テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:連結会計
対象:公認会計士試験
重要性:★☆☆
連結の一部売却について質問がありましたので,お答えします。
以下のようなケースを考えます。
(一部売却に関する部分のみを考慮した数値例にしています)

この場合,個別上の仕訳は以下のとおりです。
売却益及び法人税等の計上
(借)現金預金 240 (貸)子会社株式100
__________?_(〃)売却益 140
(借)法人税等 56 (貸)現金預金56
続いて,一部売却に関する連結修正仕訳は以下のようになります。
一部売却に関する連結修正仕訳
(借)子会社株式 100 (貸)非支配株主持分160
(〃)子会社株式売却益 60
(借)子会社株式売却益 80 (貸)資本剰余金 80
このように,個別上の売却益140は全額消去されます。
ここまではいいと思うのですが,
売却益の消去に伴い,対応する法人税等も連結上消去しなくてはいけません。
法人税等の調整に係る修正仕訳
(借)資本剰余金××× (貸)法人税等×××
**********************
ここで1つ論点になるのが,その金額です。140の売却益を全額取り消したので,
(借)資本剰余金56(貸)法人税等56
このように法人税も全額消去したくなるのですが,実は違います。
実際は下記の通りとなります。
(借)資本剰余金32(貸)法人税等32
※80(売却益の資本剰余金振替額)×40%=32
つまり,140の売却益を消去しているにも関わらず,消去する税金は資本剰余金への振替額80に対応する税金の金額となるのです。
こうするとP/Lは以下のようになり,ズレます。

この点は,直感的には理解しづらい部分です。
これを理解するためには,投資に係る一時差異に対する税効果を考慮しなくてはいけません。
では,投資に係る一時差異を考慮して考えてみましょう。
**********************
X1期末に売却の意思決定をしているため,X1期末に以下の連結修正仕訳が行われます。
投資に係る一時差異の発生に関する修正仕訳(X1期)
(借)法人税等調整額24 (貸)繰延税金負債24
※60(取得後剰余金)×40%=24
そして,一部売却を行ったX2期に以下の修正仕訳が行われます。
投資に係る一時差異の解消に関する修正仕訳(X2期)
(借)繰延税金負債24 (貸)法人税等調整額24
これらを踏まえて,X1期とX2期の連結P/Lを作成するとこうなります。

どうでしょうか?
一部売却前に,投資に係る一時差異に対して税効果をかけていればP/Lは上手く合うようになっているのです。
そのため,よって,資本剰余金から控除する法人税等相当額の金額は
資本剰余金への振替額(80)×税率(40%)=32
と計算するのです。
また,B/Sの観点からみても,32で仕訳をきることによって,資本剰余金の増加額を税引後の金額とすることができています。
【簿記の細道~連結小話】
ボブ「投資に係る一時差異に税効果をかけるっていうのがミソだったんですね。逆に投資に係る一時差異に税効果をかけないのはどういうケースですか?」
ノボ「例えば,当期に売却することを決定し,売却した場合には前期の段階では税効果をかけることは出来んな。この場合にはP/Lはズレてしまうが,税効果をかけていない以上はしょうがないな。しかし,当期に売却の意思決定をし,翌期に売却する場合には投資に係る一時差異に税効果をかけることになる。この場合,”こうかはばつぐんだ!”」
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CPA会計学院
財務会計論講師
登川雄太(Twitter)
このブログがみなさんに気付きを与え,お役に立つことができますように。
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連結の一部売却について質問がありましたので,お答えします。
以下のようなケースを考えます。
(一部売却に関する部分のみを考慮した数値例にしています)
この場合,個別上の仕訳は以下のとおりです。
売却益及び法人税等の計上
(借)現金預金 240 (貸)子会社株式100
__________?_(〃)売却益 140
(借)法人税等 56 (貸)現金預金56
続いて,一部売却に関する連結修正仕訳は以下のようになります。
一部売却に関する連結修正仕訳
(借)子会社株式 100 (貸)非支配株主持分160
(〃)子会社株式売却益 60
(借)子会社株式売却益 80 (貸)資本剰余金 80
このように,個別上の売却益140は全額消去されます。
ここまではいいと思うのですが,
売却益の消去に伴い,対応する法人税等も連結上消去しなくてはいけません。
法人税等の調整に係る修正仕訳
(借)資本剰余金××× (貸)法人税等×××
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ここで1つ論点になるのが,その金額です。140の売却益を全額取り消したので,
(借)資本剰余金56(貸)法人税等56
このように法人税も全額消去したくなるのですが,実は違います。
実際は下記の通りとなります。
(借)資本剰余金32(貸)法人税等32
※80(売却益の資本剰余金振替額)×40%=32
つまり,140の売却益を消去しているにも関わらず,消去する税金は資本剰余金への振替額80に対応する税金の金額となるのです。
こうするとP/Lは以下のようになり,ズレます。
この点は,直感的には理解しづらい部分です。
これを理解するためには,投資に係る一時差異に対する税効果を考慮しなくてはいけません。
では,投資に係る一時差異を考慮して考えてみましょう。
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X1期末に売却の意思決定をしているため,X1期末に以下の連結修正仕訳が行われます。
投資に係る一時差異の発生に関する修正仕訳(X1期)
(借)法人税等調整額24 (貸)繰延税金負債24
※60(取得後剰余金)×40%=24
そして,一部売却を行ったX2期に以下の修正仕訳が行われます。
投資に係る一時差異の解消に関する修正仕訳(X2期)
(借)繰延税金負債24 (貸)法人税等調整額24
これらを踏まえて,X1期とX2期の連結P/Lを作成するとこうなります。
どうでしょうか?
一部売却前に,投資に係る一時差異に対して税効果をかけていればP/Lは上手く合うようになっているのです。
そのため,よって,資本剰余金から控除する法人税等相当額の金額は
資本剰余金への振替額(80)×税率(40%)=32
と計算するのです。
また,B/Sの観点からみても,32で仕訳をきることによって,資本剰余金の増加額を税引後の金額とすることができています。
【簿記の細道~連結小話】
ボブ「投資に係る一時差異に税効果をかけるっていうのがミソだったんですね。逆に投資に係る一時差異に税効果をかけないのはどういうケースですか?」
ノボ「例えば,当期に売却することを決定し,売却した場合には前期の段階では税効果をかけることは出来んな。この場合にはP/Lはズレてしまうが,税効果をかけていない以上はしょうがないな。しかし,当期に売却の意思決定をし,翌期に売却する場合には投資に係る一時差異に税効果をかけることになる。この場合,”こうかはばつぐんだ!”」
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