公認会計士試験 ~就職状況は完全な売り手市場に!複数法人から内定が貰える時代~

今回は、公認会計士の就職状況の現状について,説明していきます。

・大量合格時代から就職氷河期へ

公認会計士試験は,平成18年から新試験制度が採用され,短答式の免除規定や論文式の一部科目合格制も,新試験制度により導入されました。

このように,新試験制度が採用された趣旨は,合格者を大幅に増加させることでした。そもそも公認会計士は,平成18年までは,大幅に人手不足が生じている状況でした。それは、当時の公認会計士は約20,000人であり,アメリカの公認会計士300,000人と比較しても非常に少ない状況であったためです。

これは,国の文化の違いに起因しています。アメリカという国は,基本的に自由競争を前提に競争を推奨する社会です。そのため,資格制度も,取得するのは比較的容易であるが,取得後にも競争を推奨しています。そのため,米国公認会計士(USCPA)の資格を取得したから安泰というわけではなく,合格後も勝ち組と負け組に分かれていく制度なのです。

対して,日本において,公認会計士をはじめとする難関士業全般にほぼ共通しているのが,合格水準を難関にする代わりに,合格者を手厚く保護するという思想です。つまり,わが国では,合格後に過度に競争が起こらないように,もともと合格者の人数を絞るという制度設計をしているのです。

アメリカの制度と,日本の制度は,一長一短であり,どちらが優れているというわけではないですが,アメリカ式の方が,短期間で合格できるので,受験しやすいというメリットはあります。

また,合格後も競争するため,より高度な専門家が育成されやすいというメリットもあります。

その,反面,合格時点での専門知識が不足しているという弊害や,過度な競争から,弁護士業界で生じているような訴訟社会になりやすいというような弊害も生じてしまいます。

その一方で,日本式の場合には,合格時点である程度の専門知識を有しているというメリットがあります。また,過度な競争が生じないため,本来の社会的責任である業務に集中できるというメリットもあります。その反面,合格するまでに多くの時間を有するという問題点や,合格後の自主的な研鑽が促進されないため,グローバルで活躍できるような専門家が育成されづらいという問題点が指摘されています。

そのため,平成19年から導入された新試験制度は,従来2万人程度だった公認会計士を10年間で5万人規模に拡大し,監査法人という閉鎖された業界のみならず,様々な企業の内部に公認会計士が組織内会計士として進出していき,多方面で活躍することが期待されていました。つまり,企業の決算業務の効率化・財務戦略の複雑化への対応・IFRS導入への対応・企業のグローバル化への準備など,様々な効果を期待して新試験制度は導入されました。

このような観点から,10年間で3万人増加させるという掛け声に基づき,毎年の合格者を3,000人に増やすことが決定された。これが,平成19年・平成20年の大量合格を出した背景です。確かに,その時期には,従来に比べ合格水準は大幅に下がったため,合格しやすくなったのは事実です。しかし,その一方で,アメリカのように,合格しても地位が安定しないという状況が発生してしまいました。

また,監査法人は平成18年までは,毎年1,000人強しか採用してこなかったにも関わらず,あまりにも人手が足りなかったため,平成19年・平成20年のわずか2年間で,大量合格者の6,000人をほぼ全員採用しました。

しかし,平成21年度になると,かの有名なリーマンショックの影響や,過去2年間で普段の採用人数の6年分もの人員を採用したことにより,どの監査法人も人余り状態に陥るという状態になりました。

そこで,多くの監査法人が,今後3,000人の合格者を出し続けた場合には,もう採用しきれませんと監督官庁である金融庁に泣きついたのです。当初大量合格に変更するときに、合格者のすべてが監査法人に入るのではなく、様々な分野で活躍することを想定していたのですが、世論的な批判が大きくなり、困った金融庁は,合格者の人数を平成21年・平成22年と1,900人程度に,平成23年はほぼ平成18年以前の水準である1,400人まで減少させました。

しかし,平成19年と平成20年に,例年の約3倍もの新人を採用した監査法人は,1,900人の採用でも厳しい状況であったため,合格者の4割近くが監査法人に就職できないという問題が発生しました。さらに,平成19年・20年に採用しすぎた反動から,監査法人としては,業界初の大規模リストラまで行う事態になりました。

これが,大量合格者を数年間輩出した結果生じた平成21年から平成23年に生じていた未就職者問題の実態です。

・一気に売り手市場に

しかし,平成24年は,合格者を1,300人台まで減らしたことと,監査法人の人余り状況が改善されたため,合格者の大部分が監査法人に就職できるようになり、未就職者問題は収束に向かいました。さらに,平成25年には,一気に売り手市場に変化し,希望すれば合格者の全員が監査法人に就職できる状況に変化しています。

そのため,現在は,未就職者問題は,完全に解消しているので,今後公認会計士を目指す方は安心してほしいと思います。

東京CPA会計学院の合格者も、平成21年から平成23年の就職氷河期でもほとんどの方が4大監査法人に就職していますか、平成24年・平成25年はすべての方が複数の4大監査法人から内定をもらい、半分ぐらいの方は4大監査法人のすべてから内定をもらえる状況になっています。

ですので、現在では完全に売り手市場(もとに戻っただけですが)になっています。

では,なぜ,このように問題が大きくなってしまったのでしょうか。その原因は,上記のような新試験制度導入の趣旨が,公認会計士を目指す若者のみならず,日本社会全体にも受け入れられなかったことが大きいです。さらに、公認会計士の受験者の多くは,合格後に,まずは監査法人に勤務したいと希望していたことも挙げられます。

また,事業会社も合格したての公認会計士ではなく,一定の実務経験を積んだ後の即戦力としての公認会計士をほしいと考えていました。

そのため,アメリカのように,合格水準を下げ,一年間の勉強で合格できる水準に下げる代わりに,大量に合格をさせ,監査法人以外に就職する人を増やしたいという金融庁の趣旨と,難関国家資格を合格したのだから,まずは監査法人での勤務をしたいという受験生の希望や,専門家を採用するのであれば,即戦力を採用したいという事業会社側の思惑にずれが生じていたのです。

そのため,金融庁は,当初の公認会計士5万人計画を修正し,合格者の規模を以前の水準に戻し、これにより,業界に大きな混乱を生じさせた未就職者問題は,終息へと向かったのである。

この未就職者問題を経て,どのような業界を目指すのかは一長一短があるので,断定は控えますが,監督官庁が,業界の長期ビジョンをしっかりと示し,その実現に適した試験制度を設計することが非常に大切であると痛感しています。しかし,現状の試験制度を決定する官僚も大学教授も実務家も,その多くが公認会計士業界で一度も働いたことがないということが最大の問題だと思います。このような方法で制度設計をすれば,業界の長期ビジョンやどのような試験制度が望ましいのかという点もピントがずれた改悪になる可能性が高くなってしまいます。今回の問題だけでなく,現場を知らない人間だけで話し合って,現場のルールを決めているというところに,日本の大きな問題があると感じています。

司法試験のロースクールしかり,今回の公認会計士試験の改悪しかり,今後この経験を踏まえ,同じような過ちを犯さないことが大切なので,是非,現場の最前線で活躍している人材を招き,長期視点に立った、本当に望ましい、制度設計をしてほしいと心から願うばかりです。

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