テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:連結会計・企業結合会計・事業分離会計等
対象:公認会計士試験
重要性:★☆☆(2014年12月の短答受ける方にとっての現状における重要性)
関連記事:
連結の改正論点を理解する!親会社株主に帰属する当期純利益…名称変更の影響は?
連結会計・企業結合会計・事業分離会計等が改正されます。
今回の改正の趣旨は「国際的な会計基準との差異を解消する」というところが一番大きいと思います。
(最近はもっぱらこればっかりですね笑)
その改正の内容について,受講生何人かから質問受けましたので簡単に概要をお伝えします。
———————————————————-————–
<注意!2014年12月の短答式試験を受験される方へ>
当該改正は2015年5月の短答式試験以降から試験範囲になるので
2014年12月の短答式試験では試験範囲外になります。
よって,あくまでも,気になる方のみご覧ください。
———————————————————-————–
【改正点ポイント①】名称の変更!
(1)概要
今までの「少数株主」が「非支配株主」という名称に変わります。
(2)趣旨
「少数株主」に比べて「非支配株主」の方が重みがありそうでなんかカッコいいですが,当然そんな理由で変えたわけではありません。
間接所有などを通じて,親会社の持分比率が50%切るケースでも子会社になることがあります。この場合,少数株主の持分比率が50%超になり「少数という名称」と「多数を占めているという実態」が整合しないため「少数株主」という名称は適切とは言えません。よって,より状態を適切にあらわせるように「非支配株主」という名称に変更されました。
※ この記事においても,以後非支配株主という名称を用います
【改正点ポイント②】親会社と非支配株主との取引が資本取引になる!
(1)概要
現在は,親会社と非支配株主との取引(追加取得や一部売却等)から生じた差額については,「のれんの計上」もしくは「損益の認識」という処理がなされていました。
しかし,改正後は,追加取得や一部売却から生じる差額については資本剰余金を変動させることになります。
なお,具体的に改正される論点は以下のとおりになります。
<改正される主な論点>
親会社の持分が変動する取引で,かつ,その取引の前後で支配関係が継続している場合の会計処理が主に変更される。
例)追加取得,一部売却,増資,共通支配下の取引等
逆に言うと,段階取得(非支配→支配)や持分法(持分法の追加取得や一部売却,非支配→非支配)は変更されません。
(2)趣旨
現在は親会社説にもとづいているため,親会社株主からすると非支配株主との取引は外部者との取引となります。よって,そこから生じる差額は損益処理されていました。
しかし,改正後は,経済的単一体説の考え方を取り入れます。当該考え方では,企業集団の株主は親会社株主だけでなく非支配株主も含まれます。
よって,追加取得や一部売却等は資本取引となるため,損益を生じさせるのではなく直接資本を増減させることになります。
【改正点ポイント③】取得関連費用(付随費用)は連結上費用処理される!
(1)概要
金融商品会計に則り,取得関連費用は有価証券の取得原価に含められています。そして,その取得原価に基づき連結上ののれんを算定しています。
しかし,改正後は,取得原価に含められている取得関連費用は連結上費用処理されることになりました。つまり取得関連費用は取得原価を構成しないことになります。
(2)趣旨
以下の具体例を用いて説明します。
<具体例>
子会社株式の金額:120,証券会社への手数料:10
取得する子会社の持分:100
現在は,取得した子会社に対する持分100とその取得に要した支出130(子会社株式120+取得関連費用10)は等価交換と考えています。
つまり,親会社は130の価値があると判断したからこそ,総額130の対価を支払い子会社の持分を取得したと考えられます。その結果,のれんは30と計算されます。
対して改正後は,「証券会社へ手数料を支払う取引」と「子会社の持分を取得する取引」は別の取引という考え方を採用します。よって,取得関連費用は取得原価に含めず費用処理されることになります。その結果,のれんは120と100の差額で20と計算されます。
以上が,改正点のざっくりとした概要になります。
さて,最後に12月の短答を受験される方にとっての位置づけですが,
今回の改正は12月の試験範囲に入りません。
よって,12月の短答受験される方は,短答終わるまでは新基準のことは一切気にしないで大丈夫です!
まずは12月の短答合格に向けて邁進しましょう!
そして,改正論点は,短答式試験後に行われる「改正論点講義」を受講してしっかりマスターしましょう!
また,今回の改正は大改正と言ってもいいくらいですが,改正前の基準がわかっていれば,
「改正で何がどう変わったのか」
という視点でおさえることができ,改正の負担は大幅に減りますので,決して今の勉強が無駄になることはありません。その点もご安心ください。
【簿記の細道~改正小話】
ボブ「今回の改正でまた一段と日本基準と国際的な基準の差異が縮まりましたね。次もし改正あるとしたら,のれんの償却/非償却ですかね?」
ノボ「確かにな。だが,のれんの償却は日本としては譲れない部分もあるから,のれんを非償却にするという話だけはすぐにはのれんだろうな。」
(補足)
のれんの取扱いは,「日本は定期償却」,「国際的には非償却&減損」となっており大きな差異があります。今後の動きですが,コンバージェンスを進めるなら日本も非償却になることが予想できますが,逆に海外ではのれんの償却を認める動きも一部あります。また,ASBJ(企業会計基準委員会)は平成26年7月に「のれんはなお償却しなくてよいか」というディスカッションペーパーを公表しており,一筋縄とは行かない状況となっています。今後ののれんの動向に注目です。
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太(Twitter)
このブログがみなさんに気付きを与え,お役に立つことができますように。
テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:連結会計・企業結合会計・事業分離会計等
対象:公認会計士試験
重要性:★☆☆(2014年12月の短答受ける方にとっての現状における重要性)
関連記事:
連結の改正論点を理解する!親会社株主に帰属する当期純利益…名称変更の影響は?
連結会計・企業結合会計・事業分離会計等が改正されます。
今回の改正の趣旨は「国際的な会計基準との差異を解消する」というところが一番大きいと思います。
(最近はもっぱらこればっかりですね笑)
その改正の内容について,受講生何人かから質問受けましたので簡単に概要をお伝えします。
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<注意!2014年12月の短答式試験を受験される方へ>
当該改正は2015年5月の短答式試験以降から試験範囲になるので
2014年12月の短答式試験では試験範囲外になります。
よって,あくまでも,気になる方のみご覧ください。
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【改正点ポイント①】名称の変更!
(1)概要
今までの「少数株主」が「非支配株主」という名称に変わります。
(2)趣旨
「少数株主」に比べて「非支配株主」の方が重みがありそうでなんかカッコいいですが,当然そんな理由で変えたわけではありません。
間接所有などを通じて,親会社の持分比率が50%切るケースでも子会社になることがあります。この場合,少数株主の持分比率が50%超になり「少数という名称」と「多数を占めているという実態」が整合しないため「少数株主」という名称は適切とは言えません。よって,より状態を適切にあらわせるように「非支配株主」という名称に変更されました。
※ この記事においても,以後非支配株主という名称を用います
【改正点ポイント②】親会社と非支配株主との取引が資本取引になる!
(1)概要
現在は,親会社と非支配株主との取引(追加取得や一部売却等)から生じた差額については,「のれんの計上」もしくは「損益の認識」という処理がなされていました。
しかし,改正後は,追加取得や一部売却から生じる差額については資本剰余金を変動させることになります。
なお,具体的に改正される論点は以下のとおりになります。
<改正される主な論点>
親会社の持分が変動する取引で,かつ,その取引の前後で支配関係が継続している場合の会計処理が主に変更される。
例)追加取得,一部売却,増資,共通支配下の取引等
逆に言うと,段階取得(非支配→支配)や持分法(持分法の追加取得や一部売却,非支配→非支配)は変更されません。
(2)趣旨
現在は親会社説にもとづいているため,親会社株主からすると非支配株主との取引は外部者との取引となります。よって,そこから生じる差額は損益処理されていました。
しかし,改正後は,経済的単一体説の考え方を取り入れます。当該考え方では,企業集団の株主は親会社株主だけでなく非支配株主も含まれます。
よって,追加取得や一部売却等は資本取引となるため,損益を生じさせるのではなく直接資本を増減させることになります。
【改正点ポイント③】取得関連費用(付随費用)は連結上費用処理される!
(1)概要
金融商品会計に則り,取得関連費用は有価証券の取得原価に含められています。そして,その取得原価に基づき連結上ののれんを算定しています。
しかし,改正後は,取得原価に含められている取得関連費用は連結上費用処理されることになりました。つまり取得関連費用は取得原価を構成しないことになります。
(2)趣旨
以下の具体例を用いて説明します。
<具体例>
子会社株式の金額:120,証券会社への手数料:10
取得する子会社の持分:100
現在は,取得した子会社に対する持分100とその取得に要した支出130(子会社株式120+取得関連費用10)は等価交換と考えています。
つまり,親会社は130の価値があると判断したからこそ,総額130の対価を支払い子会社の持分を取得したと考えられます。その結果,のれんは30と計算されます。
対して改正後は,「証券会社へ手数料を支払う取引」と「子会社の持分を取得する取引」は別の取引という考え方を採用します。よって,取得関連費用は取得原価に含めず費用処理されることになります。その結果,のれんは120と100の差額で20と計算されます。
以上が,改正点のざっくりとした概要になります。
さて,最後に12月の短答を受験される方にとっての位置づけですが,
今回の改正は12月の試験範囲に入りません。
よって,12月の短答受験される方は,短答終わるまでは新基準のことは一切気にしないで大丈夫です!
まずは12月の短答合格に向けて邁進しましょう!
そして,改正論点は,短答式試験後に行われる「改正論点講義」を受講してしっかりマスターしましょう!
また,今回の改正は大改正と言ってもいいくらいですが,改正前の基準がわかっていれば,
「改正で何がどう変わったのか」
という視点でおさえることができ,改正の負担は大幅に減りますので,決して今の勉強が無駄になることはありません。その点もご安心ください。
【簿記の細道~改正小話】
ボブ「今回の改正でまた一段と日本基準と国際的な基準の差異が縮まりましたね。次もし改正あるとしたら,のれんの償却/非償却ですかね?」
ノボ「確かにな。だが,のれんの償却は日本としては譲れない部分もあるから,のれんを非償却にするという話だけはすぐにはのれんだろうな。」
(補足)
のれんの取扱いは,「日本は定期償却」,「国際的には非償却&減損」となっており大きな差異があります。今後の動きですが,コンバージェンスを進めるなら日本も非償却になることが予想できますが,逆に海外ではのれんの償却を認める動きも一部あります。また,ASBJ(企業会計基準委員会)は平成26年7月に「のれんはなお償却しなくてよいか」というディスカッションペーパーを公表しており,一筋縄とは行かない状況となっています。今後ののれんの動向に注目です。
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