういった二重課税を防止する一つの策として存在するのが租税条約です。
租税条約は基本的に二国間で締結され、どのような所得がどちらの国で課税されるのか、税率はどうするのか、それでも揉めてしまう場合の話し合いや脱税防止のための情報交換などで両課税当局が協力しましょうというような事を定めています。
・最近の租税条約の動向
2014年10月1日現在、日本は租税条約を62条約、85カ国・地域と結んでいます。これらには日本が主にビジネスを行う上で必要な相手国をほとんど網羅しています。最近では二重課税の防止という目的よりも情報交換を目的とした条約を結ぶことが増えています。
例えばケイマン諸島・バミューダ・バハマ・マカオ・ジャージーなどです。これらの国はタックスヘイブンと呼ばれ、税金がかからない又は非常に低税率の国です。最近ではオリンパスの巨額損失隠しの舞台としてケイマン諸島が利用されたことはみなさんも記憶に新しいのではないでしょうか。
世界のグローバル企業の資金が流れ込むタックスへイブンはその秘匿性の高さを売りにしていましたが、昨今、こうした国への世界各国からの批判が増す中で、タックスへイブン国は租税条約による課税当局同士での情報交換を受け入れざるを得ないといったところです。
・二重課税を防止する目的が二重課税を可能にさせている
租税条約はもともと二重課税を防止するのが目的でしたが、昨今では租税条約をうまく利用して二重非課税状態を作るタックススキームが目立ってきました。このような租税条約の乱用に対して、最近では条約に「特典条項」というものを付けることが多くなっています。
これは簡単に言うと租税条約の有利な税率を適用するためには、その企業がペーパーカンパニーではなく、実業を行っていなければなりませんよというものです。二重非課税を作り出すために租税条約上、税率が有利な条項のある国にペーパーカンパニーを作り、そこに配当や利子、使用料を支払っても租税条約の税率は使わせませんよということです。
また、租税回避の動きは各国が独自に対応するには限界があるため、OECDがG20と協力して歯止めをかけるための提言をし始めています。税法や条約の隙間を突いて企業がタックススキームを考え、課税当局がその隙間を封じるべく策を講じるというイタチゴッコは歴史的に永いこと続いており、ビジネスでのボーダーレス化が進む中で会計・税務の専門家として、また経理部などの実務担当者として最新の租税条約動向はチェックしておきたいところです。
【以上カイケイネットさんのコラム文章】
租税は本来社会インフラを整備し、社会保障や外交安全保障のための財源を国が確保するものです。そのため、個人も企業も、その恩恵を受けて収入や所得を獲得している以上適切に納税する義務があるはずです。
しかし、如何に国際競争力を高めるかというグローバル競争の中で、国ごとに様々な租税のルールがあるため、租税回避行為が横行しているのが現状で、なかなか複雑な問題だと感じます。
抜本的な解決策は、ピケティ教授がおっしゃるように、国際的に連携しながら租税ルールを見直すことが必要だとも考えられますが、その実現可能性は極めて低いと言わざるを得ないのが現状です。
そのような状況の中で、国際的な税務に精通している公認会計士は圧倒的に不足しているのが現状です。税理士とは異なり、経営学・内部統制など幅広い知識と見識を備えた公認会計士が、国際税務に精通していれば、多くの企業から求められる人財になります。
エッジの効いた付加価値を出せる専門家になりたいと考えている方は、ひとつ、国際税務の専門家という道も検討してみてはいかがでしょうか。
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