有賀講師

「公認会計士講座 租税法 寄付金についての質問回答」有賀講師(租税法)

こんにちは。租税法を担当している有賀です。

東京CPA会計学院の受講生たちは,法人税法の中でも特に重要性の高い論点の学習が一通り終わり,消費税法の学習に入っています。そこで,今回は,既に講義を終えた論点の中で,これまでに何度か質問を受けた内容について共有してみたいと思います。今回は,寄附金に関する部分です。

寄附金の損金不算入額の計算については,計算式を覚えるだけですので,特に質問を受けることはないのですが,その前段階として,寄附金の認識に関する部分でよく質問を受けています。

具体例をつかって説明します。

(例) 時価10,000,000円の土地(帳簿価額3,000,000円)を贈与したため,贈与直前の帳簿価額相当額を費用に計上した。

この場合,会計上の仕訳は,このようになります。

(借)

土地譲渡損

3,000,000円

(貸)

土地

3,000,000円

一方で,税務上の考え方は,時価取引を前提とするので,このようになります。

(借)

現金預金

10,000,000円

(貸)

土地

3,000,000円

(〃)

土地譲渡益

7,000,000円

(借)

寄附金

10,000,000円

(貸)

現金預金

10,000,000円

よって,税務上は10,000,000円を寄附金として扱い,損金不算入額の計算を行うことになります。

では,どういう質問が多いかというと,「会計上10,000,000円が費用に計上されているわけではないのだから,まずは会計と税務のズレを調整し,その後で損金不算入額の計算をすべきなのではないか?」という内容です。

たしかに,会計上の利益に対して,会計と税務のズレを調整する形で,所得金額を算定するので,両者にズレがあるのであれば,調整をしなければいけません。

しかし,結論として,今回は会計と税務にズレはありませんので,その調整は不要です。前提として,税務では,会計上の勘定科目は気にしません。ですので,皆さんもこれを考えるときには,勘定科目に捉われず,「費用」と「収益」という2つの要素だけで考えてみてください。

では,会計上の仕訳を前提に考えてみると,「費用が3,000,000円」計上されていることがわかりますね。

次に,税務上の仕訳を前提に考えてみると,「収益が7,000,000円」「費用が10,000,000円」計上されています。では,これを利益ベースで考えてみましょう。会計上は「利益は△3,000,000円」となります。一方で,税務上はというと,こちらも「利益(所得)は△3,000,000円」となりますね。つまり,両者は一致しています。確かに,会計と税務とで勘定科目に違いはありますが,利益(所得)という意味では両者に差はありません。なので,ズレを調整する必要はないのです。ですので,会社が上記の会計上の仕訳を行っていたとしても,税務においては「税務上の仕訳がちゃんと行われてる」と考えた上で,寄附金10,000,000円を損金不算入額の計算対象にしてあげればOKということになります。

お分かり頂けたでしょうか?

これでもわからないという方については,考えている「会計と税務の仕訳のズレ」というものについて調整してみてはどうでしょうか?

ⅰ 会計上は「土地譲渡損3,000,000円」が計上されているが,税務上は計上されていない。

⇒ 土地譲渡損否認 3,000,000円(加算:留保)

ⅱ 税務上は「土地譲渡益7,000,000円」が計上されているが,会計上は計上されていない。

⇒ 土地譲渡益計上もれ 7,000,000円(加算:留保)

ⅲ 税務上は「寄附金10,000,000円」が計上されているが,会計上は計上されていない。

⇒ 寄附金認定損 10,000,000円(減算:留保)

結果としてどうでしょう?加算する金額と減算する金額は同額,つまりインパクト0ですね。これは,会計と税務とでズレが生じてないってことを意味しているわけです。

これでもよくわからないという方は,上記のⅰ~ⅲの調整を丁寧にやってあげてください。その際に,「寄附金」のズレだけに着目せずに,「譲渡益・譲渡損」のズレの部分もちゃんと考えてくださいね。

なお,この知識を前提に,完全支配関係間取引の損益調整が加わった問題についても検討してみてください。

今後も質問の多い部分については,共有してみます。

それでは,引き続き,頑張ってください。

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