有賀講師

「公認会計士論文式試験(15年8月)解説講評」有賀講師(租税法)

こんにちは。租税法担当の有賀(あるが)です。

今回は,平成27年論文式試験の租税法の問題に関してお話しします。

論文式試験を受験された皆様,お疲れ様でした。租税法は,例年通り,理論40点と計算60点という配分での出題となっています。

まず,理論についてですが,出題方式は概ね例年と同様であり,問題1で通常の記述形式で根拠条文を問い,問題2では○×形式で根拠条文を問う問題でした。問題の文章量は若干減っているので,理論にかける時間は多少減らすことができたのではないしょうか。出題論点の難易度は,多少迷う問いも含まれてはいますが,全体としては普通だったのかなと思います。

次に,計算についてですが,ここ数年は,問題1で法人税法の総合問題を1問,問題2で所得税法の総合問題を1問(昨年は総合問題1問と個別問題1問),問題3で消費税法の総合問題を1問という構成で出題していました。一方,今年の試験では,問題1で法人税法の総合問題1問と個別問題1問,問題2で所得税法の総合問題1問と個別問題1問,問題3で消費税法の総合問題1問と個別問題1問という構成に変わっています。そして,例年通り,問題量は多く,解き切ることは難しくなっています。しかし,問題の難易度としては例年より易しくなっており,解いた問題に関しては自信をもって解答することができたのではないかと思います。

ということで,今年の租税法の問題は,昨年に比べて易しくはなっていますが,相変わらずの問題量ということで,「難しい」とまではいかないまでも,「難しめ」というようなレベルなのではないでしょうか。こんな微妙な表現しても意味ないですね,すみません。

なお,CPAの受講生は,普段の答練から,難易度も高くかつボリュームの多い問題への対策を行っていることから,問題構成の変化に若干戸惑うことはあっても,その他の面で特に戸惑うことはなく,いつも通り冷静に問題を解くことができたそうです。

以下では,もう少し細かくみていきたいと思います。

(第1問)問題1

問1
法人税法における完全支配関係法人間取引に係る損益調整に関する出題です。重要性の高い論点であり,しっかり解答できてほしいところです。
問2
法人税法における完全支配関係法人に対する寄附金に関する出題です。こちらも典型論点ですので,根拠条文をどこまで書くかという問題はあるにしても,法人税法第37条第2項は必ず指摘をしてほしいところです。
問3
所得税法におけるみなし譲渡と取得費の引継ぎの論点です。こちらも典型論点ですので,根拠条文もしっかり指摘してほしいところです。ただ,解答の仕方については,一応注意が必要です。今回は土地の贈与ですので分離課税となるのですが,この話は租税特別措置法に規定されているものになります。今回の問題では,「租税特別措置法は考慮しない」と指示がありますので,この点に触れるのは避けた方が良いと思われます。また,譲渡所得の計算について,所得税法第33条では特別控除額の控除を認めています。土地の譲渡について,租税特別措置法の規定を考慮しないのであれば,土地の譲渡損益から特別控除額を控除するのかということになりますが,実際にはそのような計算を行わないことから,特別控除額についても触れない方が良いでしょう。ということで,総収入金額と取得費に関する部分についてだけ記述するのが望ましいでしょう。まぁ,分離課税というところまで指摘してもそんなに問題はないと思いますがね。
問4
消費税法における免税取引の論点です。こちらも典型論点ですね。根拠条文をどこまで細かく指摘するかという問題はありますが,「消費税法第7条第1項」までは最低でも指摘しておきたいですね。

(第1問)問題2

法人税法における外国子会社配当の外国源泉税に関する出題です。こちらも典型論点であり,根拠条文の指摘は容易なのですが,出題者の意図をどう取るかにより,○×が変わってしまいます。問題となるのは,問題文の「C社からの金銭配当のうち益金不算入とされる部分に対する上記外国源泉税の額」の捉え方です。これを私は「95%部分(益金不算入とされる部分)に対応する外国源泉税の額」,すなわち「外国源泉税の95%部分の金額」と読んでいます。このように読むと,解答は「×」となります。外国源泉税の全額が損金不算入ですので。一方,これを単純に「益金不算入とした金銭配当の外国源泉税」と読むのであれば,解答は「○」となります。これは出題者の意図次第だと思うので,解答が「○」になる可能性もあるとは思いますが,問題文を「益金不算入とされる金銭配当に対する上記外国源泉税」とせずに,「金銭配当“のうち”~益金不算入とされる“部分に対する”~」としていることから,「外国源泉税のうち95%部分に対応する部分の金額のみを損金不算入とする」という文章であると考えます。よって,「×」となるのではないでしょうか。まぁ,これについてはこれ以上考えなくてよいでしょう!

消費税法における非課税取引の論点です。典型論点ですので,絶対にできないといけない問題です。

麻薬の販売に消費税が課されるかということで,戸惑った方もいたのではないでしょうか。しかし,これはいつも通り,4要件の検討をし,非課税取引に該当するか,免税取引に該当するかを検討してあげればOKです。

法人税法におけるみなし配当の論点です。金銭ではなくてもみなし配当は生じます。普段の計算問題では,金銭であることが多いと思いますが,条文をみると「金銭以外の資産」というワードが入っていますので,そこから判断できたのではないでしょうか。

所得税法における扶養控除の論点です。個人から受ける贈与については,非課税であることに気付けたかどうかです。

理論はこんな感じです。「できてほしい」とか書いてきてますが,もちろん試験中にそんなうまくできるわけではないので,半分くらい取れていればよいのではないでしょうか。

理論についていろいろ書きすぎましたので,計算についてはもうちょっと簡単に。

(第2問)問題1
問1
法人税法の総合問題でした。雇用者給与等支給額が増加した場合の特別控除は,要件が細かいので,比較的余裕のある方でもおさえていたかどうかというところだとは思いますが,要件は気にせず,雇用者給与等支給増加額に10%を乗じることだけおさえておくのもありですね。その他は基本的な論点であり,解きやすい問題だったと思います。
問2
法人税法の個別問題で,資産除去債務が出題されました。CPAでは,直前答練でしっかり出題していたので,ほとんどの方が自信をもって解答できたのではないでしょうか。

(第2問)問題2
問1
所得税法の各種所得金額の計算が出題されましたが,難易度は普通でした。
問2
申告分離課税を選択した場合における所得税の計算が出題されました。CPAでは,直前答練において申告分離課税の問題を出題しており,もっと難しい問題を出題していたので,今回の試験問題のレベルであれば問題はなかったかと思います。なお,所得控除の計算は,簡単ではなかったと思います。

(第2問)問題3
問1
消費税法の総合問題が出題されました。通勤手当の取扱いは悩むところだと思いますが,それ以外は特に難しくなかったかなと思います。
問2
5%の税率が適用されていることに戸惑った方が多かったようです。税率の改正に伴う経過措置により,平成26年4月1日以後の課税資産の譲渡等であっても5%が適用されるものもあります。ただ,これを知らなくても,他に解き方はないよねっていう感じで,正答を導けたんじゃないかと思います。

計算はこんな感じです。こうやって書いてみると,そんなに難しくなさそうな印象を受けるかもしれませんが,問題量が多いんでね,なかなかうまくいかないんですよね。なので,うまくいかなかったという方も不安に感じる必要はありません。決して簡単な問題ではありませんよ。

ということで,とりあえず発表を楽しみにお待ち頂ければと思います。

それでは,お疲れ様でした!

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