テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:連結会計
対象:公認会計士試験
重要性:★★☆
前回の続きです。
ダウンストリーム(持分比率70%)において,
(借)利益剰余金期首残高20 (貸)売上原価20
この貸方は子会社の売上原価の数字を動かしているということがわかりました。
では,利益を20増やしたにも関わらずそれに対応する非支配株主持分6(20×30%)を増やさないのはなぜなのでしょう?
これには明確な理由があります。
ここでいったん定義を確認してみましょう。
「非支配株主持分とは,子会社の純資産の内,非支配株主に帰属している持分」です。
もっと,シンプルにわかりやすく表現すると
子会社が倒産した時に,非支配株主がもらえるお金です。

となります。
この知識を入れた上で,個別貸借対照表の純資産に着目して考えてみます。
(上記のB/Sとは数字を変えています)
<期末の未実現が生じているケース>

<この翌年(期首の未実現)>

個別財務諸表は上のようになります。
当期末の子会社の純資産は150なので,この内,非支配株主に帰属する持分は150の30%で45ということは疑いようがありません。
では,未実現損益20を実現させた時に非支配株主持分を6増やすべきでしょうか?
先ほどの説明した通り,非支配株主持分は子会社が倒産した時の非支配株主がもらえる金額のことです。
そうであるならば,非支配株主持分を6増やすということは,非支配株主がもらえる金額が6増えるということを意味するはずです。
そのように考えるとおかしいですね。
なぜなら,この20に当たるお金自体は親会社にあるからです。なので,20の金額の内,子会社の非支配株主の取り分になる余地は1円足りともありません。
よって,20を実現させた時に非支配株主持分を6増やすというのはおかしいのです!
(連結上で20実現させたとしても,子会社のお金が20増えるわけではないですよね?)
*************************
これで非支配株主持分を動かさない理由はわかりました。
では,子会社の損益を動かしてるようにみえるのは何故でしょうか?
これは,勘定に着目して考えてしまっているからです。
あくまでも,持分(純資産)に着目して考えなくてはいけません。
”親会社の方で計上した利益20,これを連結上いったん隠して,翌期に実現させている”ということが本質なのです。
そして,連結財務諸表の表示上たまたまそれを売上原価の金額で調整しているだけなのです。
決して子会社の利益(純資産)を動かそうという発想はないのです。
どうでしょうか?
第1部では,建物の未実現損益を話しの発端としましたが,建物の場合もこの商品と同じ話になります。
未実現損益は考えれば考える程実は奥深い論点です。
みなさんのモヤモヤが少しでもすっきりしてくれたら幸いです。
【簿記の細道~連結小話】
ボブ「アップストリーム,ダウンストリームは難しい論点ですけど”定義に立ち返る”,”個別財務諸表から考える”という基本に沿って考えれば理解できる論点なんですね。」
ノボ「難しくてアップアップしがちな論点でも頭をクールダウンして考えることが重要だ。」
▶登川講師の個人サイト『会計ノーツ』はこちら!
*******************
CPA会計学院
財務会計論講師
登川雄太(Twitter)
このブログがみなさんに気付きを与え,お役に立つことができますように。
テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:連結会計
対象:公認会計士試験
重要性:★★☆
前回の続きです。
ダウンストリーム(持分比率70%)において,
(借)利益剰余金期首残高20 (貸)売上原価20
この貸方は子会社の売上原価の数字を動かしているということがわかりました。
では,利益を20増やしたにも関わらずそれに対応する非支配株主持分6(20×30%)を増やさないのはなぜなのでしょう?
これには明確な理由があります。
ここでいったん定義を確認してみましょう。
「非支配株主持分とは,子会社の純資産の内,非支配株主に帰属している持分」です。
もっと,シンプルにわかりやすく表現すると
子会社が倒産した時に,非支配株主がもらえるお金です。
となります。
この知識を入れた上で,個別貸借対照表の純資産に着目して考えてみます。
(上記のB/Sとは数字を変えています)
<期末の未実現が生じているケース>

<この翌年(期首の未実現)>
個別財務諸表は上のようになります。
当期末の子会社の純資産は150なので,この内,非支配株主に帰属する持分は150の30%で45ということは疑いようがありません。
では,未実現損益20を実現させた時に非支配株主持分を6増やすべきでしょうか?
先ほどの説明した通り,非支配株主持分は子会社が倒産した時の非支配株主がもらえる金額のことです。
そうであるならば,非支配株主持分を6増やすということは,非支配株主がもらえる金額が6増えるということを意味するはずです。
そのように考えるとおかしいですね。
なぜなら,この20に当たるお金自体は親会社にあるからです。なので,20の金額の内,子会社の非支配株主の取り分になる余地は1円足りともありません。
よって,20を実現させた時に非支配株主持分を6増やすというのはおかしいのです!
(連結上で20実現させたとしても,子会社のお金が20増えるわけではないですよね?)
*************************
これで非支配株主持分を動かさない理由はわかりました。
では,子会社の損益を動かしてるようにみえるのは何故でしょうか?
これは,勘定に着目して考えてしまっているからです。
あくまでも,持分(純資産)に着目して考えなくてはいけません。
”親会社の方で計上した利益20,これを連結上いったん隠して,翌期に実現させている”ということが本質なのです。
そして,連結財務諸表の表示上たまたまそれを売上原価の金額で調整しているだけなのです。
決して子会社の利益(純資産)を動かそうという発想はないのです。
どうでしょうか?
第1部では,建物の未実現損益を話しの発端としましたが,建物の場合もこの商品と同じ話になります。
未実現損益は考えれば考える程実は奥深い論点です。
みなさんのモヤモヤが少しでもすっきりしてくれたら幸いです。
【簿記の細道~連結小話】
ボブ「アップストリーム,ダウンストリームは難しい論点ですけど”定義に立ち返る”,”個別財務諸表から考える”という基本に沿って考えれば理解できる論点なんですね。」
ノボ「難しくてアップアップしがちな論点でも頭をクールダウンして考えることが重要だ。」
▶登川講師の個人サイト『会計ノーツ』はこちら!
*******************
CPA会計学院
財務会計論講師
登川雄太(Twitter)
このブログがみなさんに気付きを与え,お役に立つことができますように。
関連記事