テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:売上原価の計算
対象:日商簿記3級以上
重要性:★★★
CPA財務会計論講師の登川です。
今回は売上原価(売原-ウリゲン)の算定について解説します。
解説といっても,売上原価の算定を1から説明するのではなく,
「自分は売上原価の算定を理解したつもりだけど,本当に理解できているのか知りたい!」
という方向けの解説です。
売上原価の算定は基本中の基本の論点ですが,初学者にとってみれば鬼門の1つ。
まずは,タイトルの本題に入る前に,普通に売上原価の算定について簡単に考えていきましょう。
【設例】
期首在庫100 仕入2,000 期末在庫300の場合
この場合,決算整理仕訳は

になります。
おなじみの仕訳ですね。
講義では「この仕訳を暗記するのではなく,勘定で確実に理解しましょう!!」と口を酸っぱくして伝えています。確認のために勘定にしてみると

こうなります。(本当は繰越商品勘定も動きますが,今回は仕入勘定だけにスポットを当てています)
勘定見てわかるとおり,当期仕入高に期首と期末の在庫を加減することにより,売上原価を算定しています。
理解はこうなのですが,でも,結局,
「シークリ・クリシ」
もしくは,
「シイレクリショー・クリショーシイレ」
と呪文のように暗記してしまい,結果理解ができてない方が多いのも事実です。
しかも,厄介なことに,この呪文1つで問題自体は解けてしまいますので,
当の本人は(なんとなく)理解した気になっちゃいます。
でも,それじゃあ表面上3級レベルは対応できても,2級以降で苦労します。
そこで,ちゃんと理解をしたいところですが,理解できているかどうかはなかなか自分ではわからないもの。
「それでも自分が売上原価の算定を本当に理解できているか確認したい!」
そんな方のために,
実はそれを確認できる質問があるのです。
それが,タイトルに書いた
「期末在庫を水増しすれば利益は増える?」
もう少しちゃんと言うと
「商品有高帳を人為的に操作して,実際よりも期末在庫が多いことにすれば,費用を少なくできる?」
という感じでしょうか。
このセリフに対して,「うんうん!そうだよね!」と思える方はきっと理解は大丈夫でしょう。
対して「うーん…」と唸ってしまう方は,理解が不十分な可能性があります。
では,解説していきましょう。
具体的に冒頭の設例を変えるとこんな感じ
【設例】
期首在庫100 仕入2,000 期末在庫3001,300(※)の場合
(※)本当は300だけど,1,300と嘘をつく
今回は極端に期末在庫を1,000も水増ししてみました。
この場合の仕訳はこうなります。

そして,勘定に転記してみると,,,

「!!!」
勘定みてわかるとおり,水増しした期末在庫1,300は当期の費用から減額されるんですね。
その結果,冒頭の設例の売上原価と比べれば,1,000(=1,800-800)も費用を減らせていることがわかります。
つまり,期末在庫を1,000水増しした分だけ,売上原価が1,000少なくなるのです!
これで,「期末在庫を水増しすれば利益は増える!」ということがわかって頂けたかと思います。
この論理は勘定をイメージ出来ないとわからない話なので,売上原価の算定を理解できているかどうかの確認に有効です。
ただ,1つ付け加えておくと,在庫の水増し自体はれっきとした粉飾です。
在庫の水増しによる粉飾方法は簿記3級レベルで理解できる話ですが,
手軽に出来るので古典的な粉飾の手法としてかなり有名です。
ここで話を終わらせてもいいのですが,理解を確実にするためにもう一歩踏み込めます。
「在庫の水増しして当期の費用を減らせても,翌期の費用は増えちゃうから,翌期はキツイよね。」
このセリフまでわかれば,もはや売原算定マスターでしょう。
(少し考えて見てください,,,)
このセリフの真意を簡単に説明するとこんな感じ
①当期の期末在庫は翌期の期首在庫
②翌期首の在庫は翌期の費用に足される
③結果,翌期は費用が多く上がり,利益を圧迫する
つまり,当期に費用を減らした分だけ,翌期の費用が増えるという仕組みになっているのです!
(あえて勘定は書きませんので,わからない方は自分で仕訳と勘定書いて確かめてください)
じゃあこれを回避するためには?
そうです,翌期の期末在庫をさらに水増せばいいのです。
ただ,そうするとその次の年度はさらにきつくなります。
じゃあこれを改善するためには,また在庫を,,,
これが俗にいう,粉飾のスパイラルッ!
一度粉飾すると,その後は際限なく粉飾をせざるを得ない状況になってしまうのです。
粉飾は麻薬のようなものと言われ,例え軽い気持ちだとしても一度やってしまうと抜け出せなくなってしまうと言われます。
この期末在庫を用いた粉飾はその最たる例ですね。
今回は粉飾を例に売上原価の算定を説明しました。
粉飾は自体はやってはいけませんが,粉飾を例に理解を深めることは時として有効です。
在庫を用いた粉飾を知ることで,売上原価の理解を深めましょう!
【簿記の細道~売原小話】
ボブ「てことは,逆に期末在庫が減れば利益が減るんですね。だったら,競合他社の商品をいっぱい購入して在庫減らしてしまえば,相手を出し抜けますね。」
ノボ「おいおい,それだと相手の売上も増えるんだから,ウリゲン増えた分ゴキゲンになるだけだ!」
▶登川講師の個人サイト『会計ノーツ』はこちら!
********************
CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
ツイッターはこちら
このブログがみなさんに気付きを与え,お役に立つことができますように。
テーマ:財務会計論(簿記)の論点解説
論点:売上原価の計算
対象:日商簿記3級以上
重要性:★★★
CPA財務会計論講師の登川です。
今回は売上原価(売原-ウリゲン)の算定について解説します。
解説といっても,売上原価の算定を1から説明するのではなく,
「自分は売上原価の算定を理解したつもりだけど,本当に理解できているのか知りたい!」
という方向けの解説です。
売上原価の算定は基本中の基本の論点ですが,初学者にとってみれば鬼門の1つ。
まずは,タイトルの本題に入る前に,普通に売上原価の算定について簡単に考えていきましょう。
【設例】
期首在庫100 仕入2,000 期末在庫300の場合
この場合,決算整理仕訳は
になります。
おなじみの仕訳ですね。
講義では「この仕訳を暗記するのではなく,勘定で確実に理解しましょう!!」と口を酸っぱくして伝えています。確認のために勘定にしてみると
こうなります。(本当は繰越商品勘定も動きますが,今回は仕入勘定だけにスポットを当てています)
勘定見てわかるとおり,当期仕入高に期首と期末の在庫を加減することにより,売上原価を算定しています。
理解はこうなのですが,でも,結局,
「シークリ・クリシ」
もしくは,
「シイレクリショー・クリショーシイレ」
と呪文のように暗記してしまい,結果理解ができてない方が多いのも事実です。
しかも,厄介なことに,この呪文1つで問題自体は解けてしまいますので,
当の本人は(なんとなく)理解した気になっちゃいます。
でも,それじゃあ表面上3級レベルは対応できても,2級以降で苦労します。
そこで,ちゃんと理解をしたいところですが,理解できているかどうかはなかなか自分ではわからないもの。
「それでも自分が売上原価の算定を本当に理解できているか確認したい!」
そんな方のために,
実はそれを確認できる質問があるのです。
それが,タイトルに書いた
「期末在庫を水増しすれば利益は増える?」
もう少しちゃんと言うと
「商品有高帳を人為的に操作して,実際よりも期末在庫が多いことにすれば,費用を少なくできる?」
という感じでしょうか。
このセリフに対して,「うんうん!そうだよね!」と思える方はきっと理解は大丈夫でしょう。
対して「うーん…」と唸ってしまう方は,理解が不十分な可能性があります。
では,解説していきましょう。
具体的に冒頭の設例を変えるとこんな感じ
【設例】
期首在庫100 仕入2,000 期末在庫3001,300(※)の場合
(※)本当は300だけど,1,300と嘘をつく
今回は極端に期末在庫を1,000も水増ししてみました。
この場合の仕訳はこうなります。
そして,勘定に転記してみると,,,
「!!!」
勘定みてわかるとおり,水増しした期末在庫1,300は当期の費用から減額されるんですね。
その結果,冒頭の設例の売上原価と比べれば,1,000(=1,800-800)も費用を減らせていることがわかります。
つまり,期末在庫を1,000水増しした分だけ,売上原価が1,000少なくなるのです!
これで,「期末在庫を水増しすれば利益は増える!」ということがわかって頂けたかと思います。
この論理は勘定をイメージ出来ないとわからない話なので,売上原価の算定を理解できているかどうかの確認に有効です。
ただ,1つ付け加えておくと,在庫の水増し自体はれっきとした粉飾です。
在庫の水増しによる粉飾方法は簿記3級レベルで理解できる話ですが,
手軽に出来るので古典的な粉飾の手法としてかなり有名です。
ここで話を終わらせてもいいのですが,理解を確実にするためにもう一歩踏み込めます。
「在庫の水増しして当期の費用を減らせても,翌期の費用は増えちゃうから,翌期はキツイよね。」
このセリフまでわかれば,もはや売原算定マスターでしょう。
(少し考えて見てください,,,)
このセリフの真意を簡単に説明するとこんな感じ
①当期の期末在庫は翌期の期首在庫
②翌期首の在庫は翌期の費用に足される
③結果,翌期は費用が多く上がり,利益を圧迫する
つまり,当期に費用を減らした分だけ,翌期の費用が増えるという仕組みになっているのです!
(あえて勘定は書きませんので,わからない方は自分で仕訳と勘定書いて確かめてください)
じゃあこれを回避するためには?
そうです,翌期の期末在庫をさらに水増せばいいのです。
ただ,そうするとその次の年度はさらにきつくなります。
じゃあこれを改善するためには,また在庫を,,,
これが俗にいう,粉飾のスパイラルッ!
一度粉飾すると,その後は際限なく粉飾をせざるを得ない状況になってしまうのです。
粉飾は麻薬のようなものと言われ,例え軽い気持ちだとしても一度やってしまうと抜け出せなくなってしまうと言われます。
この期末在庫を用いた粉飾はその最たる例ですね。
今回は粉飾を例に売上原価の算定を説明しました。
粉飾は自体はやってはいけませんが,粉飾を例に理解を深めることは時として有効です。
在庫を用いた粉飾を知ることで,売上原価の理解を深めましょう!
【簿記の細道~売原小話】
ボブ「てことは,逆に期末在庫が減れば利益が減るんですね。だったら,競合他社の商品をいっぱい購入して在庫減らしてしまえば,相手を出し抜けますね。」
ノボ「おいおい,それだと相手の売上も増えるんだから,ウリゲン増えた分ゴキゲンになるだけだ!」
▶登川講師の個人サイト『会計ノーツ』はこちら!
********************
CPA会計学院 財務会計論講師
登川雄太
ツイッターはこちら
このブログがみなさんに気付きを与え,お役に立つことができますように。