
「論文式本試験 経営学講評」永田講師(経営学)
本試験お疲れ様でした。
経営学は最終日の最後の科目なので、精神的にも肉体的にもかなり辛い中での戦いだったと思います。しかし、他の科目とは違い時間的な余裕はあるので、落ち着いて解答することはできたのではないでしょうか。
以下、具体的な出題内容や講評を示していきます。
第1問(経営管理)
問題1では、ドラッカーを題材とした出題となっていました。これらは、講義、テキスト、答練ではほとんど取り扱っていない内容なので、できていなくても合否には全く影響はないでしょう。
唯一解ける可能性があるのは問3で、こちらは新結合の内容を記述すれば良いのですが、ただ、これを「シュンペーター」と「イノベーションの5類型」という問題文の表現から推測して解答するのは酷だと思います。仮に書けていればアドバンテージにはなりますが、できていない方がほとんどであるものと予想されるため、大勢に影響はないでしょう。
一方、問題2は、取引コスト理論や資源依存理論、M&A、製品アーキテクチャの変遷、囚人のジレンマなど、幅広い論点から出題されています。
この中で問3は解答が困難であり、ここはできていなくても合否には影響ありません。
一方、その他のキーワードはいずれもテキストや問題集、答練で触れたものがそのまま問われており、ここでいかに点数を稼げたかが合否の分かれ目になると思われます。
CPAでは、問1の「限定された合理性」と「機会主義的行動」、問2のA「環境の不確実性」は直前答練第3回、問2のB「資源依存理論」は上級答練第4回、問4の「TOB」と問5の「インテグラル型」と「モジュラー型」は上級答練第1回、問6の「囚人のジレンマ」は直前答練第4回にて出題しておりますので、CPA生ならば完答、ないしは、完答に近い方が多かったものと予想されます。
しかし、他校の受験生も含めると、ここのキーワード問題で失点している方は意外に多いと思います。例えば、問1の「機会主義的行動」を「機械主義的行動」と解答している(そもそもこの行動前提2つが何だったかをド忘れしてしまっている)方もいるでしょう。また、問2のA「環境の不確実性」は意識して学習していないと解答困難です。問5の「インテグラル型」と「モジュラー型」は、製品アーキテクチャの変遷をちゃんと理解していないと、逆に解答してしまうでしょう。さらに、問6の「囚人」を「因人」と書き間違えている方は非常に多いと思われます(当校でも直前答練でこのキーワードを出題したところ、全体の1/5は間違えていました)。
よって、問題2の8個のキーワード中、4個~5個程度の正解がボーダーラインになると思われます。
したがって、配点がどのようになるかにもよりますが、第1問の合格点は、50点中、15点~20点程度になるものと予想されます。
余談ですが、ドラッカーは経営管理の中核をなす非常に重要な理論であることは重々承知しております。その事実を、我々専門学校に突き付けてきているのももちろん承知しております。しかし、結果論からいうと、今年度の第1問は、「キーワードだけ覚えていた受験生が勝つ問題」になっていると思います。
本当に、これで良いのでしょうか?時間がなくて考え方や経営管理の背景を一切学習せず、とにかくキーワードの暗記のみに走った方と、しっかり時間をかけて考え方や背景までしっかり学習した方で、差が全く付かないのは、考え方を養うことを重視している当校の理念に反しており、このような出題形式は納得いきません。
経営管理というものは、「既存の理論を用いてどのように考えるか?」といった、考え方を養うための学問だと私は認識しております。しかし、今年度の第1問は、考えさせる問題は一切なく、とにかく、「知っているか知らないか」というだけの出題になっております。「経営学はキーワードのみを暗記すれば良いんだ」という誤った判断をしてしまう受験生が増えてしまうのではないかと危惧しております。
第2問(財務管理)
財務管理は一見簡単そうな問題が多いですが、中には解きづらい問題もありました。具体的に以下で示していきます。
問題1のM&Aに関する問題は論文模試第2回で取り上げた内容なので、さほど戸惑わずに解答することができたのではないかと思います。ただし、問2-1で引っかかってしまった方も少なからずいると思いますので、これ以外の箇所でできるだけ得点を稼ぐ必要があります。
問1の②は何を埋めれば良いか一見悩んだかもしれませんが、「M&AのNPV」という概念は論文模試第2回でも触れていましたので、できてほしいところです。また、⑥も一見悩んだかもしれませんが、答練で「株式時価総額=企業価値-負債価値」という関係は何度も何度も説明してきていたので、ここも解答できているでしょう。問4の作図は答練では出題していませんが、基本問題なのでここも得点したいところです。
問題2のインベストメントでは、⑤⑥は難解なのでできなくても合否に影響はありません。⑧はできなくはないのですが、分散を用いて計算するという点がやや理解しづらい部分であり、ここを落としていても問題ないでしょう。⑤⑥⑧以外については過去に答練で何度も出題してきた論点なので、必ず完答したいところです(類似の問題は上級答練第2回、上級答練第4回、直前答練第3回にて出題済)。
問題3の問1と問2は非常に簡単な問題なのでこれらも完答が必要でしょう(類似の問題は上級答練第2回、上級答練第3回、論文模試第1回、直前答練第4回にて出題済)。
一方、問3の作図ですが、問われている内容は非常に簡単なのですが、オプションプレミアムがいくらなのかが問題文に掲載されていないため、「オプションプレミアム=0円」と考えて解答した方が多かったと思います。オプションプレミアムを0円と捉えて解答しても正解になる可能性はあるかもしれませんが、問題文ではオプションプレミアムも加味した解答を要求しているように読めるので、模範解答ではそのとおりに示しております。よって、ここは、基本論点ではあるものの、落としていても問題ないと思われます。
財務管理では、50点中35点程度が合格ラインになるものと考えられます。財務管理でかなり点数を稼げる方は、40点程度の得点も十分に取れると思います。
したがって、経営学全体としては50点~55点程度が合格ラインになるのではと予想しております。経営管理のキーワードと財務管理でいかに失点を防ぐことができたかがポイントだったと思います。
もちろん、本試験という極度の緊張状態の中で、いつもどおりの力を発揮できない方もいらっしゃることでしょう。ここでいかに議論を展開しても、最終的には合否が出るまでは何も分かりません。
「できた!」という方も、「できなかった・・・」という方も、今は試験のことは忘れ、今後の過ごし方(就活に力を入れるなど)を考えるようにしてください。
本当に、お疲れ様でした!!