梅沢講師

公認会計士論文式試験(15年8月)会計学午前の講評 梅澤講師

論文式試験お疲れ様でした。

今回は,会計学午前の問題について,簡単に講評していこうと思います。

まず,第1問の問題1では,部門別計算が出題されました。

問1では材料価格に予定価格を使用するメリットが問われました。資料Ⅰと問題文から,予定受入価格使用のメリットが問われていると判断できるわけですが,予定受入価格使用のメリットは,①購買担当者に対する原価管理,②記帳の簡略化,③計算の迅速化,④製品原価の変動の排除,の4つが挙げられます。この内,製造部門管理者の立場からのメリットは③と④ですから,今回は④について記述すれば良いということになります。

問2では単一基準配賦法の欠陥を記述させています。複数基準配賦法との比較で捉えれば良いわけですから,固定費の配賦について着目した記述をする必要があります。この辺りは精度良く記述できている必要があります。

問3では配賦基準選択の際の注意点を記述させています。一般に比例性・共通性・経済性と言われますが,今回は固定費のみですので,準固定費を想定して,比例性よりは相関性と記述したいところです。

問4の計算では連立方程式法が問われています。変動費と固定費をわけて計算して頂ければ,変動費に関しては連立方程式を立てずに解けますので,さほど時間はかからなかったと思います。また,固定費に関しても工場事務部を配賦してから連立方程式を立てれば,補助部門2つの場合の連立方程式法ですので,こちらもさほど時間はかからなかったでしょう。

問4の理論では補助部門費の実際配賦の問題点を記述させています。責任会計の観点から,原価能率の良否が関係部門に配賦されてしまう点を記述すれば良いのですが,『原価能率の良否』を『原価の不能率』と記述しないように注意したいところです。

問5では,原価計算基準に照らして部門別計算の目的を問うています。なるべく原価計算基準の文言で記述することが求められますので,なんとか模範解答通りの文章を記述したいところです。

問6では総合原価計算です。問4の計算が間違っていると,連鎖的に間違えてしまいますが,ここは冷静に得点したいところです。

問7では補修指図書を作成する目的を示させています。様々な解答が想定できますが,仕損品を廃棄するか否かを検討しているわけですから,最終的には意思決定につなげる解答が望ましいでしょう。

全体として,第1問 問題1では,問7の理論以外は得点可能な問題といえるため,20点弱の得点が期待できます。

続いて,第1問の問題2では仕損と減損の両方が発生する場合の標準原価計算が出題されています。
問1の計算で価格差異,数量差異,賃率差異,労働時間差異が問われています。資料の読み取りが難しく,数量差異と労働時間差異は算定できない受験生も多かったと思われます。具体的には,仕損分も含めた減損標準発生量が1.1kgという所から,完成品の減損が1kg,仕損分の減損が0.1kgと判断できれば,解答できたかと思われます。ここは価格差異と賃率差異さえ出せれば問題ないでしょう。

問1の理論では混合差異について問われています。超典型理論といえるでしょうから,完璧な記述が求められます。

問2,3では数量差異を仕損費差異と減損差異に,労働時間差異を労働歩留差異と労働能率差異に分析させています。問1の数量差異が出せた方は,この辺りも得点できるでしょうが,多くの方は難しかったと思われます。特に労働歩留差異は仕損差異部分も含めて算定する点に注意しなければいけません。

問4では,原価標準に仕損品と減損の標準発生量を含めるメリットとデメリットが問われています。ここで問われているのは,原価標準そのものに歩減分の標準発生量を含めるか否かですので,簡単にいえば理想標準とその他の標準原価の比較理論になります。いわゆる度外視法と非度外視法の比較理論ではない点に注意したいところですが,間違えてしまった方も多かったのではないでしょうか?

問5の理論は計算ができれば何かしらの記述はできたことと思います。多くの方は白紙となったと思いますが,労働歩留差異か労働能率差異のどちらかを決め打ちして何かしら記述してほしいところです。

全体として,第1問 問題2では,計算で稼ぐことがほとんど厳しい,また混合差異の理論以外は記述しにくいところから,10点弱の得点で問題ないでしょう。

続いて,第2問の問題1ではキャッシュサイクルを中心とした運転資金管理が問われています。
問1の穴埋め理論は,用語に気を付けて頂ければすべて得点可能と思われます。

問2の計算では各種の回転期間を算定させています。唯一(ウ)に関しては,「商品の期首残高と期末残高の平均額および売上原価の計上額から推定される1日当たりの仕入高」という問題文の意図するところがまったく分からず,ここで悩んでしまった方は得点できなかったと思われます。模範解答は売上原価に期首期末の商品を調整して仕入高を算定して示していますが,これが正しいかはわかりません。問題文では商品の期首期末の平均額から算定するとなっているのですが,,,,得点できなくても仕方ないでしょう。

問2の理論は計算結果を示すだけになります。

問3の理論については,問2の計算さえできればすべて得点可能であったと思います。しかし,問1の(ウ)の計算の指示に悩んでしまい,白紙にした受講生も多かったと思いますのでできなくても問題ないでしょう。

全体として,第2問 問題1では, 10点強の得点でも仕方ないのではと思われます。

最後に,第2問の問題2では,予算実績差異分析および事業部業績評価,そして設備投資意思決定が問われています。
問1の計算は,資料ⅠⅡから落ち着いて推定していけばさほど難しくない問題となっていますが,本試験の緊張状態でどこまで合わせられるかは難しいところです。キの資本コストでは税引前の資本コストを計上し,法人税等で税効果分を含める点に注意です。

問1の理論は,投資センターの残余利益を用いた業績評価の目的について,また本社費を甲事業部に負担させる意義について問うています。典型理論ではあるため,ある程度記述できたでしょう。しかし,本社費負担の理論については,模範解答に示した以外にも,本社費の支出を牽制し抑制するという点が一般的に挙げられますが,今回は本社サイドからみたときという問題文の指示がありますので,これは記述してはいけないものになります。

問2の計算では原価標準が問われています。ここも問1同様に資料ⅠⅡから落ち着いて考えれば十分に推定可能ではあります。

問3は甲事業部長の業績評価に反映させる資本コスト率がいかなるものになるのかが不明瞭であり,これによって解答が分かれます。当期の加重平均資本コスト率をハードルレートとするならば,ZとYのみが採用されますし,各案の税引後資本コスト率をハードルレートとするならば,X案も採用に値します。そのため,現状では二通りの模範解答を示しています。

問4は問2ができていれば,管理可能営業利益については問題なく算定できたでしょう。また税引後純残余利益については,資料Ⅱの損益計算書のひな形に拘ることなく,資本コスト控除前の税引後純利益を算定して,ここから資本コストを控除する形で計算すれば得点できるものとなっています。

全体として,第2問 問題2では,計算が連鎖的に失点してしまう構造となっており,さほど得点できていない受験生が多かったのではないでしょうか。ここも10点程度の得点で十分でしょう。

ここまでの目標点を加算していくと50点弱となるわけですが,本試験での緊張状態等を加味すると,40点強の得点ができていれば管理会計論では合格ラインに乗ってくると思います。

さて,今回の本試験問題を踏まえ,来年以降の受験生に向けて,今後の対策についてお話ししたいと思います。

今回は,全体として計算の比率が減り,理論の割合が多くなった印象があります。また,難易度についても,典型理論の割合が多かったですし,計算についても,明らかに得点できないような難しい計算はほとんど無かったと思います。この傾向が来年も続くかは分かりませんが,少なくとも典型理論の精度を高めることや基本的な計算を確実に得点できるようにすることが何より大事だと思います。例えば,特定の予備校でしか教えていないような枝葉の理論について対策する必要はまったくありません。“多くの受験生が得点できるものを確実に得点できるようにする”このような意識で普段の学習をしていくのが得策でしょう。

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