
ケアレスミスには原因がある!2種類の知識を区別してケアレスミスをなくす 登川講師(簿記)
今回は簿記の勉強法について説明したいと思います。
簿記を学習していると
「同じようなケアレスミスを何回も繰り返してしまい,点数が伸びない」
という方も多いと思います。
そこで今回はケアレスミスをなくす!をテーマにいきたいと思います。
さらに今回はA君とB君にお越しいただいております。
登「A君,B君,今日はよろしくお願いしますね!」
A君・B君「よろしくお願いします!」
ケアレスミスと判断するのはどういう場合か!?
登「では,さっそく以下の問題を解いてみましょう」
【設例】
当期の10月に建物を1,000で購入した。当該建物は耐用年数3年,残存価額10%,定額法により実施する。なお,決算日は3月末日である。
ここで,当期の減価償却費はいくらか?
この問題は一度学習経験があれば特に難しくはないと思います。
【解答】
1,000×90%÷3年×6ヶ月/12ヶ月=150
では,A君B君に目を移してみましょう。
(試験中)
A君「減価償却の問題か,ふむふむ,取得原価×90%÷耐用年数で計算できるな!簡単だ!」
B君「減価償却の問題か,減価償却を解く時は,取得日と決算日に注意し月割計算の有無に注意しなくてはいけないな,どれどれ・・・あ!今回は期中取得だから月割計算必要だな」
(試験後)
A君「うわッ!月割計算見落としてた!月割に気付いてたら解けてたわ!ケアレスミスしちった!!」
B君「うむ。思ったとおり正解だ。」
違いは一目瞭然です。A君は月割計算を見逃して間違えていますが,B君はしっかり月割計算に対応した結果正解を得ています。
この時注目すべきはA君の発言です。今回のミスについてはケアレスミスと判断しています。
なぜ,そのように判断してしまったのでしょうか?
A君「いやだって,月割計算をすること自体は知っているし,問題集でも同じような問題は解いていたし,その時は解けたんです!」
A君の言葉をまとめると,
「知っているし,練習ではできた!けど,本番でミスした!これは紛れも無くケアレスミスだ!」
というわけです。
みなさんもこのような経験は多々あると思います。
ケアレスミスと判断する弊害
話の本題に入るまえに,そもそもケアレスミスと判断すること自体に大きな弊害があるということをお伝えします。
ケアレスミスという言葉には,
「たまたま不注意だったので,次回はしないだろう」
もしくは,
「不注意はしょうがないもの,対策のしようがないだろう」
という意味が込められています。
そのため,ケアレスミスという言葉で片付けてしまうと,思考が停止してしまい,その後の原因分析をしなくなってしまうのです。
しかし,どんな些細なミスでも何かしら原因があるはずです。
そして,ミスというのは,その原因を考え,対策をしていく,この繰り返しでなくなっていくものなのです。
よって,安易にケアレスミスと判断してしまうと,原因分析を放棄してしまい,それをまたいつか繰り返してしまう可能性が非常に高いのです。
それは本当にケアレスミスか!?
月割計算の見落としは本当にケアレスミスなのでしょうか?
ここでいったんケアレスミスという言葉の意味を確認してみましょう。
ケアレスミスとは,
「本来しないようなミスを不注意でしてしまい,たまたま間違えてしまった」
ということだと思います。
月割計算の見落としは,単なる不注意でたまたま間違えてしまったものなのでしょうか?
ケアレスミスと判断する方の多くが,その「たまたまのミス」を,その後何回も繰り返してはいないでしょうか?
ケアレスミスだとすると「そのようなミスを繰り返さない人」と「繰り返してしまう人」の差は,純粋に注意力の差なのでしょうか?
これについては断言します。
月割計算の見落とし等のミスはケアレスミスではありません。
つまり注意力の差でもありませんし,かつ,そのミスは「たまたま」ではなくむしろ「当然」のミスなのです。
ケアレスミスじゃないとすると,なんなのかということですが,一言でいうと
なんてことない単なるミス
ということになります。
(ケアレスミスではないのですが,説明の便宜上引き続きケアレスミスという表現を使います。)
ケアレスミスの原因は?
ケアレスミスはどんな方も必ずなくすことができます。
そのことを理解してもらうためには,
2種類の知識について知る必要があります。
その2種類の知識というのは,
「インプットの知識」と,「アウトプットの知識」
です。
減価償却の月割計算を用いて具体的に説明しましょう。
「減価償却費は月割計算する」
これは「インプットの知識」です。
対して,
「減価償却費を計算するときは,その資産の取得日に注意し,月割計算の必要性の有無を確認しなくてはいけない」
これが「アウトプットの知識」です。
言い換えるなら,「問題を解くために必要な知識」です。
一般的に知識というとインプットの知識を思い浮かべますが,実際に問題に正答するためには,インプット知識だけでなく,アウトプットの知識も必要なのです。
同じミスを繰り返してしまう方の多くがこの視点を見落としてしまっています。
インプットの知識にだけ目を向けてしまい,アウトプットの知識には目が行っていない状態になっているのです。
さきほどのA君・B君で考えてみましょう。
A君もB君も講義を受けて一通り復習はしています。その結果,2人とも「減価償却費は月割計算する」というインプットの知識はもっています。
対して,「減価償却の問題は月割計算に注意する」というアウトプットの知識についてはB君のみが身につけています。
その結果,
アウトプットの知識が身についているB君は注意点を自分から探しに行く形で問題文を読めているのです。
この読み方ができれば月割計算の見落としなんてする余地がなさそうですよね。
逆にA君はアウトプットの知識がないため月割計算に全く意識がいっていません。こんな意識では,ケアレスミスというより,むしろ,間違えて当然と言えます。
このように,アウトプットの知識を身につけていなければ,その論点の注意点を自ら探しに行くことができません。その結果,指示を見落として間違えてしまうのです。
つまり,ケアレスミスをしてしまう原因は,アウトプットの知識が無いことが原因なのです。
アウトプットの知識を身につけるには!?
では,どのようにすればアウトプットの知識は身につくのでしょうか?
この点についてA君とB君に再度登場してもらいましょう。
実は,A君もB君もさっきの試験を受験する以前に
①講義の受講→②テキストの復習→③問題集で問題演習
と同じように学習しています。
では,どこでアウトプットの知識に差が出てしまったのでしょうか?
両者とも①講義の受講と②テキストの復習で,「減価償却は月割計算する」というインプットの知識は同じように身につけています。
しかし,その後の③問題演習の様子は若干違います。
実は問題集にはさっきの試験と同じような月割計算の問題が載っていますが,復習の際は2人とも月割計算の見落としによる間違えをしています。
(問題演習自体は2人とも初めだったので,当然間違えてしまいました)
その時の2人の反応ですが,
A君:「うわッ!月割計算見落としてた!月割に気付いてたら解けてたわ!ケアレスミスしちった!!」
B君:「うわッ!月割計算見落としてた!月割計算する事自体は知ってたけど…そうか,減価償却の問題解く時は月割計算の引っ掛けがないか注意しなくちゃいけないのか。今後は気をつけよう」
A君はさっきの試験後と全く同じ感想ですね。
対して,B君は月割計算の注意ポイントに気付いて,同じミスを繰り返さないように注意しています。
つまり,B君はA君と違い「アウトプットの知識」を意識して学習しているのです!
その結果,B君のみがこの問題から「月割計算に注意する」というアウトプットの知識を得ていたのです。
これでわかったと思います。アウトプットの知識を得るためには
①問題演習を行う
②アウトプットの知識を意識して学習する
の2点が必要になります。
「知識をつける」となるとテキストを読むという行為が思い浮かびますが,テキストで身につくのはあくまでもインプットの知識。
テキストの読み込みのみでアウトプットの知識を身につけるのは容易ではありません。
アウトプットの知識は,テキストの読み込みではなく問題演習から得られるものなのです。
問題演習を行い,その問題演習を通じて,注意点や引っ掛けポイントを知る。
そして,その1つ1つを「アウトプットの知識」として,身につけていく。
このような過程を通じてアウトプットの知識を手に入れていくのです。
問題演習を行う最大の意味はここにあります。
問題演習は「テキストだけでは気づけないアウトプットの知識を身に付ける」これが大きな目的です。
ついつい問題演習となると,正解できた・不正解だったという「結果」に目が行きがちです。
しかし,問題演習はその結果の正誤が大事なわけではありません。
その解く過程から得られる「アウトプットの知識」をいかに自分のものにするかが重要なのです。
さらに,この知識は「それを身につける!」ということを意識しないといつまでも身につきません。
A君のように「ケアレスミス」と判断する限り,いつまでたってもそのミスを繰り返してしまうのです。
ただし,注意して欲しいのは,インプットの知識無くしてアウトプットの知識ありえないということです。
なので,依然としてインプットの知識をつけるためのテキストの読み込みが最重要です。
また,アウトプットの知識の蓄積が増えてくると,テキストの読み込みだけでも,アウトプットの知識を身につけることができます。
おすすめの学習法!
①問題を解いたら,一度立ち止まり考える
問題を解いた結果,少しでも悩んだり,わからなかった場合には,解説をみてすぐに次の問題行くのではなく一度立ち止まりましょう。
そして,考えてください。
「なぜ,悩んだのか?」「なぜ,解けなかったのか?」「どういう知識があれば解けたのか?」
このように一度立ち止まり考えるからこそ,アウトプットの知識を身に付けることができます。
逆にこのフェーズをとばしてしまうと,アウトプットの知識に気付くことすらできません。その結果,いつまでたっても同じミスを繰り返してしまいます。
②繰り返し定着させるためにテキストに書き込む
インプットの知識と同じで,アウトプットの知識も1回で身につくものではありません。
ですので,何回も反復をして,アウトプットの知識も定着させる必要があります。
そこでおすすめなのは,自分が問題演習やテストで間違えた時に,その論点の引っ掛けポイント(アウトプットの知識)をテキストに書き込んでおき,以後テキストを見直す時に,インプットの知識とアウトプットの知識を両方いっぺんに確認できるようにしておくのです。
さらに,引っ掛けポイントは講師が講義中に伝えていますので,それもすべてテキストにメモをとるようにしましょう。
このようにすると,必然的に2つの知識が同時に反復されるのでより定着しやすくなります。
③ケアレスミスをNGワードに
そしてもう1つ。
今後ケアレスミスという言葉をNGワードにすることをおすすめします。
どんな些細なミスであっても何かしら原因があります。
その原因を考えそして対策をしていく,この繰り返しでミスはなくなっていくのです。
しかし,ケアレスミスと判断すると思考が停止します。その結果,そのミスは永遠に起こり続けます。
よって,ケアレスミスとはもう言わない!これだけでも,いわゆるケアレスミスはなくなっていくはずです。
もし,ケアレスミスで悩んでいる方はぜひこの「アウトプットの知識」を意識して勉強してみてください!
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CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
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